2024年で開園100周年を迎えた京都府立植物園。
日本で最初の公立の植物園として誕生して以来、府民に親しまれ、歴史を重ねてきました。四季折々の草花の栽培はもちろん、希少な植物の保全にも力を入れています。
このコラムでは、植物の専門家である戸部園長に季節ごとの見どころやユニークな植物の生態を教えてもらいます。物言わぬ植物から学ぶことはたくさん!緑に癒され、潤いある暮らしのヒントも見つけてくださいね。

4月が見頃の植物たち
4月は入学式があり、新学期のスタートのときです。さまざまな春の植物が咲きだします。
初旬には、チューリップのほか、サクラやモモの園芸品種が彩りを添えます。

その後、ハクモクレンやコブシなどモクレン科の花が咲きだします。北山門近くには、ハクモクレンやコブシよりも花の色が少し黄色いキンジュモクレンという、北米原産の原種であるキモクレンから日本で選抜育成された園芸品種があり、樹木いっぱいに花を咲かせてなかなか見事な姿を見せてくれます。外見はチューリップと似ていますが、キンジュモクレンの花は花被片が9枚で、6枚しか花被片がないチューリップとは違います。

(キンジュモクレン)
キンジュモクレンは、若い集合果(果実の集合体)が8センチぐらいの長さになると、外見が小さめのキュウリに似ているので、キュウリの木とも呼ばれていますが、植物園の木では残念ながらキュウリが見られません。原因はキンジュモクレンの花にあります。雌雄異熟といい、キンジュモクレンでは同一株の花は雄しべよりも雌しべが先に熟します。花が開いたときは雌しべのみ成熟していて雄しべは未成熟、やっと雄しべが熟して花粉を飛ばせるようになると雌しべは花粉を受ける時期がすでに終了。そうすることで、自分の花の花粉が雌しべにくっついてしまう自家受粉を避けているわけです。受粉が行われるためには開花時期が少しずれるキンジュモクレンの木が少なくとも2本なければいけません。しかし園内にはキンジュモクレンは1本しかなく、送粉者と考えられている甲虫が花粉を運んでくる他の木がありません。ところで、植物園内には、サクラの仲間がたくさん植えられています。
ソメイヨシノが咲く同じころ、ニワウメ、ユスラウメ、アーモンド、アンズなどサクラの仲間が咲きだします。これらの植物はみなバラ科という植物群に含まれ、その中でモモ亜科と呼ばれる群に分類されています。

(ニワウメ)

(ユスラウメ)

(アーモンド)

(アンズ)
これらの植物はみなバラ科という植物群に含まれ、その中でモモ亜科と呼ばれる群に分類されています。その中にあって、これらの植物は葉柄に蜜腺をもつ点が共通していますが、進化の過程で少しずつ違ってきました。例えば、花の集まり方(一か所にまとまって咲くか、長い枝に穂のように咲くか)、花に柄があるか無いかなど、植物が生きていくうえで何かの意味をもっているようです。
この時期園内には、ヤマナシ、セイヨウナシ、リンゴ、ボケなど、サクラの親戚も一気に咲きだします。花はみなよく似ていて、5枚の花弁が目立ちます。

(ヤマナシ)

(セイヨウナシ)
戸部 博 京都府立植物園 園長
1948年青森生まれ。東北大学理学部卒業。千葉大学理学部助手、京都大学理学研究科教授など39年間大学につとめる。その後、日本植物分類学会長、日本植物学会会長などをつとめ、2018年4月1日より京都府立植物園の園長に就任。自らの主導により植物や植物多様性保全、京都府立植物園に関する研究を専門家によって一般の方に分かりやすく伝えるサイエンスレクチャーを2023年より植物園にて開始。
文/戸部 博
【画像】京都府立植物園
