1903年(明治36年)、日本で2番目に誕生した京都市動物園。120年を超える歴史を経て、SDGsや動物福祉に取り組み、進化を続けています。
和田園長が魅力いっぱいの動物園の楽しみ方を毎月一回、コラムでお届けします。園内にいる動物の旬な話題から、野生動物の生態まで・・・さらに動物たちを通して私たちの生き方や子育てなどのヒントになる話も紹介します!
ひかりの動物園
皆様は、夜の動物園をお楽しみいただいたことはありますでしょうか?
2013年の開園110周年を記念し、夜間開園用の照明を設置して整備を完了した5つのエリア(おとぎの国、もうじゅうワールド、アフリカの草原、ひかり・みず・みどりの熱帯動物館、東エントランス)で、昭和46年以来42年ぶりとなる夜間開園を再開し、2015年からは、新たに整備が完了したゾウの森と京都の森を加えて継続しています。
また、2018年からは、ドリームナイト・アット・ザ・ズーも開催しております。
オランダのロッテルダム動物園にあるドリームナイト財団が主催している世界的な活動であり、病気や障害のある子どもたちを夜の動物園に招待し、楽しく過ごしてもらうことを理念としています。京都市動物園は2018年に世界で289番目のパートナーとなりました。
本園で初めて夜間開園が開催されたのは1913年7月で、納涼夜間開園として長く親しまれましたが、1971年に廃止されています。
また、写真中央の「いとざくらばし」の親柱は、現存しており、京都の森とエミュー舎東南側の白川暗渠上でご覧いただけます。
1904年に園内に植樹された桜が、1910年には花見ができるほどに生育したことから「観桜会」が開催されていましたが、1915年4月からは観覧時間を延長し、花季夜間開園として開催されるようになりました。しかし、第二次世界大戦の影響もあり、1943年に中止になっています。
特別な雰囲気
夏と秋の夜間開園では、日中の暑い時間帯を避け、夕暮れとともに過ごしやすくなる時間に、普段とは異なる雰囲気を醸しだす動物たちの姿をご覧いただけます。
特に、京都の森で飼育している夜行性のムササビが動いているところを観察するのに、夜間開園は絶好の機会です。
そして、近年は連携協定を締結している大学(平安女学院大学9月、嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学10月)やご協力いただいている団体とのコラボイベントも開催しておりますので、スケジュールをご確認の上、お楽しみいただければと思います。
なお、動物福祉の観点から、昼行性の種や夜間に展示することが動物の負担になる種、下記については、夜間開園での展示を行っておりませんので、その点はご承知おきください。
「おとぎの国」ウサギ、オウム
「京都の森」ニホンツキノワグマ、ホンシュウジカ、オオコノハズク、チョウゲンボウ、ハヤブサ、カ ワセミ、ウズラ、トラツグミなど
「サルワールド」シロテテナガザル、フサオマキザル、ワオキツネザル、マンドリル、ニシゴリラ、チンパンジー
「鳥類舎」エミュー、インドクジャク、シロエリオオヅル、タンチョウ
「ひかり・みず・みどりの熱帯動物館」ケヅメリクガメ
「その他」ヤブイヌ、シロフクロウ
ちなみに、1915年から1942年までの花季夜間開園は、ソメイヨシノの開花日が4月初旬から中旬にかけてでしたが、地球温暖化の影響で開花が早くなっており、3月末頃に咲くように変化してきています。
また、京都の森水路では京都ホタルネットワーク様の協力を得て、2014年から始めたゲンジボタルの増殖・定着に向けた取組の成果が表れ、今年もゲンジボタルを観察することができました。
加えて、最近は園内の赤外線観察カメラによる調査で、さまざまな野生動物(ハクビシン、アナグマ、タヌキ、キツネ、アライグマ、イタチ等)が夜間に動物園を活用していることが確認されています。
夜間開園にご来園の際には、飼育動物だけにとどまらず動物園の歴史や地球環境の変化、地域の野生動物についても思いを巡らせていただければと思います。
2024年度夜間開園
閉園時間を20:00まで延長し、夜間開園を実施します。
※入替制ではありませんので、一旦退園していただく必要はありません。
※入園は19:30まで。
夏の夜間開園 2024年7月27日(土)、28日(日)
2024年8月10日(土)、11日(日)
秋の夜間開園 2024年9月14日(土)~16日(月・祝)
2024年10月12日(土)、13日(日)
春の夜間開園 2025年3月29日(土)、30日(日)
ドリームナイト・アット・ザ・ズー
開催日時:2024年9月28日(土)17:30~20:00まで
※入園は19:30まで
対 象:18歳以下の障害のある、もしくは病気を患っているお子様とその同居の御家族
定 員:2000名(事前申込制および抽選)
募集期間:2024年8月1日(木)~8月9日(金)
申込方法:京都いつでもコール(電話受付は8月1日(木)10:00~開始)
電話 075-661-3755(8:00~21:00)
FAX 075-661-5855
和田晴太郎 京都市動物園 園長
1967年岐阜市生まれ。獣医師、学芸員。北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業。青年海外協力隊を経て、1996年から京都市動物園に勤務。臨床獣医師として12年従事した後、安全管理、研究教育の初代係長として活動を推進。2017年から種の保存展示課長として、動物園運営に携わる。2020年から副園長として従事した後、2024年4月から園長に就任。
文/和田晴太郎
【画像】京都市動物園