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祇園祭狂想曲“女将の祇園つれづれ日記”【きょうとくらすコラム】

祇園白川沿いの風情ある場所にたたずむ料理旅館白梅。老舗の格式、きめ細やかなおもてなしで、国内外から高い評価を得ています。

その人気旅館の女将から見る祇園の景色を『きょうとくらす』で毎月1回、コラムでお届けします。

料理旅館白梅_女将
画像:料理旅館白梅

第11回の今回は、日本三大祭のひとつ祇園祭についてお話しします。

山鉾巡行と神輿渡御

画像:KBS京都

祭は鴨川から西は山鉾、東は神輿とそれぞれご奉仕されているのですが、”山鉾巡行が祇園祭”と思っておられる方も多いのではないでしょうか?

実は山鉾は神様の乗ったお神輿が通られる道を先に清めるのが目的です。
街の中に散らばって隠れている鬼を拾い集めますので、巡行後はすぐにお祓いをして、山鉾を解体してしまいます。そうでないと集めた鬼がまた逃げてしまうからです。

山鉾巡行が終わると、とうとうお神輿さんの出番です。
裸に半纏、さらしを巻いた勇ましい神輿連、そして八坂神社お膝元のお店の旦那衆の出番です。お神輿は3基、それぞれ通る道が違います。
時折、給水所があり、振る舞いの飲み物が出ます。最近は主に水、お茶、スポーツドリンクですが、昔はお神酒、ビールさらに子供にもジュース、アイスキャンデーを振る舞って下さるところもあり、お神輿さんの後をついて練り歩くのがそれは嬉しく誇らしかったものです。

白梅旅館の前もお神輿さんが通るので17日の夜は今か今かとそわそわ。
近づき遠ざかると“ホイト、ホイト”の声に心がたかぶります。ちなみに、この掛け声『ホイト』は奉灯=ホウトウが訛ったものだと言われています。

画像:KBS京都

知られざる長刀鉾!?

画像:KBS京都

長男が小学校5年の10歳から大学まで長刀鉾の囃子方にご奉仕させていただいたのですが、初めての巡行で鉾にのせてもらうとき「お母さん、さらしの長いのを持ってきてください」と言われ、何に使うのかと思ったら鉾が方向を変える辻回しの時、回転する際の遠心力で体重の軽い子供は振り落とされてしまうとの事。さらしを体に巻いて片方の端を鉾の芯柱に巻いて落下防止にするためでした。

鉾の中は本当に狭く6畳もないところに30人近い人が乗っているので大変な混雑です。
さぞ中は暑いのだろうと思うのですが、息子曰く風がすごく通るから暑いとはあまり感じないとの事でした。ただ降りる頃には2.3キロ体重の減っている方も多いとか・・・

画像:KBS京都

長刀鉾といえばお稚児さん。
今年のお稚児さんは祇園のお料理屋『にしかわ』さんの息子さんです。
今は生き稚児が乗るのは長刀鉾だけになってしまいましたが、昔はどの鉾にもお稚児さんが乗っていたと言われています。

娘の同級生がお稚児さんになったときの話。7月13日の八坂神社に参拝し『お位もらい』と言って稚児が神様のお使い、さらに『五位少将』という偉い位を授かると、母親でも触れることはできなくなります。お父さんとお爺ちゃんがお稚児役という長刀鉾から派遣されるお世話役の方から食事の差し上げ方や入浴の仕方など指導を受けながら、お稚児さんの世話をし、精進潔斎の生活を始めます。

地面を歩くことも許されませんので、学校へ行くのも担いでもらって車で通学、体育の授業も受けられません。お母さんによると、「息子が皆にちやほやされるさかい、どんどん天狗になってしもうて、宿題もせえへんねん、はよやりよし‼」と怒ると、後ろから稚児役さんが、「お母様、お稚児様にそのような口のきき方はいかがかと思います」とたしなめられたとか。大役を務めるお稚児さん、その家族は本当に大変でしょうね。

祇園祭の見どころは?

画像:KBS京都

さて、わたしがおすすめする祇園祭の楽しみ方をお教えしましょう。
17日の前祭、山鉾巡行では昔ながらの狭い道幅の新町通りに臨場感があっておすすめの見物スポットです。新町御池でお稚児さんが強力さんに担がれて鉾から降りてこられるところもシャッターチャンス。一方、神輿渡御では、八坂神社前の神輿3基差し上げから是非少し一緒に歩いてみてください。男衆の掛け声と共にすごい迫力があります。

後祭は年々少しずつ装飾が復元されていく大船鉾が楽しいですよ。

最後の大きな行事は28日の神輿洗い。
神様の乗られたお神輿さんを鴨川の水で清める行事ですが、その際ご奉仕するのが『お見送り祝い提灯行列』。江戸時代よりお神輿をお迎えお見送りする祝い提灯として鳥居形や御幣、将棋の駒などお目出たい変わり提灯を掲げた町衆が練り歩き、当時神輿洗の夜は洛東随一の賑わいであったといわれます。

画像:料理旅館白梅

これは2017年に復活し、今年は51基の変わり提灯が町衆と祇園を練り歩きます。祇園の夜に華やかな提灯行列、そして祇園の舞妓も加わりよりあでやかに神輿洗の夜を彩ります。祇園祭で唯一女性が参加できる神賑行事でもあり、とても美しいので是非ご覧になってみてくださいね。

京都の街が日に日に熱を帯びてきて、皆準備に忙しいと言いながらも誇らしげで、嬉しそうな、もうすぐ宵山・・・京都は今年も暑く、熱くなってきます。

画像:KBS京都

奥田朋子(おくだ ともこ)/料理旅館白梅 女将

1965年京都生まれ。1989年全日本空輸株式会社にCAとして入社。
1997年より若女将として、2017年より女将として料理旅館白梅を経営し、2017年より祇園新橋景観づくり協議会会長として京都、祇園の街づくり活動にも積極的に参加している。

文/奥田朋子

【画像】料理旅館白梅
※画像はイメージです。