泥だんごワークショップの様子
キャリア

「泥だんご」がカギ!? 日本の伝統技術を広める左官職人とは

KBS京都で放送中の『谷口流々』。
谷口キヨコが、京都を中心に活躍する人々の仕事現場に足を運び、十人十色の人生哲学を紐解いていきます。
2023年10月28日(土)の放送では、左官職人の三谷涼さんに話を伺いました。

Profile:左官職人・三谷涼さん

三谷涼さんプロフィール
画像:KBS京都『谷口流々』

三谷涼さんは、京都府長岡京市で工房を構える『京都ぬりかべ屋 三谷左官店』の代表。

立体の土壁や様々な産地の土を用いた多色の土壁など、自然素材にこだわった型破りな作品を生み出しています。

1度目の塗りの工程
画像:KBS京都『谷口流々』

三谷さんに左官の工程を教えていただきました。左官職人の仕事の中には、竹を編むというものもあるのだそう。

左官の土
画像:KBS京都『谷口流々』

土の中には藁を繋ぎとして入れ、少しでも割れるのを防いでいます。3か月ほど寝かした後にやっと1度目の塗りの工程に入ります。

そして、4~5回に分けて塗って、仕上げていくのだそうです。

左官職人との出会い

小学生時代の三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

小学3年生の頃、あまり学校に行っていなかった三谷さん。そんなとき、実家の向かいで建設していた家の土壁を塗っている職人さん(=左官職人)を見かけ、その存在に興味を持ったと言います。

谷口さんと三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

学校に行くふりをして建設現場に行き、職人さんの仕事を見学していたそうです。職人さんの姿を見ているうちに、三谷さんは「僕もこういう人になりたい」と思い始めました。

高校時代の三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

親の願いを聞き高校に進学した三谷さんですが、職人の道に進みたいという気持ちが強くなり、15歳で高校を中退。その後、親戚が営む左官工房に就職をします。

谷口さんと三谷さん谷口さんと三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

その後、身内だからこそ甘えが出てしまうと感じた三谷さんは、18歳で京都で1番厳しいと言われる左官工房へ自ら転職をしました。

独立までの経緯

寺社仏閣の左官を担当する三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

転職した工房では、社寺仏閣や日本家屋などの現場を担当することになった三谷さん。

谷口さんと三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

「土を使った仕事を極めたい」という想いのもと約20年間仕事に励みましたが、次第に親方への反骨心が出てきたと言います。

「お前はお前の表現の仕方があるから、ここではなく外で自分の表現や個性を出せ」という親方の言葉に背中を押され、38歳に独立を決意しました。

谷口さんと三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

5年前の独立当時、土壁の需要は下がる一方で、周囲からもなぜ独立したのか首を傾げられたと三谷さんは言います。また、三谷さん自身も左官職人の仕事がこの先増えていくことはないだろうと考えているそうです。

そんな状況の中、三谷さん1人での挑戦が始まりました。

息子の夏休みの宿題

谷口さんと三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

独立後の三谷さんは、ご近所の住宅を訪問したりポスティングを行ったりと、自分の足であらゆる営業方法を試したと言います。

しかし、途中でこのやり方は一方通行だと気付き、“壁を売ること”は二の次で、もっと根本的な部分を考え直さなくては、と今後のやり方について三谷さんは思い悩みました。

三谷さんと息子
画像:KBS京都『谷口流々』

そんな三谷さんに気付きのきっかけを与えたのが、当時小学校3年生の息子さん。

夏休みの宿題で「何か簡単にできる工作はないか」と息子さんに聞かれた三谷さんは、綺麗な泥だんご作りを提案しました。

三谷さんの作る泥だんご
画像:KBS京都『谷口流々』

三谷さんによると、泥だんごは左官職人発祥なのだとか。職人の技術向上のために修行の1つとして泥だんご作りが行われていたそうです。

泥だんご作りのワークショップ
画像:KBS京都『谷口流々』

完成した泥だんごを学校に持って行くと、とても大きな反響があったと言います。

「これをもっと発信すれば、左官のこともっと知ってもらえるよ」という息子さんの言葉をきっかけに、三谷さんは“発信”に力を入れていくことを決意。泥だんご作りのワークショップを開催することなりました。

谷口さんと三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

ワークショップのおかげで左官という言葉が広く知られるようになり、そのほかにも泥だんごからお仕事に繋がるなど、多方面によい影響が出るようになったのだそう。

谷口さんと三谷さん
画像:KBS京都『谷口流々』

土壁や左官を泥だんご以外の方法でも広めて行きたいと考える三谷さん。

2023年10月には、ワークショップができるカフェ『シルト』を長岡京市にオープン。カフェで提供するための土を加工した料理の研究など、現在(※放送時点)は開店準備を行なっています。

「伝統を発信するだけではなく、伝統をどう見せてどう残していくのかを常に考えなくてはいけない」と話す三谷さんは、今までの型にとらわれず自分にしかできない個性によって発信を続けて行きたいと考えています。

三谷さんを表すことば

三谷さんを表すことば「土星人」
画像:KBS京都『谷口流々』

今回の“三谷さんを表すことば”は『土星人』。

土を愛する三谷さんをストレートに表現した言葉です。

泥だんごやワークショップなど人々の心を掴む手法で、土の持つ魅力や左官の仕事を今後も世の中に広めてほしいですね♡

関連記事:これまでの「谷口流々」はこちら!

文/中村ゆか

【画像・参考】谷口流々(毎週土曜日9:30~10:00) – KBS京都
※この記事は、2023年10月28日(土)放送時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。