祇園白川沿いの風情ある場所にたたずむ料理旅館白梅。老舗の格式、きめ細やかなおもてなしで、国内外から高い評価を得ています。
その人気旅館の女将から見る祇園の景色を『きょうとくらす』で毎月1回、コラムでお届けします。
宿でどう過ごす?
秋本番、観光シーズン到来! 紅葉、グルメに名所旧跡巡り、どこかに旅したくなる季節ですね。
第2回目の前回は、”料理旅館の裏側は?”と題して、私たちがお客さまをお迎えするまでにどんな準備をしているのかをご紹介しました。今回は、楽しく快適に旅館を楽しむコツをお伝えします。
旅の計画は楽しいものですが、今は情報があふれていて反対に迷ってしまうほど。特に宿選びは旅のクオリティを決める重要なポイントです。
若い時はほとんど外で観光していて、宿に帰るのは寝るときだけでしたから最低限のものがそろっていれば良かったですが、年齢を重ねるとやはり良い宿でゆっくり上質な時間を楽しみたいものです。
ホテルか?旅館か?
日本の宿泊施設を大きくざっくりと分けるとホテルか旅館、もしくはどちらかより、となるでしょうか。
私は母の大女将から「ホテルは“空間”を、旅館は“時間”を提供するところ」と教えられました。
確かに贅を凝らしたお部屋、ラウンジやスパを備えたホテルに比べて、旅館は“日本の文化を体験する”という意味合いが近年大きくなっていると感じます。
自宅に和室のない方も増えていますし、床の間や縁側、雪見障子など以前は当たり前だった日本の住まい方がだんだんと珍しくなってきました。私どもにお越しいただくお客さまで20代くらいの方は日本のしつらえを反対に新しく感じられるようです。
お伺いすると修学旅行もホテルだったので、お布団でお休みになるのも初めてや、お正月のお屠蘇をしたことがない、ではなく「知らない」とおっしゃる方もおられます。
京都の大きな役割は生きた日本文化を次世代へ伝えていくことだと思いますので、旅館は“美しい日本の衣食住、四季折々のしつらえを体験できる総合文化施設“と言えるかもしれません。
海外のお客様からのQuestion
最近は海外のお客さまも随分増えてこられましたが、旅館に泊まられることを“Stay”ではなくまさに“Experience”と表現されますね。
本当の日本文化を体験したい、と色々なご質問も頂きます。「檜風呂のお湯はあふれてもいいの?」というシンプルなものから数寄屋建築や床の間についてなど、うちの棟梁に電話して聞かなければならない様な高度なものまでさまざま。
先日は「お風呂に入るときの布のたたみ方の作法を教えてほしい」といわれ、よくよくお伺いしたら、昔の日本映画でお風呂の入り方を勉強されてこられたとの事。
聞けば、浴槽に入る際、お湯の中につけないように頭にのせていた手ぬぐいの事でした。確かに茶道に袱紗のたたみ方があるのですから、そう思われてもおかしくないですね。
お宿時間を楽しむコツ
そんな宿での時間を十分楽しんでいただくために、女将からのアドバイスをいくつか…
余裕を持った到着がおすすめ
雰囲気と様々なサービスを楽しむため、ご到着は余裕をもってどうぞ。
ご到着のお菓子とお茶で季節を感じて頂き、どうぞほっと一息つかれてください。ご到着20~30分位前にご連絡を頂けると、お迎えの準備を万全にできますのでチェックイン、ご案内がよりスムーズですよ。
記念日や苦手な食材は伝えてもOK
記念日や誕生日など、わざわざ言うことでも、と遠慮される方も多いのですが、事前にお伝えいただくとお部屋のしつらえ、祝いの一品など準備ができてこちらも助かります。
せっかくのお料理をお楽しみいただくためにもアレルギーやお苦手な食材もご遠慮なくお知らせくださいね。
観光の情報など、ご質問のお電話はチェックアウト後の正午以降、チェックイン前の午後2時半ころまでが狙い目。プラスアルファのお役立ち情報もお伝えできますよ。
“お得な旅”が復活!
2023年6月で終了していた、京都での旅行が1人1日最大5,000円もお得になる「きょうと魅力再発見旅プロジェクト」が12月限定で復活します。
お2人なら1泊1万円、4人家族なら2万円もお安く旅行できます。
美しい季節、ご友人やパートナー、大切な方とどうぞ素敵な旅行をなさってくださいませ。
奥田朋子(おくだ ともこ)/料理旅館白梅 女将
1965年京都生まれ。1989年全日本空輸株式会社にCAとして入社。
1997年より若女将として、2017年より女将として料理旅館白梅を経営し、2017年より祇園新橋景観づくり協議会会長として京都、祇園の街づくり活動にも積極的に参加している。
文/奥田朋子
【画像】料理旅館白梅