KBS京都で放送中の『京都浪漫~悠久の物語~』。
今回は、2023年9月3日(日)に放送された『百万遍から神楽岡へ~庶民に寄り添う知恩寺と女性を救う真如堂~』からカフェ『茂庵』をご紹介します。
山中にひっそりと佇むカフェ「茂庵」
吉田山は『神楽岡』とも呼ばれ、東山三十六峰の中の一つ。山頂の標高は120mほどです。
そんな吉田山の山上、木立の間にひっそりと佇むように建つのはカフェ『茂庵』。2022年夏に惜しまれながら一旦は閉店したものの、翌年1月に営業を再開しました。
『茂庵』へは、市バス『浄土寺』下車後、歩いておよそ15分ほど。
北参道コース、吉田神社コース、真如堂コース、そしておすすめの神楽岡コースの4方向からアクセスできます。
大正時代の数寄者による“森の茶苑”
実業家・数寄者である谷川茂次郎によって吉田山の山上に建てられた茶苑に由来するカフェ『茂庵』。店名も茂次郎の雅号からとられています。
カフェに訪れた際、ぜひ見ていただきたいのが建物の特徴的な懸造。実は、大正後期の茶の湯の場を色濃く伝える建物として評価され、国の登録有形文化財に選定されています。
谷川茂次郎は事業に成功したのち裏千家に入門し、本格的に茶道に親しみました。そして裏千家を強力に後援し、その発展に貢献したといわれています。
数奇者として造詣を深めていった茂次郎は、吉田山の東側一帯を購入し広大な”森の茶苑”を築きあげ、多くの人と交流を深めました。
カフェに生まれ変わった茶苑
現在カフェとして活用されているのは旧点心席で、元々は食事をとるための建物でした。
旧点心席は木造2階建で、現存する茶苑の建物の中では最も大きいものです。また、大正時代の数寄空間に気軽に触れることができる貴重な建物でもあります。
店内のカウンター席からは京都盆地の絶景が一望できます。創建当時は高い樹木もなく、五山の送り火も見えたのだそうですよ。
元々茶苑だった『茂庵』に残る茶室は、今でもお茶会やお稽古に使われています。『静閑亭』は8畳の間からなる茶室。
染付のタイルを張った地下室が備えられた珍しい茶室で、当時はワインセラーとして用いられたのだそうです。
『田舎席』は6畳と4畳半間からなる茶室。現在残っている茶室は『静閑亭』と『田舎席』の2棟ですが、最盛期には8つの茶室があり、更には月見台、楼閣なども山頂付近に建っていました。
大正時代の文化の香りを残すカフェ『茂庵』。ここでは時間がゆったりと流れ、人々の行き交う街中にありながら遠くの山中に来たように感じられますよ。
※カフェ『茂庵』は予約優先制です。詳しくはホームページをご覧ください。
文/さとみ縁
【画像・参考】京都浪漫~悠久の物語~(第1・2週 日曜日 21:00~21:55/再放送 第3・4週 日曜日 21:00~21:55) – KBS京都
※この記事は、2023年9月3日(日)放送時点の情報です。