KBS京都で放送中の『京都浪漫~悠久の物語~』。
今回は、2023年11月5日(日)に放送された『紅葉の名所東福寺と塔頭寺院~禅のこころと美~』から『芬陀院』をご紹介します。
公家とのゆかりを感じさせる「芬陀院」
25もの塔頭寺院がある東福寺。
そのひとつで、通称“雪舟寺”とも呼ばれるのが『芬陀院(ふんだいん)』。
芬陀院へは市バス『東福寺』下車、歩いておよそ10分。京阪電車『東福寺』駅下車、歩いておよそ10分です。
芬陀院は一年を通して公開されている塔頭寺院。美しい椿の生垣に沿って進むと、大玄関と唐門があります。
御所より移築された建物が公家とのゆかりを感じさせます。
こちらには焼失した東福寺の大仏の蓮弁が飾られています。
芬陀院は正式には『芬陀利華院(ふんだりかいん)』と呼ばれます。芬陀利華院とは一条内経(いちじょううちつね)の法号です。
本尊・阿弥陀如来坐像はやさしいお顔立ちです。
“雪舟寺”と呼ばれる理由
現在の建物は、江戸時代の火災後、桃園天皇の皇女・恭礼門院(きょうらいもんいん)の旧殿を賜って再建されたと伝わります。
東福寺には、かつて明兆という画僧がいたのだそう。雪舟が明兆の絵を見て勉強しに来られた際に、芬陀院を宿坊にしていました。
その際、一条兼良から亀の絵を所望受けた雪舟。しかし、一向に描かず枯山水庭園『鶴亀の庭』を作庭したことから『雪舟寺』と呼ばれるようになりました。
鶴亀の庭は2度の火災と永い歳月で荒廃し、愛好家から惜しまれていたところ、昭和14年に重森三玲の手により一つの石も足すことなく復元されました。
亀島の上に置かれた石には面白い伝説が残ります。
ある日夜中に庭の方から音がすると感じた住職が、庭に出てみると亀島が動いていたのだとか。そこで雪舟に助けを求め、亀島の上に石を置いたことから動かなくなったというのものです。
昭和の作庭家・重森三玲が手がけた東庭。こちらも『鶴亀の庭』です。
雪舟が、留学のため明に向かった船に見立てた亀石の姿。石は雪舟、そして、松の木が帆を表しています。
茶道に精通する2人が建てた「図南亭」
東庭の北側にあるのが『図南亭(となんてい)』。一条昭良(いちじょうあきよし)の300回忌に建てられた茶室です。
一条昭良は、茶人・金森宗和(かなもりそうわ)に茶の湯を学び、茶道の愛好家だったことから『茶関白』の異名をもつ人物。後に出家して恵観(えかん)と称するようになります。
恵観公は、“茶関白”と言われるほどお茶に精通していたそう。『図南亭』には、石川丈山(いしかわじょうざん)が書いたとされる扁額が掲げられています。
一条家は公家、石川丈山は武家という間柄でしたが、茶道に精通していたという共通点が。丈山も“茶道の祖”と言われていたことで、大変話が合ったのではないかと言われています。
昭和44年に復元され、今は『恵観堂(えかんどう)』と名付けられています。
東福寺参拝の折りに、ここで茶を楽しんだという恵観公。
露地庭には、恵観公が愛好したと伝わる勾玉形の手水鉢(ちょうずばち)と、
屑屋型石灯籠が置かれています。
「本堂」も見逃せない
本堂には、一条家である昭憲皇太后が使われた机が置かれています。
本堂の襖絵は、御所から賜ったもの。
本堂の障子戸は開け放たれていて、『鶴亀の庭』を眺めることができます。
もみじの引き手がかわいらしいですね。
ぜひ襖絵や茶室など風情溢れる『芬陀院』でゆったりとしたひと時を過ごしてみてください。
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文/sumire
【画像・参考】京都浪漫~悠久の物語~(第1・2週 日曜日 21:00~21:55/再放送 第3・4週 日曜日 21:00~21:55) – KBS京都
※この記事は、2023年11月5日(日)放送時点の情報です。