美しい山々や川、北には海と多くの自然資源に恵まれた都市、京都。自然と歴史・文化が融合し、長きにわたって日本の中心地として栄えてきました。
連載『きょうとの自然とくらす』では、自然と調和し日々を歩む京都、京都の自然と共に生きていく知恵や工夫について発信していきます。
第3回『きょうとの自然とくらす』では、自然の恵みを活用した『黒谷和紙』についてご紹介します。
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京もの指定工芸品「黒谷和紙」
『黒谷和紙』は綾部市黒谷町・八代町とその周辺地域で作られた紙。生まれてから800年以上の歴史があります。
周囲を山々に囲まれたこのエリアは平地が少なく、冬の寒さが厳しいことから農業には不向きでした。その一方で紙作りにふさわしい条件であるこの地で、住む人々が自らの暮らしを支えるべく『黒谷和紙』作りを発展させてきました。
『黒谷和紙』は良質な“楮(こうぞ)”という植物が原材料で、ほとんどの工程を職人による手作業で一枚一枚丁寧に作られています。
丈夫で、長持ちするのが特長で、古くから提灯、和傘、障子などに活用され、大正時代には政府から日本一強い紙として認められ“乾パン”を入れる袋としても重用されたそうです。
そして、京呉服に欠かせない渋紙やたとう紙、元離宮二条城の障子などにも使用され、京都の伝統産業を支えてきました。
『黒谷和紙』を生み出す伝統技法『手漉き』は京都府指定無形文化財に指定され、京都を代表する工芸品を表す『京もの指定工芸品』にも指定されています。
職人の伝統な技法で作られる「黒谷和紙」の工程
『黒谷和紙』を生み出す工程のほとんどは昔ながらの手作業です。なかには、寒い季節に川の中に入って行うものも。一つひとつ丁寧に行われる作業工程をご紹介します。
『黒谷和紙』作りは良質な『楮』作りから始まります。『楮』は黒谷では古くから「かご」と呼ばれています。楮を畑で草刈りや芽かきを行いながら手間暇かけて育てます。
葉が落ちた冬に収穫し裁断後、3時間ほどかけて蒸します。
蒸しあがった楮の木から、皮を1本1本剥いでいきます。この皮を黒皮といいます。
黒皮を乾燥させた後に一晩ほど川に浸け、皮がやわらかくなるまで足で踏みつけてもみます。
黒皮に残っている表皮と傷を取り除き、乾燥して保存します。これを白皮といいます。
白皮を煮込みます。柔らかくなった白皮を水にさらし、餅つきのように叩いて細かい繊維状に。
この繊維と水、さらにトロロアオイという植物から抽出した粘液・ネリを合わせて、簀桁(すげた)という道具を使って紙漉きを行います。
漉いた紙をしぼり、水気を切った紙を一枚ずつ、板に刷毛で貼り付けて乾燥させると『黒谷和紙』が出来上がります。
手漉き体験ができる「黒谷和紙会館」
黒谷にある『黒谷和紙会館』。黒谷和紙の資料展示や和紙工芸品が販売されています。
この『黒谷和紙会館』では予約すると、はがきが作れる手漉き体験ができます。京都府指定無形文化財に指定されている伝統技法を職人に教えてもらいながら体験できます。
【詳細情報】
手漉き体験
開催場所:京都府綾部市黒谷町黒谷3 黒谷和紙会館
電話番号:0773-44-0213
開催期間:3月1日〜11月30日
開催日:水曜日〜土曜日 ※祝、お盆は休み
開館時間:10:00〜17:00
体験料金:はがき漉き体験 1グループ(1~4名) 7,200円
申し込み方法:7日前までに黒谷和紙公式サイトまたは電話で予約
※詳細は公式サイトをご確認ください。
自然の恵みを巧みに活用し、京都の文芸品、日本の古き良き工芸品を支えてきた『黒谷和紙』。職人の手作業で生み出された確かな品質に触れてみたくなりますね。ぜひ皆さんも奥深い黒谷和紙に触れてみてくださいね。
文/きょうとくらす編集部
【画像・参考】 黒谷和紙公式サイト
※写真はイメージです。
※この記事は2023年7月に制作しています。最新の情報は施設までご確認ください。