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予防接種だけじゃない! プロが教える「すぐに実践できる感染症対策」

朝晩がすっかり冷え込み、冬の訪れを感じるようになりましたね。季節の変わり目で、体調を崩しやすい季節。さらに、風邪やインフルエンザも流行しつつあります。

そこで今回は、はせがわこどもクリニックの院長・長谷川雅文先生が教える、“すぐに実践できる感染症対策”をご紹介します。親子で実践してみてくださいね。

家庭でできる感染症対策

感染症対策として、予防接種を受ける人も多いと思います。もちろん、予防接種は重症化を防ぐ効果や、感染リスクを抑える効果が期待できるため、重要な感染症対策といえます。しかし、「予防接種をしているから安心」と思って他の感染症対策をしていない方もいるのではないでしょうか? 

そもそも予防接種って?

予防接種をする赤ちゃん
画像:siro46/Shutterstock

予防接種は、基本的に“かかると致命的なもの”や“後遺症が残る可能性がある重篤な疾患”、“感染力が高く大流行の恐れがあるもの”に対して実施されています。一般的に“風邪”と呼ばれるものの中には、それらに含まれないものが多く、予防接種がないものがほとんどです。

また、予防接種を実施することで、感染した場合の重症化を防ぐ効果が期待できますが、その病原体への感染のリスクがゼロになるわけではありません。そのため、予防接種以外でも、日々を健康に過ごすためには生活の中での感染症対策が重要となります。

そこで今回は、予防接種以外に家庭でもできる感染症対策を、感染経路別にご紹介します。すぐに実践できることばかりなので、ぜひ実践してみてくださいね。

飛沫感染 

飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみ、会話の際に飛び散る唾液の飛沫(しぶき)を吸い込んだり、浴びたりすることで起こる感染経路を指します。

飛沫は通常、1〜2m飛ぶといわれており、それ以上距離があれば感染の可能性は低い傾向にあります。インフルエンザや新型コロナウイルスなどの、飛沫で広がるウイルスの拡散防止に有効な対策をご紹介します。

1:マスクの着用

マスクをつけるこども
画像:aslysun/Shutterstock

人混みへ出る際や、咳やくしゃみの症状がある際は、マスクを正しく着用しましょう。マスクには、ウイルスを含む飛沫を吸い込むことを防ぐだけではなく、自分の咳やくしゃみを他人にうつすことを防止する効果もあります。

2:人混みを避ける

飛沫は1〜2m程度飛散するといわれているため、可能な限り他人とは距離を保つことが効果的です。2m以上離れるだけでも感染リスクは下がるといわれています。

飛沫核感染(空気感染)

飛沫核感染(空気感染)は、空中に長時間漂う非常に細かい粒子(飛沫核)を吸い込むことで起こる感染経路を指します。新型コロナウイルスは、飛沫から水分が蒸発した飛沫核内であっても、実験条件下では数時間程度は感染性を有するとの報告もあります。

1:しっかり換気をする

窓の換気をする女性
画像:polkadot_photo/Shutterstock

部屋の換気をすることは、空気感染や飛沫感染のリスクを減らすことにつながります。とはいえ、「冬に長時間窓を開けて換気をするのは抵抗がある……」という方も多いと思います。

その場合は、暖房器具の近くの窓を開けるようにすると、室内に入ってくる冷気が暖められるので、室温の低下を防ぐことができます。また、短時間で窓を全開にするよりも、一方向の窓を少しだけ開けて常時換気をする方が、室温変化を抑える可能性があります。室温の低下で風邪を引いてしまうと本末転倒なので、ある程度暖かさを保ったまま部屋の換気もするように心がけてみてくださいね。

2:適度な加湿

部屋の湿度の目標を40〜60%にすると、乾燥で飛沫が小さくなって長時間漂うのを抑制する効果が期待でき、粘膜のバリア機能も保ちやすいとされています。

しかし、過度な加湿はカビやダニ増殖の原因にも繋がるので結露が出ない程度に抑えるようにしましょう。加湿器がない場合は、濡れタオルを部屋にかけておくだけでも効果的です。

接触感染

感染者の体液や汚染されたものに触れた手を介して、病原体が体内に入る感染経路を指します。直接的に感染者に触れる“直接接触感染”と、ドアノブや手すり、おもちゃなどウイルスで汚染されたものを介する“間接接触感染”の2種類があります。

1:こまめな手洗い

手洗いする場面
画像:Komsan Loonprom/Shutterstock

ウイルスは自分の手や指にくっついている状態で、目や鼻、口などの粘膜を触ってしまうことで感染する可能性があります。そのため、帰宅後だけではなく、ご飯を食べる前やトイレの後にも手を洗うのがおすすめです。

ハンドソープを使用して、手の甲や指の間、爪の先までしっかりと洗いましょう。しっかり手洗いをすると、だいたい10秒〜20秒ほどかかるので、一度子どもと一緒に手洗いにどれくらい時間をかけているのか測ってみるのもいいですね。

2:定期的に掃除をする

ドアノブを持つ手
画像:Zhuravlev Andrey/Shutterstock

ウイルスを家庭に持ち込まないようにするのはもちろんですが、家庭内のウイルスを“減らす”ことも重要です。普段の掃除に加えて、テーブルやドアノブなど、家族がよく触る場所をしっかり拭き取って清潔に保つようにしましょう。

3:帰宅後はすぐに着替える

フックにかかった上着
画像:antibydni/Shutterstock

帰宅後にすぐに着替える習慣をつけることも、ウイルスを持ち込まないために有効な対策の一つです。自宅に入ってすぐの玄関や洗面所などに、コートをかける場所を作っておくと、子どもの習慣化にも繋がりやすいですよ。

また、家に入る前にコートの表面を手で払うことも効果的です。外出中、コートの表面には、花粉やホコリ、飛沫などの微粒子が付着する可能性があります。玄関の外で払って軽く落とすだけでも、衣類に付着した微粒子を家の中に持ち込みにくくするのに役立ちます。

今回教えてくれたプロ

『はせがわこどもクリニック』の院長・長谷川雅文さん
画像:はせがわこどもクリニック

今回お話を伺ったのは、『はせがわこどもクリニック』の院長・長谷川雅文さん。京都第二赤十字病院などで小児科・児童精神科に長く勤め、2021年に『はせがわこどもクリニック』を開院しました。

はせがわこどもクリニックの外観
画像:はせがわこどもクリニック

烏丸御池駅から徒歩約5分の場所にある『はせがわこどもクリニック』は、小児科・児童精神科のクリニックです。小児科外来・予防接種・乳児健診などの一般的な診療に加え、児童精神科専門外来や保護者のこころの診療も行っています。「こどもと保護者のこころとからだの両方を専門的に診療し、健全な生活の支援を行えるクリニック」として、地域に根ざした医療を提供しています。

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文/きょうとくらす編集部

【画像】はせがわこどもクリニック/Shutterstock:kornnphoto/siro46/aslysun/polkadot_photo/Komsan Loonprom/Zhuravlev Andrey/antibydni