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園長直伝“京都市動物園を100倍楽しむコツ”野生の窓【きょうとくらすコラム】

1903年(明治36年)、日本で2番目に誕生した京都市動物園。120年を超える歴史を経て、SDGsや動物福祉に取り組み進化を続けています。

和田園長が魅力いっぱいの動物園の楽しみ方を毎月一回、コラムでお届けします。園内にいる動物の旬な話題から、野生動物の生態まで・・・さらに動物たちを通して私たちの生き方や子育てなどのヒントになる話も紹介します!

画像:京都市動物園

和田園長からのご挨拶

2024年4月、京都市動物園第33代園長に就任しました和田と申します。1996年5月に京都市動物園に配属となり、29年目を迎えました。動物園では獣医師として飼育動物の診療業務から始まり、安全管理、調査研究・教育、動物園運営に携わってきました。

現在、2020年に策定した『いのちかがやく京都市動物園構想2020』~いのちをつなぎ、いのちが輝く動物園となるために~で示した理念及び行動指針を基に課題の達成に向けて取り組んでいるところです。これまでの経験を活かし、さらなる発展を目指していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

動物園は‟野生の窓”

2024年1月、京都市動物園開園120周年記念シンポジウムを開催し、大勢の方にご参加いただくとともに、動物園に様々な期待をお寄せいただきました。

画像:京都市動物園/山極名誉園長の講演

記念シンポジウムでは山極壽一名誉園長(総合地球環境学研究所所長)に『野生の窓としての動物園の歴史』と題して、動物園の歴史や役割についてお話しいただきました。 ところで、皆さんは『野生の窓』としての動物園を意識されたことはあるでしょうか。

動物園では野生動物を飼育しており、来園者に展示することで動物の行動や生態を知ってもらうだけにとどまらず、彼らを取り巻く状況を伝えるのに最適な場でもあります。そして、近年では、そのような状況に対して、どのように行動変容を促すかも含めて役割を求められています。

ヒトは視覚が8割

野生の状況を伝えるにあたり、“目の前にいる”ことは、視覚から8割以上の情報を得ているヒトには、とても有効です。逆に言えば、“目の前にない”ことを伝えるのは、とても難しいということであり、様々な工夫が必要となります。

画像:京都市動物園

動物園には、京都府と協力して運営している「野生鳥獣救護センター」が併設されており、京都市内で傷ついたり、衰弱したりした野生の鳥類と哺乳類を救護※1しています。その中には、快復したものの、自然復帰がかなわない動物もいるため、「京都の森」で飼育展示※2することがあります。

画像:京都市動物園

園内で展示しているものの中には、他府県及び市外で保護された動物※3やワシントン条約違反により摘発された保護動物※4もおり、彼ら自身が野生の中で置かれている状況を伝えやすくしてくれています。

画像:京都市動物園/ホウシャガメ

野生動物を身近に感じて

動物園の設備には、防鹿柵や電気柵も設置してあります。まずは身近な野生動物との共生について関心を持っていただけると嬉しいです。

画像:京都市動物園/防鹿柵
画像:京都市動物園/野鳥舎の電気柵

動物それぞれが持つカラダの特徴や鳴き声、食べものの好み、集団の中での関係など、生態を知ったうえで、動物とのつきあい方や、私たちに出来ることを考えるきっかけにしていただければと思います。

画像:京都市動物園
画像:京都市動物園

ハヤブサのカップル

今年は2018年からオスとメスでの飼育展示となっていたハヤブサが初めて産卵し、メスが抱卵し、オスがその近くで警戒する姿を観察することができました。こうした姿は、環境変化に適応し、高層ビルなどで繁殖をするようになったハヤブサのたくましさとつながるように思います。

画像:京都市動物園/ハヤブサのナリヒラ(オス)
画像:京都市動物園/抱卵中のコマチ(メス)
画像:京都市動物園/ハヤブサの卵

動物の記念日

啓発や保護のために動物にちなんだ記念日が設定されています。そうした機会に動物たちのことを思い出してみてはいかがでしょうか。
6月15日 オウムインコの日
6月17日 世界ワニの日
6月21日 世界キリンの日

動物園では「動物園DEサイエンストーク」と題して、研究者や専門家からフィールドやラボでの研究成果を来園者にお話しする機会があります。詳しくは京都市動物園のホームページをご確認ください。

画像:京都市動物園

注釈

※1 野良犬、野良猫、伴侶動物(ペット)、家畜や家禽、特定外来生物に指定されている鳥獣(アライグマ,ヌートリア等)、両生類や爬虫類等は対象外です。
 鳥類・哺乳類であっても対象外であったり、対象種であってもヒナ・幼獣は受付できません。
※2 アオバト、イソヒドリ、オオコノハズク、チョウゲンボウ、トラツグミ、ニホンキジ、ハヤブサ、キンクロハジロ、ヒドリガモ、カルガモ、ユリカモメ、ホンドギツネ
※3 ニホンアナグマ、ホンドタヌキ
※4 ヒラセガメ、ホウシャガメ、モエギハコガメ

6月のイベント

■日本とマレーシアの子どもたちで一緒に考える「ボルネオゾウのレスキュー大作戦」
【実施日時】2024年6月29日(土)9:30~12:00
【対  象】小学校4~6年生 20名程度※ご家族の方も見学できます 。
【募集期間】2024年4月27日(土)~6月14日(金)

■ごはんですよ~
動物たちがごはんを食べる様子を観察できるように、ごはんの時間を公開します!
飼育員さんのお話を聞きながら、動物たちのごはんのぞいてみませんか?
毎週土曜日 ※6月の開催情報は京都市動物園ホームページをご確認ください。

京都市動物園ホームページ

■世界キリンの日(6月23日) イベントを開催予定 

和田晴太郎 京都市動物園 園長

1967年岐阜市生まれ。獣医師、学芸員。北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業。青年海外協力隊を経て、1996年から京都市動物園に勤務。臨床獣医師として12年従事した後、安全管理、研究教育の初代係長として活動を推進。2017年から種の保存展示課長として、動物園運営に携わる。2020年から副園長として従事した後、2024年4月から園長に就任。

文/和田晴太郎

【画像】京都市動物園