KBS京都で放送中の『谷口流々』。
谷口キヨコが、京都を中心に活躍する人々の仕事現場に足を運び、十人十色の人生哲学を紐解いていきます。
2023年7月15日(土)の放送では、貼り箱製造会社代表・戸田慶吾さんに話を伺いました。
Profile:貼り箱製造会社代表・戸田慶吾さん
戸田慶吾さんは、厚紙で作った箱をデザイン製の高い化粧紙などで包んで作る貼り箱の製造会社『トダコーポレーション』の代表を務めています。
日々、様々な業界の商品を包むパッケージを生産。特に貼り箱といわれるパッケージを受注生産しています。
貼り箱とは?
貼り箱と一口に言っても、その種類は様々。例えばこちらは、一般的によく目にする、身と蓋の2部位からなる貼り箱です。
そしてこちらは、チョコレートのパッケージなどによく見られるブック式。
また、一見開き方がわからないこんな箱も。
このように、左右にスライドして開けるものです。
戸田さんは、「貼り箱は、商品が人から人に渡る一瞬を輝かせるのが役目だと思っています。そこには、人それぞれのストーリーやサプライズがある。貼り箱を開ける瞬間にドキドキやワクワクが溢れるように、一生懸命作っています」と話します。
手にとって実際に触れるからこそ生まれる、デジタルには出せない感動を支えてくれるのが、この貼り箱なんですね。
代を受け継ぐ
戸田さんの父・正和さんは、仕事の話を家で一切しなかったそう。そのため、戸田さんは家業の内容をあまり知らず、家業を継ぐという意識がないまま大人になり、大学を卒業します。
大学卒業後は、大手着物チェーンに就職。1年半ほど働いた頃、父・正和さんから突然一本の電話が掛かってきて衝撃的な事実を告げられます。
「お前の会社、潰れるで」と。
その言葉通り、その翌日に戸田さんが務めていた会社は倒産。新たな仕事をどうしようかと考えていたところ、その数日後に今度は正和さんから一つの段ボール箱が届いたのでした。
段ボールを開けてみると、貼り箱がたくさん入っていました。そして、同封されていた紙には、様々な企業の名前がずらり。正和さんからの「新規営業に行ってこい」というメッセージでした。
そこで、一軒一軒企業を回ったという戸田さん。なんのノウハウもないこの段階では、当然一つも売れることはなかったと言います。
しかし、そんな経験がきっかけで、家業を継ぐことに興味が湧いてきた戸田さんは、25歳の時に入社。
既存の取引先に一軒ずつ足を運び、「なにか至らないところはありますか」と尋ねて回りました。すると、「納期が遅い」や、「箱が汚い」など、様々な意見をもらったと言います。
そんな声を会社にフィードバックし続け、会社を良くしようと奮闘していると、正和さんから「じゃあお前が会社やれ」との言葉が。
その言葉がきっかけで、29歳の時に戸田さんが会社の代表に就任することになりました。
貼り箱の可能性
近年パッケージ業界で話題となったビッグニュースは、『iPhone』の外箱の登場でした。
「このパッケージが日本に到着した時、全国の箱屋さんはみんな驚いていました」と戸田さん。
当時はとても斬新な箱として注目され、戸田さんも毎日のように分解して、その仕組みを探っていたと言います。
「これからこんな箱が主流になっていくのなら、すぐに機械を導入しなければ!」と思い立った戸田さんは、まず機械メーカーに連絡。そういった箱を作れる機械はあるものの、イタリア製で当時はまだ日本に一台も導入されていないものでした。
それを聞いた戸田さんは、すぐにイタリアに視察へ。目指す箱がどんな機械でどんな風に作られているのかを、実際に見て学びました。
数年悩んだ末に、導入を決意したのがこちらの機械。日本で初めてこの機械を導入したことで、その噂が広まって、顧客の新規開拓にも繋がったのだそうです。
そんな行動力溢れる戸田さんが、会社の“裏テーマ”として掲げているのが、“モテる会社”。
まずは従業員に「この会社に入って良かった」と思ってもらえるような会社に、そして、顧客にドキドキやワクワクを提供し、信頼してもらえるような会社にしたいという思いが込められた言葉です。
戸田さんを表すことば
今回の“戸田さんを表すことば”は、『箱たらし』です。
“モテる会社”作りをしていきたいという戸田さんの思いを、“人たらし”という言葉にかけて表現。そして、戸田さんが手がける素敵な箱に、私たちが“たらされる”という意味も込められています。
誰かから誰かへとものが手渡される瞬間を、感動的に彩る貼り箱。普段何気なく目にしているパッケージの世界は、実はとても奥深いものなのだと気付かせてくれましたね。
文/ななえ
【画像・参考】谷口流々(毎週土曜日9:30~10:00) – KBS京都
※この記事は、2023年7月15日(土)放送時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。