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京都府立植物園 PLANTS WONDER WORLD 植物多様性が失われる原因とは?【きょうとくらすコラム】

ことし開園100周年を迎えた京都府立植物園。
日本で最初の公立植物園として誕生して以来、府民に親しまれ、歴史を重ねてきました。四季折々の草花の栽培はもちろん、希少な植物の保全にも力を入れています。

このコラムでは、植物の専門家である戸部園長に季節ごとの見どころやユニークな植物の生態を教えてもらいます。物言わぬ植物から学ぶことはたくさん!緑に癒され、潤いある暮らしのヒントも見つけてくださいね。

画像:京都府立植物園

植物多様性の喪失

‘‘植物多様性の喪失‘‘とはよく言われていますが、地球上ではどんなことが起こっているのでしょうか。

そもそも被子植物とは、種子のもとになる胚珠が果実のもとになる子房に覆われ、守られている植物のことを言います。
世界には花の咲く植物はどれくらいあるのかというと、最新の分析によれば、約35万種が生息しています。例えば、桜など木本の植物、バラやチューリップなど花、トマトやリンゴも被子植物に分類されます。今でも毎年2000種以上が新たに名前をつけられ、新種として加えられます。

植物多様性の喪失の原因は、主に人間活動(不適切な土地利用、過剰開発、気候変動、外来生物の侵入など)によるのですが、そのせいで植物の生息地が消失あるいは縮小しています。既に知られている種のうち、45%が絶滅の危機にあります。ラン科に至っては、最大の種数からなる大きな植物群(2万6千種)なのですが、実に56%もの種が絶滅の危機にあると考えられています。世界では、既に600種ほどが絶滅しています。それらの種は、二度と見つかることがありません。また、京都府では約2400種の被子植物が記録されていますが、そのうち3割が絶滅の危機にあり、46種はすでに府内から絶滅してしまいました。

画像:京都府立植物園

種が絶滅し、多様性が失われることがどうして大変なんだろうと思いませんか。
生態系という言葉を耳にしたことがあると思いますが、植物や他の生物が、それらが生きている水や土壌などを含む環境全体のことを言います。実は、そのなかで多様な生物がどのように関わり合って生きているかほとんど分かっていません。種が失われ、生態系が壊れると、今までなかった病気(病原性の細菌やウィルスなど)が出てくるのではないかと心配してしまいます。天敵がいなくなったとき急速に増える害獣などを想像してみて下さい。

世界の植物園を見てみよう!

10月6日、京都府立植物園100周年を記念して、世界の植物園が集まり、国際シンポジウムが開催されます。テーマは「人と自然の共生 – 植物園の役割を考える」。シンポジウムには、世界に3つしかない世界遺産植物園が集結します。1つは、世界最古のイタリアのパドヴァ植物園、そして世界最大の植物園、イギリスのキュー王立植物園、もう一つは日本にも府立植物園にも縁の深いシンガポール植物園です。それぞれの植物園の今と未来への取り組みを語ってくれます。イヤホンによる同時通訳つき、無料です。是非ご参加ください。

画像:京都府立植物園

これからが見頃の植物たち

生態園には、カリガネソウや京都府の絶滅危惧種の1種であるスズムシバナなど紫色(白もあります)の可愛らしい花をつけ始めています。

画像:京都府立植物園

四季 彩の丘では、いろんな種類のヒョウタンがぶら下がっていて楽しい。温室にもいろんな花が咲き出しています。中でも、コスツスとかなかなか変わった花をつけています。

画像:京都府立植物園

戸部 博 京都府立植物園 園長

1948年青森生まれ。東北大学理学部卒業。千葉大学理学部助手、京都大学理学研究科教授など39年間大学につとめる。その後、日本植物分類学会長、日本植物学会会長などをつとめ、2018年4月1日より京都府立植物園の園長に就任。自らの主導により植物や植物多様性保全、京都府立植物園に関する研究を専門家によって一般の方に分かりやすく伝えるサイエンスレクチャーを2023年より植物園にて開始。

文/戸部 博

【画像】京都府立植物園