コラム

1月が見頃!京都府立植物園 PLANTS WONDER WORLD【きょうとくらすコラム】

2024年で開園100周年を迎えた京都府立植物園。
日本で最初の公立の植物園として誕生して以来、府民に親しまれ、歴史を重ねてきました。四季折々の草花の栽培はもちろん、希少な植物の保全にも力を入れています。

このコラムでは、植物の専門家である戸部園長に季節ごとの見どころやユニークな植物の生態を教えてもらいます。物言わぬ植物から学ぶことはたくさん!緑に癒され、潤いある暮らしのヒントも見つけてくださいね。

画像:京都府立植物園

1月が見頃の植物たち

みなさま、明けましておめでとうございます。今年は丙午(ひのえうま)年で、馬の字があてられています。そこで、馬にちなんだ植物を幾つかあげてみましょう。
ウマノスズクサ、ウマゴヤシ、ウマノアシガタ、ウマノミツバなど、いずれも見栄えのいい植物ではありません。しかも冬に花が見られる植物はこの中に1つもありません。

寒い季節に咲く植物はたくさんありますが、なかでもツバキやサザンカは冬が見ごろです。ツバキはヤブツバキとも言われ、学名はCamellia japonica L.で、この名前の命名者はカール・リンネです。リンネは、植物の学名を属名と種小名とからなる二名法を考案した人で、1753年に「植物の種」という本の中でその方法を伝えています。その本の中でツバキが新種として発表されています。ツバキは日本と中国が原産地です。リンネは日本に来たことがあるのか? いいえ、リンネが名前をつけるもとになったツバキの押し葉標本は、オランダ商館付きの医師として1690~1692年に長崎の出島に滞在したドイツ人エンゲルベルト・ケンペルが採集したものでした。彼はリンネ以前の人で、植物の学名への意識がありませんでした。

画像:京都府立植物園
(ツバキ)

一方、サザンカは「山茶花(さんさか)」学名がCamellia sasanqua Thunb.で、日本原産の固有種です。リンネの弟子の一人で「日本植物学の父」とも「日本のリンネ」とも言われるスウェーデン人のオランダ商館医師であったカール・ツュンベリー(ツンベルグ)が名前をつけています。ツュンベリーは、1775~1776年に僅か1年4ヶ月しか日本に滞在していませんが、出島から外出できない不自由の中でも大量の植物標本を集めました。帰国後の1874年にサザンカは上記の学名で知られることになります。

画像:京都府立植物園
(サザンカ)

 ツバキは赤い花でつぼ型、サザンカは白い花でお皿型です。赤い花のツバキは鳥(メジロ)が、白い花のサザンカはハナバチが訪花して送粉します。どちらの花でも、萼片が5枚、花弁が5枚、たくさんの雄しべ、1個の雌しべ(5心皮からなる)が見られます。たくさんの雄しべは、もともと5本の雄しべ1本ずつがそれぞれ20~30本に枝分かれしたもの。ツバキではそれらの雄しべが花弁の合着しているため、花後は花弁と雄しべが一緒にぼとりと落ちます。しかし、サザンカでは、雄しべと花弁が離れているため、花後は花弁のみがはらはらと1枚ずつ落ちます。

植物園内では、花が終わったあとの赤い実の植物がツバキの栽培品種は26000種類以上とも言われ、国内の栽培品種の多くは、ツバキとサザンカを原種にしています。

画像:京都府立植物園
(ツバキ園の花)

植物園内にはカキノキ、サンシュユ、ヤバネヒイラギモチ、センリョウなど赤い実の植物がまるでそれらを花のようにつけています。園内には63種の野鳥が知られているのですが、ごちそうがいっぱいです。

画像:京都府立植物園
(カキノキ)
画像:京都府立植物園
(サンシュユ)
画像:京都府立植物園
(ヤバネヒイラギモチ)
画像:京都府立植物園
(センリョウ)

戸部 博 京都府立植物園 園長

1948年青森生まれ。東北大学理学部卒業。千葉大学理学部助手、京都大学理学研究科教授など39年間大学につとめる。その後、日本植物分類学会長、日本植物学会会長などをつとめ、2018年4月1日より京都府立植物園の園長に就任。自らの主導により植物や植物多様性保全、京都府立植物園に関する研究を専門家によって一般の方に分かりやすく伝えるサイエンスレクチャーを2023年より植物園にて開始。

文/戸部 博

【画像】京都府立植物園