祇園白川沿いの風情ある場所にたたずむ料理旅館白梅。老舗の格式、きめ細やかなおもてなしで、国内外から高い評価を得ています。
その人気旅館の女将から見る祇園の景色を『きょうとくらす』で毎月1回、コラムでお届けします。

第13回目の前回は、「祇園での冬の過ごし方」ついてお話させていただきました。
ようやく暖かさが感じられる季節となりました。
卒業や入学、就職など、この春から新生活をスタートさせる方も多いのではないでしょうか。
四季折々の表情を見せる祇園でも、春は「始まり」の季節でもあります。
第14回の今回は、舞妓という夢に向かって修行に励む「仕込みさん」について少しお話していこうと思います。
“仕込みさん”の春“
桜の花がほころび始めた祇園白川。
知恩院さんの前の学校に通う学生さんが、振袖袴姿で卒業証書を抱え記念撮影をされる時期。そしてすぐに初々しい笑顔の新入生さんが通るようになります。
祇園も中学を卒業したての“舞妓の仕込みさん”が、屋形とよばれるお茶屋で新しい生活を始める季節でもあります。舞妓さんを目指すきっかけは色々。修学旅行で舞妓さんを見て、またテレビで特集を見て、など美しさ華やかさにあこがれる女の子も多いのですが、15歳で親元を離れて、他人の家で暮らし、なおかつ舞妓になるための修業をするのですから並大抵ではつとまりません。
近くのお茶屋さんの見習いさんの「豆奈弥さん」は笑顔の素敵な16歳。去年2月から仕込みさんとして神奈川から来られました。きっかけは「素敵な芸妓さんのSNSを見てあこがれて、こちらのお茶屋さんに電話させてもろたんどす」とのこと。以前は知人の紹介などが多かったのですが、最近はSNSからの応募が多いそうです。実際に仕込みさんを始める前に3泊~1週間ほど体験入部ならぬ“体験仕込みさん”をして、ミスマッチを防ぐこともされているそうです。

豆奈弥さんのご両親も初めは大反対でしたが、彼女の粘り強い願いに最後は納得されて送り出して下さったとの事。
祇園で舞妓になるには、中学卒業前後に置屋へ入り、「仕込み」として修業が始まります。舞や茶道、華道などの稽古を重ね、およそ1年半で一定の基準に達すると、京舞井上流の家元である井上八千代の許しを得て、髪を結い上げます。「しんどいことも多かったけど、やっぱりお白粉して、髪結うてみたかったんどす」と、髪を結って1週間目の豆奈弥さん。初々しい“割れしのぶ”の髪型がとてもお似合いです。
とはいえ日本髪を結うと枕は“高枕”という古来からの枕で寝なくてはならず、寝返りも打てませんので初日は眠れない人が多いそうです。ただ彼女は、初日から良く眠れたとのことで将来有望です。
コロナ禍の間、数年間、舞妓の仕込みさんが来られなかったこともあり、祇園甲部の舞妓さんは今11人にまで減少し、絶滅危惧種、と言われています。これからは10数人の仕込みさんが順々に見習い、店出ししていく予定です。
ここでご報告…。
2023年9月から2年半、ここきょうとくらすさんで女将の祇園つれづれ日記を書かせて頂きましたが、今回でとうとう卒業とあいなります。祇園の女将の四季のよもやま話、お付き合い頂きとても感謝致しております。ただ他にもっと文章にできないような?ディープな話、聞きたい!とおっしゃる方は是非、祇園白川 料理旅館白梅にお越しください、お待ちしております。
おおきに。またいつの日かお目にかかれますよう、よろしうおたのもうします。

奥田朋子(おくだ ともこ)/料理旅館白梅 女将
1965年京都生まれ。1989年全日本空輸株式会社にCAとして入社。
1997年より若女将として、2017年より女将として料理旅館白梅を経営し、2017年より祇園新橋景観づくり協議会会長として京都、祇園の街づくり活動にも積極的に参加している。
文/奥田朋子
【画像】料理旅館白梅
