ことし開園100周年を迎えた京都府立植物園。
日本で最初の公立植物園として誕生して以来、府民に親しまれ、歴史を重ねてきました。四季折々の草花の栽培はもちろん、希少な植物の保全にも力を入れています。
このコラムでは、植物の専門家である戸部園長に季節ごとの見どころやユニークな植物の生態を教えてもらいます。物言わぬ植物から学ぶことはたくさん!緑に癒され、潤いある暮らしのヒントも見つけてくださいね。
戸部園長からのご挨拶
京都府立植物園で2018年から園長を務めている戸部博です。
生まれは、青森県、幼い頃都合で転校を繰り返していたため記憶にあるのはほとんどが秋田県、現在の北秋田市の田舎育ちでした。そこでは毎日近所の子どもたちと一緒にチャンバラ、野球、川魚釣り、冬になると近所の山スキーに明け暮れて、そこには勉強も植物も身近なものではありませんでした。
(写真の大きな蕾は、『ショクダイオオコンニャク』2021年7月、2024年8月開花)
これまでにもたびたび「どうして研究者になったのか?」、「子どものころから植物をどれほど好きで親しんでいたのか?」などと聞かれることがありました。
人生は不思議なものです。出会いと運が重なって…としか言いようがありません。
大学に39年おり、日本植物分類学会会長や日本植物学会会長などを務め、今は植物園園長となりました。
植物とわたし
普段は研究者として植物と向き合っていますが、日常の植物はといえば、宇治市の自宅の庭に小さな芝生が私の憩いの場所です。
サザンカ、クレマチス、ニワゼキショウ、センリョウ、マンリョウ、サンショウ、シランなどいろいろな植物を植えています。他には、メダカを飼った水槽や2.3坪ほどの畑がありトマト、キュウリ、ミョウガなどを作って楽しんでいます。
植物園開園100周年 特別企画は恐竜展!?
2024年京都府立植物園は1924年の開園以来、戦争や自然災害を乗り越え100周年を迎えました。
そして、子どもたちの夏休みに合わせて特別企画『恐竜時代の植物展』を開催することになりました。
「植物園でなぜ恐竜を?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
進化の歴史を辿れば、植物は今からおよそ5億年前に上陸し大きな進化を遂げてきました。葉を作り、種子を作り、花を作りました。恐竜が生きてきた時代と植物の進化に重ねるといろいろなものが見えてきます。
また、およそ1000種知られる恐竜の3分の2が草食でした。恐竜の繁栄と絶滅は、人類先祖の歴史とも無関係ではありません。それが植物園に恐竜を呼んだ理由です。
京都には世界遺産の社寺をはじめ多くの人気スポットがありますが、京都の魅力の一つとして、当植物園を学び、そして考える場にしていただけると嬉しいです。
植物園開園100周年記念 恐竜時代の植物展 開催~2024年8月25日まで
植物や恐竜の化石、復元骨格など、古代の気候変動が植物やそれを餌にする恐竜の生存に影響を与えた様子を中心に展示。スタンプラリー、ワークショップ、関連講演会も実施。詳しくは、100周年記念特設サイトをご覧ください。
開催期間:2024年8月25日(日)
開園時間:9:00~17:00 (16:00)
場 所:植物園会館1階展示室
内 容:恐竜や植物の化石から、両者の関係性を紐解き、植物の進化を体感、デルタドロメウスやトリケラトプスの化石標本を展示、アレトプテリス、リンボク等の植物化石等約五十点を展示
戸部 博 京都府立植物園 園長
1948年青森生まれ。東北大学理学部卒業。千葉大学理学部助手、京都大学理学研究科教授など39年間大学につとめる。その後、日本植物分類学会長、日本植物学会会長などをつとめ、2018年4月1日より京都府立植物園の園長に就任。自らの主導により植物や植物多様性保全、京都府立植物園に関する研究を専門家によって一般の方に分かりやすく伝えるサイエンスレクチャーを2023年より植物園にて開始。
文/戸部 博
【画像】京都府立植物園