ことし開園100周年を迎えた京都府立植物園。
日本で最初の公立植物園として誕生して以来、府民に親しまれ、歴史を重ねてきました。四季折々の草花の栽培はもちろん、希少な植物の保全にも力を入れています。
このコラムでは、植物の専門家である戸部園長に季節ごとの見どころやユニークな植物の生態を教えてもらいます。物言わぬ植物から学ぶことはたくさん!緑に癒され、潤いある暮らしのヒントも見つけてくださいね。
コラム末尾に、植物園から読者プレゼントのお知らせがあります!最後までご覧くださいね♡秋と言えば‟コスモス”
秋と言えば‟コスモス”!植物園内の数ヶ所に、鉢植えと地植えで展示しています。コスモスは、特定の野生種を指すのではなく、キク科に属するコスモス属(学名Cosmos)約100種全体の総称です。しかも、無数の交配種や栽培品種がつくられています。学名に使われる属名Cosmosは、ギリシャ語由来で、小さな花が整然と並ぶ「秩序ある世界」、または「宝石」を意味しています。
コスモスのつくり
植物園で世話をしている担当者の話によれば、うちのコスモスは展示場所の広さもないし、数も多くはないが、種類の豊富さで勝負してるとか。その中に面白いコスモスをみつけました!
もともとコスモスが含まれるキク科は、花の集まり方に特徴があります。一見すると一つの花に見えるのですが、実は小さな花が、学名の由来のように整然と、たくさん集まって花の塊りをつくっています。このように花が集合したものを『花序(かじょ)』といい、花の集まり方に応じてさまざまな花序の名前があります。キク科の場合は頭状花序(あるいは頭花)といいます。比較的小さな花序はタンポポ、大きな花序はヒマワリなどに見られます。数えたことはありませんが、何十~何千個の花が集まり、外側から内側に向かって順に咲きます。
花には2つの型がある
花に2つの型、舌状花(ぜつじょうか)と筒状花(とうじょうか)と呼ばれる2種類あります。どちらの型も花の基本形は同じで、萼片5(がくへん)枚、花弁5枚、雄しべ5本、雌しべ1本から成っています。
5枚の花弁は横に合着して細長い筒をつくっています。舌状花では、5枚の花弁うち3枚がまるで舌のように外側に大きく発達しています。3枚だけが発達した証拠は、舌の先端に3つの山があります(写真1)。
ふつう野生のコスモス(ヒマワリも)は花序の外側に1舌状花が一列に並び、それより内側に無数の筒状花が並びます。ただし、筒状花では5枚の花弁は小さいので目立ちません。見つけた面白いコスモスでは、舌状花の5枚の花弁全てが発達して大きな筒をつくっています(写真2)。
要するに、普段は見ない変わりコスモスですが、舌状花が本来の形を取り戻しただけです。ダブルクリックローズボンボンとか名前がついていて、なんとなく分かります。このダブルクリックの中に、外側1輪加えてさらに内側の1輪が舌状花になったものまで見つかります(写真3)。
昨年のこと、夕方、若い女性の一群がコスモスにやってきて、そのうち一人が変わりコスモスを見つけて「何これ~!」と歓声を挙げていました。
京都府立植物園の個性豊かなコスモスに会いに来てくださいね。
読者プレゼント『LIGHT CYCLES KYOTO』ペアチケット1名様
京都府立植物園100周年を記念したナイトイベント『LIGHT CYCLES KYOTO』が2024年12月26日まで開催しています。夜の植物園を光や音、セットデザインなどで昼間の植物園とは全く異なる幻想的な世界が広がります。
演出を手掛けるのはマルチメディア・スタジオ『MOMENT FACTORY(モーメントファクトリー)』。これまでディズニー、ユニバーサルスタジオ、マイクロソフト、ソニー、著名なアーティストや世界の公共施設でコラボレーションを行っています。
『きょうとくらす』の読者の方に抽選で1名様にペアチケットをプレゼントします。
【応募方法】
きょうとくらすの公式Instagramに“キーワード”を明記の上‟ダイレクトメッセージ”をお送りください。
当選者には、きょうとくらす編集部から当選通知のメッセージをお送りします。 当選者の発表は、商品の発送をもって代えさせていただきます。
締め切り:2024年11月13日(水)23時59分
キーワード:植物園100周年
【開催情報】
LIGHT CYCLES KYOTO
開催期間:2024年12月26日(水)まで
開演時間:18:00~21:30(最終入場20:30)
入場料(当日券):大人2,500円、こども1,200円
休演日:月曜日 ※11月4日は開演
戸部 博 京都府立植物園 園長
1948年青森生まれ。東北大学理学部卒業。千葉大学理学部助手、京都大学理学研究科教授など39年間大学につとめる。その後、日本植物分類学会長、日本植物学会会長などをつとめ、2018年4月1日より京都府立植物園の園長に就任。自らの主導により植物や植物多様性保全、京都府立植物園に関する研究を専門家によって一般の方に分かりやすく伝えるサイエンスレクチャーを2023年より植物園にて開始。
文/戸部 博
【画像】京都府立植物園