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『LOVE ファッション』18世紀から現代までの衣装コレクション一堂に 【京都市左京区】

2024年9月13日(金)~11月24日(日)までの間、『京都国立近代美術館』にて『LOVEファッション-私を着がえるとき-』を開催しています。

服飾文化の研究 KCIのコレクション

ロエベ/ジョナサン・アンダーソン ドレス 2022年秋冬
画像:きょうとくらす編集部

この展覧会に衣装を出展しているのは、『公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)』(以降KCI)。KCIは、設立以来、近世以降それぞれの時代を代表する西欧服飾品とそれを造形してきた下着や文献資料の収集し服飾に関わる研究を続けてきました。現在、17世紀から現在までの服飾資料を1万3千点、文献資料を2万点所蔵しています。コム・デ・ギャルソンからの寄贈品を筆頭に、クリスチャン・ディオール、シャネル、ルイ・ヴィトン等、世界的なメゾンからの衣装をコレクションしています。

近年‟ファッション”が美術展などでテーマになることはありますが、KCIが様々なブランドの衣服や小物を、1つの展覧会で一堂に展示できるのは、この貴重なコレクションをもっているからといえるでしょう。

‟LOVE”に込められた 着ることの情熱

展示会場は5つのチャプターに分かれて衣装が集められています。

京都服飾文化研究財団所蔵/画像:きょうとくらす編集部
  • Chapter 1. 自然にかえりたい 

花のような可憐な姿に私たちは昔から憧れていたのではないでしょうか。それを「まといたい」という欲望や、衣服の素材となる動物や素材に視線を向けます。

京都服飾文化研究財団所蔵/画像:きょうとくらす編集部
  • Chapter 2. きれいになりたい 

いつの時代もオシャレをして「きれいになりたい」という気持ちは変わりません。時にはそれが、身体の部分を極端に細くしたり、太くしたり…とファッションは時代の流れによって評価されるものが変わります。‟きれい”とは何なのか?そんなことも考えてみたくなります。

京都服飾文化研究財団所蔵/画像:きょうとくらす編集部
  • Chapter 3. ありのままでいたい

社会の中で役割を担いつつも、‟自分らしくいたい”という想いを、自然体のリアルな体を主役にするミニマルなデザインの服や、ミニマル・ファッションで構成しています。「下着ファッション」を中心にヘルムート・ラング、ネンシ・ドジョカなどのコレクションが並びます。

コム・デ・ギャルソン/川久保玲 トップ、スカート 2020年春夏
画像:きょうとくらす編集部
  • Chapter 4. 自由になりたい 

国籍や階級など、様々なアイデンティティにより形成される「私らしさ」から逃れたい願望を、小説とオペラ作品に登場する衣服で表現しています。ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』(1928 年)は300 年の時の中で性や身分を越境する主人公の変身譚を、度重なる衣服を「着がえる」描写とともに著しました。

このセクションでは、アイデンティティの変容を描いた本作に触発されたコム・デ・ギャルソン 2020 年春夏コレクション、コム・デ・ギャルソン オム・プリュス 2020 年春夏コレクション、川久保玲が衣装デザインを担当したウィーン国立歌劇場でのオペラ作品《Orlando》(映像記録抜粋)の「オーランドー」三部作から作品を展示しています。

ノワール・ケイ・ニノミヤ/二宮啓ドレス、トップ、ショート・パンツ 
2023年秋冬 株式会社コム デ ギャルソン所蔵
画像:きょうとくらす編集部
  • Chapter 5. 我を忘れたい

‟こんな服が着てみたいという願望”欲しかった服に袖を通したときの高揚感。トモ・コイズミによるフリルやリボンを用いた愛らしいドレスや、RPGゲームに出てくるような衣装をまとった時の、‟何かになりきる”ような衣装を展示。

チャプター5では、衣装が展示されている台も、アートになっています。ホログラムを利用したもので、衣装の裏側がオーロラ調の色彩をまとって映し出される。実物を見るのはもちろん、正面からは見られい繊細な手仕事が垣間見えるもの面白いです。

トモ・コイズミ/小泉智貴 ドレス 2021年 国際オリンピック委員会所有(東京都寄託)
画像:きょうとくらす編集部

東京オリンピック2020国歌斉唱で歌手『MISIA』が着用したドレスを前に、制作当時のことを話すデザイナー小泉智貴さん。「この展覧会では本物が集まっている。ぜひ子どもたちに‟いいもの”を見てほしい」と話します。

『LOVEファッション』は、開催後、熊本市現代美術館ほか展示会場にも巡回する予定ですが、この虹色のドレスが見られるのは京都会場のみです。

京都服飾文化研究財団所蔵/画像:きょうとくらす編集部

もう一点、京都会場だけで観られるコレクションは、『ジャン=フリップ・ウォルト』のドレスとドレスオーナメント。細かいビーズがグラデーションになって縫い込まれています。1912年ごろに作られた貴重なドレスです。

展覧会への想い

京都国立近代美術館(MoMAK)と京都服飾文化研究財団(KCI)は、1980 年の「浪漫衣裳展」以来、これまで八度にわたる共同での展覧会を開催してきました。

澤田知子《ID400》1998年ゼラチン・シルバー・プリント(400点組)京都国立近代美術館画像
画像:きょうとくらす編集部

40年以上続く展覧会はこれまで多くの人たちの心に感動を与え続けてきました。京都国立近代美術館の主任研究員を務める牧口千夏さんは、『私たちの職員の中に、昔開催した衣装展をみて、「ファッションの研究をしたい」と言って研究員になった人もいるんですよ』と話します。

美しい布や、丁寧な縫製は職人の技術の高さを感じられずにはいられませんし、それをまとう俳優や、音楽アーティストなどへの憧れも人を惹きつけるのでしょう。

展覧会では、ほとんどの作品がガラスケースではなく、スケルトンで展示されています。手を触れるのは厳禁ですが、全て本物を間近で見られるチャンスです。

【詳細情報】
LOVE ファッション̶私を着がえるとき Love Fashion: In Search of Myself
開催日時:2024年9月13日(金)~11月24日(日)
会場:京都国立近代美術館(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町)
入館時間:10:00~ 18:00(金曜日は午後 8 時まで)※入館は閉館の 30 分前まで
休館日:月曜日 ※ただし 10 月 14 日(月・祝)、11 月 4 日(月・休)は開館。翌日火曜日は休館。
観覧料: 一般:1,700 円(1,500 円)、大学生:1,100 円(900 円)、高校生:600 円(400 円)
*( )内は 20 名以上の団体料金
*中学生以下、母子・父子家庭の世帯員の方、心身に障がいのある方と付添者 1 名は無料(入館の際
に証明できるものをご提示ください。)
*本料金でコレクション展もご覧いただけます。
主催 京都国立近代美術館、公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)

文/きょうとくらす編集部

【画像・参考】きょうとくらす編集部/LOVE ファッション̶私を着がえるとき 公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)ホームページ
サムネイル作品:横山奈美《LOVE》2018年 油彩、麻布 豊田市美術館所蔵

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