祇園白川沿いの風情ある場所にたたずむ料理旅館白梅。老舗の格式、きめ細やかなおもてなしで、国内外から高い評価を得ています。
その人気旅館の女将から見る祇園の景色を『きょうとくらす』で毎月1回、コラムでお届けします。

五山送り火も終わり、京都は少しずつ夏の終わりを感じさせる季節となりました。
今回は、そんな夏の終わりの京都についてお話させていただきます。
夏の締めくくり…

五山送り火も終わり、晩夏を迎えた京都。 祇園白川も赤トンボが飛び始め、萩が花芽をつけ始めました。
今年は6月末の梅雨明けから何回「暑い」と言ったでしょうか。きっと自己最高記録だと思います。蝉の声も例年より少なく感じましたが、どうやら梅雨が短く雨が少なく、また高温で土がかちかちになってしまい孵化しても土中から出てこられない蝉が多かったと聞きました。
そして、ようやく熱気のなかにも激しい暑さが少なくなってきたように感じるこの頃ですが、日中は相変わらずエアコンなしでは生きていけない毎日。
子どもの頃は今ほどの湿度ではないにしてもよく扇風機で凌いでいたものだと思います。京都の家は、夏を主として建てるといい家の中を風が通るように建てられているといいますが、それが裏目に出てしまい、エアコンの冷たい風もどこかの隙間から流れてしまいます。
せめて見た目は涼やかにとふすまは簀戸に、畳には網代、座布団も麻に、夜は寝室に蚊帳を吊り、テレビで怪談を見て、縁側や外の床几でスイカやまくわ瓜を食べ、ザ・昭和の夏でした。

五山送り火が終わると町内の話題はさっそく地蔵盆に。元々は町内におられるお地蔵様を囲んで子供たちの健やかな成長を祈る行事ですが、今や地蔵盆はお年寄りの健やかな日々を祈る大人の社交場になりつつありますね。
そんな中、年々年齢が上がっていく平均年齢も一気に若返らせてくれるのが、お茶屋さんに住み込んで働く舞妓さんや、見習いの仕込みさんたちです。地蔵盆は、年齢層も仕事も様々ですが、昼は数珠回しにお参り、福引など夜はBBQ で飲み放題、食べ放題の懇親会。皆1年の無事をねぎらい、これからも健やかにと話は尽きません。同じ町内にいても普段なかなかゆっくり話すことがないので、子供気分に戻れて楽しい時間ですが、小学校の頃にしたいたずらを今でも怒られるのは、困りますね。
涼しくなるはなし!?

また、夏に人が集まると、怖い話になるのは昔と一緒です。実は祇園にも心霊スポットがあるそうなんです。
先日舞妓さんから聞いた話ですが、彼女は霊感が少しある子で15歳で舞妓の仕込みでお茶屋さんに住み始めたころから、家の中で気配がしたようで、彼女曰く「でもそんなんお茶屋のお母さんに言うたら変な子や、と思われたらいややし・・て黙ってたんどす。」でもそのうちだんだん着物の女性までが見えるようになってきて辛抱たまらなくなったそうである日意を決して、お母さんに相談したところ
「あぁ、あんたにゆうてへんかったかいなあ、うちにはひとりいやはるえ。」とさも普通の事のような返答にビックリ。
どうもそのお茶屋さんでは明治時代におられた芸妓さんが酔っぱらって2階から転落して亡くなったのですが、自分が亡くなったということに気が付いていないらしくずっとお茶屋さんに住み込んでおられるそうな。お母さん曰く、そのお茶屋が繁盛しているのも彼女のおかげで、忙しくなるとお盆にお銚子やビール乗せて運んだはるそうです。
花街の女性はオバケになっても働き者なんですね。空になったビールグラスが気が付いたら彼女のお酌でいっぱいになってた…てちょっと嬉しいかも。おまけにヒンヤリしてそう!
夏の終わり、どうぞこれからもお健やかにお過ごしください。
奥田朋子(おくだ ともこ)/料理旅館白梅 女将
1965年京都生まれ。1989年全日本空輸株式会社にCAとして入社。
1997年より若女将として、2017年より女将として料理旅館白梅を経営し、2017年より祇園新橋景観づくり協議会会長として京都、祇園の街づくり活動にも積極的に参加している。
文/奥田朋子
【画像】料理旅館白梅