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実は多すぎて大変って知ってた? 「シカやイノシシとの共生」について考える

美しい山々や川、北には海と多くの自然資源に恵まれた都市、京都。自然と歴史・文化が融合し、長きにわたって日本の中心地として栄えてきました。

連載『きょうとの自然とくらす』では、自然と調和し日々を歩む京都、京都の自然と共に生きていく知恵や工夫について発信していきます。

癒やしや喜びを与えてくれる自然は、時として被害を与える要因となることも。今回の『きょうとの自然とくらす』では、ニホンジカとイノシシとの共生について考えます。

年間億単位の被害を生み出すニホンジカとイノシシ

鹿のイメージ
画像:柴道楽/PIXTA(ピクスタ)

京都府内には令和2年度の発表によると、96,000頭のニホンジカ、51,000頭のイノシシが生息しています。登山中などに出会えると嬉しくなって、思わず遠くから様子を見ていたくなりそうですが、実はこれらの野生動物は農業や林業に多大な被害を生み出しています。

京都府内の農作物被害額でいうと、ニホンジカによるものが約7,300万円、イノシシによるものが約1億2,000万円にも及びます(令和2年度の被害額)。

イノシシの親子
画像:akira/PIXTA(ピクスタ)

そもそも、ニホンジカやイノシシというのは野放しにしておくと、猛烈な勢いで生息数を増やし生態系を破壊してしまう生き物。国に生息数の管理が必要な野生動物として『第二種特定鳥獣』に指定されています。

京都府は、積極的な捕獲により早期に生息頭数を減少させることで、地域個体数を適正に維持するよう取り組んでいます。

また、獣害に強い地域づくりを推進し防除等の取組効果を高め、農林業被害や森林生態系被害を減少させることで共存を図っています。

しかし、「捕獲と防除を進めていても、なかなか計画通り被害の減少には至っていない」と府の職員は話します。

農作物被害を防止する具体的な取り組み

農作物への被害を防止するには“生息地の管理”、“農地・集落の管理”、“個体数の管理”の3つをバランスよく行うことが重要だそうです。そのため、行政だけではなく、農地・集落の人々をはじめ、ひとりひとりが協力して取り組むことが重要となります。

ここでは、その具体的な取り組みについていくつかご紹介します。

(1)生息地の管理

間伐された木が放置される杉山
画像:撮るねっと/PIXTA(ピクスタ)

“生息地の管理”とは森林の適切な管理や里周辺に緩衝帯を整備するなど、“里に寄せ付けない対策”を示します。例えば、放置している耕作地や森林は絶好の繁殖場所となってしまうのだそうです。

(2)農地・集落の管理

ゴミや空き缶は持ち帰りましょうの看板
画像:Chula Vista/PIXTA(ピクスタ)

不要残渣(ひこばえ、野菜の外葉など)や生ゴミ、墓地のお供え物などは“餌付け”に繋がる恐れがあります。外に放置せず適切な処理が必要です。

防除柵
画像:tamu1500/PIXTA(ピクスタ)

また、地形や獣に応じた防除柵の設置など、餌付けや生息地を広げるような動機づけをしないことが重要です。

(3)個体数の管理

捕獲された野生のイノシシ
画像:ysnature/PIXTA(ピクスタ)

“個体数の管理”とは、増えすぎた個体の捕殺や、被害を与える個体の捕獲などを示します。こちらはなかなか一般の個人で対応するのは難しい内容となるため、京都府・市町村・地域で進めていく必要があります。

共生に向けてできること

ごみを持つ男性
画像:comugi/PIXTA(ピクスタ)

ニホンジカやイノシシとの共生を考えた時、日頃はこれらの動物の生息域に住まない人にもできることはあるかもしれません。

例えば、山や里などに訪れた際の行動を見直してみましょう。ゴミは必ず持ち帰る・外に放置しない、決して餌付けを行わない、防護柵や捕獲機には近づかない。また、シカやイノシシと遭遇しても決して騒がずむやみに追いかけたりしない。

どれも当たり前のことのようですが、なぜそうしなければいけないのか正しく知識を持つことが大切です。また、生息地周辺に住む方々の努力や、行政の取り組み、そして現状を知り、ひとりひとりが意識を向けることが共生にきっと繋がっていきます。

文/きょうとくらす編集部

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【画像・参考】 京都府 農林水産部農村振興課
PIXTA(ピクスタ):maricat/柴道楽/akira/撮るねっと/Chula Vista/tamu1500/ysnature/comugi
※写真はイメージであり京都府内で撮影したものとは限りません。
※この記事は2023年10月に制作しています。最新の情報は各自治体HPなどもあわせてご確認ください。