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動物福祉向上で魅力もアップ!誕生120周年の「京都市動物園」

明治36年に開園した『京都市動物園』。今年、120周年を迎えています。
KBS京都で放送中の『きょうとDays』では『京都市動物園』の歴史、今、そして未来を特集しています。

特集の第2回となる今回は、2023年8月16日(水)に放送された“動物福祉向上で魅力もアップ”をご紹介します。

今、動物園が最も大事にしている“動物福祉”とは

氷のプレゼントをもらったサル
画像:KBS京都『きょうとDays』

連日の猛暑で、京都市動物園の人気者たちもさすがに少々バテ気味……。恒例の“氷“のプレゼントが今年も京都全魚類卸協同組合から贈られました。

京都市動物園が誕生したのは今から120年前の明治36年。当初はレジャー施設として珍しい動物を展示するだけ、また、動物に曲芸などをさせる見せ物小屋的な要素も強かったといいます。

動物福祉とは
画像:KBS京都『きょうとDays』

しかし今、園が最も大切にしているのは動物目線で考える“動物福祉”です。京都市動物園 生き物・学び・研究センターの山梨主席研究員は「動物福祉は動物の心と体の健康状態を指す言葉。それをどう保って向上させていくかが課題」と話します。

動物福祉の向上について話し合う職員たち
画像:KBS京都『きょうとDays』

世界動物園水族館協会が打ち出した『動物福祉戦略』をもとに広まった考え方で京都市動物園では2020年、独自の指針を策定。飼育員、獣医師や研究員らすべての職員が意見を出しあい、動物の行動観察を行いながら、より良い飼育環境に整えています。

2021年には取り組みが評価され、エンリッチメント大賞を受賞しました。

日光浴するケツメリクガメ
画像:KBS京都『きょうとDays』

ケツメリクガメは、普段は熱帯動物館で飼育されていますが、元々砂漠などに住むカメで暑さは得意とあって、夏は外での飼育に変更しています。

長井飼育員は「隠れたいときは隠れて、出たいときは出てこれるので、カメにとってはいいのかな?」と考察しながらケツメリクガメを観察します。

ナマケモノ
画像:KBS京都『きょうとDays』

ナマケモノも夏の間は熱帯動物館からお引越し。動物園の限られたスペースを有効活用するため、比較的檻の大きなクジャク舎に同居し、のんびり運動量を補い、日光浴しています。

動物福祉の考えから生まれた新しいプログラム

京都市動物園のおとぎの国の改善に向けて出された意見
画像:KBS京都『きょうとDays』

壁には、小動物が抱っこでき子連れなどに人気の『おとぎの国』の改善に向けて出された意見の数々が張られています。人気の反面、園内では動物のストレスが大きいのではないかと議論が続いてきました。

大きく変わるきっかけとなったのが新型コロナウイルス。2020年2月からふれあいを休止したところ、獣医師がその間にテンジクネズミの診療件数が減っているのに気づき、ふれあいが影響を与えてしまっていたかもしれないことが分かりました。

テンジクネズミの行動について学ぶプログラムの注意事項
画像:KBS京都『きょうとDays』

動物福祉の観点を重視し、コロナ禍を経て、この春から新しい体験プログラムがスタートしました。まず飼育員から、「テンジクネズミには触らないであげてください」などプログラムの“おやくそく”が説明されます。

テンジクネズミの遊び部屋を作る参加者
画像:KBS京都『きょうとDays』

その後、参加者はトンネルなどを自由に配置し、テンジクネズミの遊び部屋を作ります。そして、テンジクネズミがどこの場所に長くいたかなど、行動観察での気づきを元に、飼育員がテンジクネズミの特性を紹介。

“ふれあい”をやめ“行動観察”することで子どもたちが動物の生態を学び、動物園を楽しむヒントを与える場になっています。動物に負担なく、人も満足できるようにと考えられたプログラムです。

“飼わない”という選択も動物福祉

アカゲザル
画像:KBS京都『きょうとDays』

“動物に触らない”だけではありません。“動物を飼わない“選択も動物福祉の一環です。たとえば、100年以上前から飼育し人気者だったライオン。十分なスペースが確保できないことから、2020年にオスが老衰で死亡して以降、飼育はやめました。

2021年に43歳で大往生し、世界最高齢でギネス記録にもなったアカゲザルのイソコ。そのアカゲザルも繁殖をストップし、今いる12頭が亡くなれば、将来的にはゼロにする方針です。

京都市動物園のサル島
画像:KBS京都『きょうとDays』

アカゲザルが長年暮らしてきたサル島。動物園のシンボル的な存在でしたが、85年あまりの歴史に昨年幕を閉じました。一番多い時で60頭程度がいて、複数の家族で幅広い層がバランスよくいた頃は、サル島は人間社会の縮図のようでもあり、見ていて飽きない施設でした。

サルの飼育環境について語る坂東飼育員
画像:KBS京都『きょうとDays』

しかし、昨今の温暖化でサル島の気温は、取材時で44度を記録。板東飼育員は「私たちも掃除に入るだけで夏場は汗だくで冬場は凍えていたが、サルたちはずっとここにいるのですごく大変だろう。動きも遅いし、たくさん段差あるので登りにくそうな様子が見られていました。」と話します。

コンクリートの掘り込みで夏も冬も厳しいうえに、サルたちの高齢化でますます暮らしにくくなっているのを実感していました。

アカゲザルが飼育されている冷暖房完備の施設
画像:KBS京都『きょうとDays』

高齢になってきた個体の福祉を考えて、冷暖房完備の樹木もある部屋に移る方が良いのではということでサル島から移動しました。

動物福祉の向上が生み出す効果
画像:KBS京都『きょうとDays』

動物の飼育環境を豊かにする動物福祉の向上は動物のストレスを軽減し、生き生きとした野生本来の行動を引き出して、より魅力ある動物園につながるもの。これまでしていたことをやめるのは、決して後ろ向きではありません。

動物福祉に重点が置かれ、動物たちの暮らしが少しでも豊かなものになっていくのは、来園する私たちもにとっても嬉しいことですよね。開園120周年の京都市動物園、ぜひ足を運んでみてくださいね。

次回の“動物園120周年シリーズ”は、2023年10月18日(水)KBS京都『きょうとDays』にて放送されます。お楽しみに!

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文/きょうとくらす編集部

【画像・参考】きょうとDays(毎週月~金曜日17:35~18:00) – KBS京都
※この記事は、2023年6月21日(水)放送時点の情報です。詳しくは店舗へお問い合わせください。