春の京都の風物詩といえば、「ヨーイヤサー」の掛け声で始まる『都をどり』。京都最大の花街である祇園甲部の芸妓舞妓が一斉に舞う『総をどり』は圧巻です。
2024年は『都をどり』が始まった明治5年から公演通算150回目を迎える記念の年です。2月16日(金)、報道陣に向けた都をどり記者発表が行われ、八坂女紅場学園理事長・杉浦京子さん、都をどりの作詞・構成を行った同志社大学学長で文学部教授の植木朝子さんが、今年の開催に向けた想いと見どころを解説されました。
故きを温ねて新しきを知る
杉浦理事長は通算公演150回目の節目を迎えるにあたり、「これまでの都をどりの歴史を振り返り、未来を寿ぐような構成にしました。芸の力で元気や勇気を受け取っていただけたら嬉しいです。」と語りました。
『都をどり』の演目は、八景(8つのシーン)に分けて構成されています。第1景『置歌(おきうた)』と第八景『歌舞練場桜揃(かぶれんじょうさくらぞろえ)』は例年披露される決まりの構成ですが、他のシーンは、その年ならではの演目や舞で構成されます。
今年話題になっている『源氏物語』をメインに演目が構成されています。
近年は採用されることが少なくなっていましたが、かつては第2景の梅の場の背景には、その年の恵方を意識したところが選ばれていました。今年の恵方は『東北東』ということから、京都から東北東の方角にある滋賀県犬上郡の『多賀大社』が舞台の背景に描かれます。春のうららかな陽気と滋賀県第一の大社の荘厳な雰囲気を楽しめます。
第3景~第6景は源氏物語の世界を喜怒哀楽にのせて
第3景からは4つの構成で演出される源氏物語の世界が始まります。構成・演出を担当した植木学長は「“喜怒哀楽”を意識した構成にした」と話します。
光源氏と夕顔の出会いを描いた第3景『夕顔垣根納涼(ゆうがおかきねのうりょう)』は出会いの喜びを。第4景『葵上』は、六条御息所の生霊が葵上を襲う有名なシーン。女の嫉妬や悲哀を表します。
70年前の都をどりを再現
第5景は、『須磨明石(すまあかし)』。須磨に下った光源氏が龍神の導きによって、住まいを移した明石で、明石の君に出会います。
さて、この5景の見どころは他にもあります。1955年(昭和30年)の都をどりの第5景で上演された歌詞と音曲を活かした曲です。約70年前の都をどりの雰囲気を味わえる貴重な機会です。当時の都をどりの監修は小説家の谷崎潤一郎。作詞は大正・昭和を代表する作家・詩人の吉井勇というのも、すごい面子です。
2024年のポスターは「銀襖」
都をどりのポスターは毎年可愛らしい舞妓さんが描かれることから、「今年はどんな子かな?」と楽しみにしている方も多いはず。
今年のポスターを描いたのは、日本画家の諫山宝樹(いさやま たまじゅ)さん。今年は珍しく背景が“銀色”です。例年ポスターの背景は“金色”で描かれることが多いのですが、都をどりの第1景は『銀襖』ということもあり、実際の舞台をイメージした作品になっています。
諌山さんは「舞の仕草一つひとつに意味が込められているので、その動きを忠実に表したかった」と語りました。
諌山さんは、2003年に京都市市立芸術大学日本画専攻を卒業後、同大学院で保存修復専攻を終了し、京都市内の数々の寺社に絵を奉納したり、大型ドラマで日本画の指導や、衣装人物画の担当を行っています。
初舞台の舞妓・穂乃佳さんと豆季依さん
今年初舞台を踏む穂乃佳(ほのか)さん(右)、豆季依(まめきよ)さん(左)が、初舞台に向け意気込みを語りました。
穂乃佳さんは京都市中京区出身で幼い頃から舞妓さんに憧れていたそう。「舞台にださせてもらうのが、ものすご嬉しおす」と。豆季依さんは、2月14日(水)に店出し(舞妓としてデビュー)したばかり。「今も緊張さんどすけど、お姉さんたちの足をひっぱらへんようにきばりおす」と笑顔を見せていました。
総をどりの衣装 源氏物語のモチーフから
都をどりのハイライトともいえる『総をどり』で舞妓が纏う衣装は、鮮やかな『浅葱(あさぎ)色』が特徴です。例年若干の濃淡は違えどこの色を見れば、「都をどりやなぁ」と思う方も多いのでは?
色目は同じでも、柄は年によって異なります。今年は源氏物語に登場する“御所車”や“御簾”をあしらった華やかなデザインです。
帯は『栄雅菱華文(えいがひしかもん)』。平安時代の貴族が教養として身に付けた知識を『有職』といい、それに基づいて制作されたのが『有職織物』です。菱の文様を5色で表し、源氏物語に登場する雲を菱文に寄り添うように配置して、古の知恵と美が折り重なります。
チケットの購入方法
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(受付時間:【月~土】10:00~17:00【日・祝】休み)
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※3歳以上の方は観覧券をお買い求めください。
都をどり百五十回源氏物語舞扇
期間:2024年4月1日(月)~4月30日(火)
公演時間:1日3回公演(各公演 約60分)1回目 12:30 2回目 14:30 3回目 16:30
入場料(全席指定席):茶券付一等観覧券 7,000円 1等観覧券 6,000円 2等観覧券 4,000円 2等学生券 2,000円
会場:祇園甲部歌舞練場
住所:京都府京都市東山区祇園町南側570-2
【画像】きょうとくらす編集部
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