KBS京都で放送中の『谷口流々』。
谷口キヨコが、京都を中心に活躍する人々の仕事現場に足を運び、十人十色の人生哲学を紐解いていきます。
2024年3月23日(土)の放送では、『堤淺吉漆店』の4代目・堤卓也さんに話を伺いました。
Profile:4代目・堤卓也
今回ご紹介する堤卓也さんは、明治42年から続く『堤淺吉漆店』の4代目。漆の魅力を発信する活動を続けています。
堤さんの主な仕事は、漆の樹液を仕入れて塗料に精製することなのだそう。
塗る職人の要望に合わせて調合して、漆芸家や職人へ届けています。
漆の道へ進むきっかけ
祖父の家に来ると当たり前にある漆は、堤さんにとって幼少期から身近なものだったんだとか。漆は、“遊び道具や物を直すもの”というイメージを持っていたそうです。
なんとなく「京都を出たい」という気持ちがあった堤さんは、高校卒業後、北海道大学の農学部に進学。
畜産の経験やニュージーランドへの留学を経て、大学卒業後は北海道で鶏肉屋に就職します。
しかし、道東へ出張中父親から「工場の精製が大変だから手伝ってほしい。」と一本の電話を受けたことを機に京都へ戻ることを決意しました。
堤さんが漆店で働きはじめてすぐに業績は右肩下がりに……。
当時漆の精製にのめり込んでいた堤さんは、色々と調べていくうちにかつて500トンあった漆の生産量が23トンまで減少していることを知ります。
身近な友人にも漆を気軽に使っている人が少ないことで、「漆の文化がこのまま無くなっていくのではないか」と不安を覚えていったそうです。
漆×サーフボード
漆の需要が年々減少していることを危惧していた堤さんは、サーフボードの原型といわれる“アライア”に着目! 主流のサーフボードは、ガラスクロスや合成樹脂など地球に返らない素材でできていることに違和感を覚えました。
そこで、環境に優しいナチュラルな素材100%で作った漆のサーフボードを、プロデューサーのSHIN&COの青木さんと共にオーストラリアのサーフボード職人のトム・ウェグナーさんと共同開発しました。
トムさんは、“アライア”を復活させた第一人者。
漆を使ったサーフボードで環境に配慮する意識を高めたいという堤さんの考えに共感し、美しくて速いサーフボードを共同で完成させました。
漆でつながる縁
さらに、プロダクトに必要な素材作りに接する機会をもっと作りたいと考えた堤さんは、京北地域で漆の植樹体験を開始しました。
さらに2024年4月には、自然と人々の暮らしを繋げる拠点『Und.(アンド)』をオープン。
材料屋としてはもちろん、“植える”から始まるものづくりから生まれたプロダクトを置いたり、ワークスペースとして活用し、漆はもちろん他の工芸やものづくりにも触れられる空間になっています。
【店舗情報】
Und.(アンド)
住所:京都府京都市下京区間之町通松原上る稲荷町540
電話番号:075-351-6279
堤さんを表すことば
今回の“堤さんを表すことば”は、『つくる』です。
ものづくりや自然と触れ合いながら、環境に繋がるさまざまな体験に参加してみたくなりますね!
番組動画もチェック
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文/sumire
【画像・参考】谷口流々(毎週土曜日9:30~10:00) – KBS京都
※この記事は、2024年3月23日(土)放送時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。