2024年に開園100周年を迎えた京都府立植物園。
日本で最初の公立の植物園として誕生して以来、府民に親しまれ、歴史を重ねてきました。四季折々の草花の栽培はもちろん、希少な植物の保全にも力を入れています。
このコラムでは、植物の専門家である戸部園長に季節ごとの見どころやユニークな植物の生態を教えてもらいます。物言わぬ植物から学ぶことはたくさん!緑に癒され、潤いある暮らしのヒントも見つけてくださいね。

11月が見頃の植物たち

今月はパパイアの木を紹介します。パパイアは、その熟した果実が南の国では大きなものでも1個2~3百円で手に入り、優しい甘みのある植物です。植物園正門から北に向かって2つ目の花壇に5本植えられていて、季節が進むほど木も果実も大きくなり際立つ存在感を見せています。1本の木を見ていると、まるで熱帯の島にいるような錯覚をおぼえます。
原産地はメキシコ南部からベネズエラまで、中米の国々、島々で、そこでは家畜の餌や薬用、食料にも利用されていましたが、現在はほぼ世界中の低緯度の地域に導入され栽培されています。
パパイアは、1886年にPapaya papayaと学名が付けられたことがあります。しかし実は1753年に植物学者のリンネがCarica papayaと付けた種と同じであることが後に分かり、現在は後者の名前が使われています。Caricaは食用イチジクを意味するラテン語由来で、葉がイチジクのそれに似ていることから、Papayaは原産地のカリブ海のタイノ族が呼んでいた名前をラテン語化したものです。
パパイヤは、草ではなく木です。その理由は、木になる植物が持っている形成層という年輪をつくる組織があるからです。ただ、パパイヤでは年輪になる細胞の壁が薄く硬くなりません。そのため、木であっても草っぽいということになります。パパイアは、寒い冬には生きることが出来ないため、植物園では間もなく掘り起こしてしまいます。しかし自然界ではふつう3~4年、長ければ20年ぐらい茎は枯れずに生きるようです。大きな株では5~10メートルの高さにもなり、太さも50~70センチになります。太い茎は中空で、中に大きな穴が空いています。孟宗竹の茎に似ています。


パパイアの木には雌雄異株もあれば、雌雄同株といい、1本の木に雄花と雌花がつくこともあります。さらには両性花がつくことも知られています。植物園に植えられている株は、雌雄同株で雄花と雌花とがあり、長さは雄花が4センチ(写真2、3)、雌花は5センチぐらい(写真4、5)。


どちらも5数性で、小さく短い萼片が5枚、長く大きな花弁が5枚、雄しべは5本、雌しべは1個ですが柱頭(雌しべの先端)が5つに分かれ、1つひとつが複雑に枝分かれしています(写真6)。

花は白く夜開性です。暗くなって開花すると、スズメガが訪花すると考えられています。その際、雄花では花筒の下の方から蜜が出て、それが蛾を誘引するのですが、雌花からは蜜が出ません。その代わり、スズメガは大きく5つに裂けた雌しべの柱頭を雄しべと勘違いし、その下に蜜があるとだまされて雌花に訪花すると考えられています。

パパイヤ以外にも、11月になると植物園ではコスモスなどが咲いています。ぜひご来園をお待ちしています。
戸部 博 京都府立植物園 園長
1948年青森生まれ。東北大学理学部卒業。千葉大学理学部助手、京都大学理学研究科教授など39年間大学につとめる。その後、日本植物分類学会長、日本植物学会会長などをつとめ、2018年4月1日より京都府立植物園の園長に就任。自らの主導により植物や植物多様性保全、京都府立植物園に関する研究を専門家によって一般の方に分かりやすく伝えるサイエンスレクチャーを2023年より植物園にて開始。
文/戸部 博
【画像】京都府立植物園
