暮らす

京都あるある“女将の祇園つれづれ日記”【きょうとくらすコラム】

祇園白川沿いの風情ある場所にたたずむ料理旅館白梅。老舗の格式、きめ細やかなおもてなしで、国内外から高い評価を得ています。

その人気旅館の女将から見る祇園の景色を『きょうとくらす』で毎月1回、コラムでお届けします。

料理旅館白梅_女将
画像:料理旅館白梅

第9回の今回は、京都にいるとこんな都市伝説で出くわす⁉『京都あるある』についてをお話しします。

‟あるある”ではなく‟いるいる”

画像:料理旅館白梅

祇園新橋のつつじも満開となり、紫陽花の花芽も日に日に大きく、はや初夏のような皐月となりました。毎年5月20日頃を過ぎると白川にもホタルが飛び始めます。

「こんな街中に?放しているんでしょ?」と聞かれますが正真正銘天然もの。ゲンジボタルで、通常ホタルは日没から夜の8時、9時くらいによく光るのですが、うちのホタルたちは、午後10時頃からようやく光りはじめ、真夜中から午前1時くらいが1番元気という、「さすが花街、祇園ホタルや」と言われています。

ホタルもですが、自然は人の思うようにはいかないもので、今年の春は桜の開花が遅くなり、祇園白川宵桜ライトアップも4月7日まで急遽期間延長し、開花から花吹雪まで、会期中約30万人の方々に祇園白川の夜桜をお楽しみいただけたようです。

画像:料理旅館白梅

花が散ると、花びらや花の軸が地面に落ち、雨が降ると余計に地面に張り付き取れなくなってしまうので祇園新橋地区の住人や店舗の方、人力車の車夫さんなど50人ほどが朝から参加してのボランティア清掃も行い30リットルの袋、15~6袋程を集めました。小さな薄い花びらも集まるとすごい量ですね。

画像:料理旅館白梅

この清掃は桜の咲く前にも行われており、多くの方に美しい祇園新橋を楽しんで頂けるよう白川のごみ拾いも定期的に実施しています。缶や瓶、いろんなものを拾いますが、酔っぱらって落とされたのか、携帯電話、空っぽの財布、(時々お金入りも)なぜか片っぽだけのハイヒール?・・などなど。
美しい祇園新橋地区のたたずまいはたくさんの方々の努力によって支えられています。

‟門掃き”あるある

さて京都は『門掃き(かどはき)』という玄関掃除と打ち水をする風習がありますが、この時に隣家のどのあたりまでするか、というのが結構微妙なところでして…
隣家との境界線できっちりでやめると、「あんたのとこは自分でしてや」みたいなちょっとけち臭い印象ですし、隣家の前に入りすぎても今度は、「あんたのとこあんまり門掃きしやはらへんし(されないので)、うちんとこでやってあげてますの」みたいな嫌味にも取られかねない。結果、隣家へ侵入50センチくらいが妥当か?と毎回悩みつつ門掃きしています。

‟ぶぶ漬け”あるある

画像:ぱくたそ

有名な「京のぶぶ漬け」=そろそろお帰りやしたらどうどすか?という言葉がありますが、私自身は言われたことはありません。ただ同義語の「いや、ええ時計したはりますなぁ」は何回か聞いたことがあります。
こういわれたら自分の時計に目をやりますよね・・。
ここで、「そうなんです、この時計ね…」なんて真に受けて自慢しだしたら「ホンマにわからへん(気の利かない)お人や」という‟無粋レッテル”を張られてしまうこともあるのでご注意を!(笑)

‟先の戦”あるある

画像:ぱくたそ

「京都の人にとって先の戦は応仁の乱のこと」というのも有名な話しですが、知ってはいても聞いたことのなかったこの言葉、とうとう先日念願のナマ‟応仁の乱”を聞いてしまいました。

その日は室町の帯問屋さんの会長さん方のお食事会だったのですが、あるお店の会長さんが隣の方に「どうや最近?」などお話されておられました。
会長A「コロナでお茶会もパ-ティーも長い間なかったさかい、まだ全然あかんわ。」
会長B「いやそんなこと言うても、お前んとこはウチよりついてるんやで。あん(あの)時お前さんとこは、あっち方(東陣?西陣?)やったさかいな」
「もしやこれは!」と聞き耳を立てていると、やはり応仁の乱の話!

その席では、他の会長さんが「コロナ中に蔵の掃除をした」とおっしゃっておられ、周りの方から「何か見つかったか」との質問に…
会長C「大したもんはなかったけど、近藤勇の借用証書出てきたわ。750両、だれかに返してもらわれへんかやろか。」
会長D「誰に返してもらうねん」
会長C「そしたら骨董品屋に売れるかな」
会長D「あほ。近藤勇の借用証書、京都に何枚あると思ってるねん。思ってるような価値ないで。」
会長C「そしたらメルカリでやったら売れるかな」
江戸時代は本当についこのあいだ、の感覚の洛中の京都人の会話。ちょっとびっくり、そしてなんだか笑ってしまいました。

‟いけず”あるある

画像:きょうとくらす編集部

今年知った言葉が「御室の桜」という比喩表現。
‟あでやかな、美しいイメージ”言われたら喜んでしまいそうですが、ここで喜んではいけません!(笑)

御室桜=仁和寺の桜は、土地が岩盤質で土の部分が薄く、地中に深く根を伸ばせないため樹高が低いのが特徴です。つまり花も低く咲く桜。つまり花=鼻が低い‟鼻ぺちゃ”という意味だそう。
なんとも雅な京都‟いけず”ですね。

奥田朋子(おくだ ともこ)/料理旅館白梅 女将

1965年京都生まれ。1989年全日本空輸株式会社にCAとして入社。
1997年より若女将として、2017年より女将として料理旅館白梅を経営し、2017年より祇園新橋景観づくり協議会会長として京都、祇園の街づくり活動にも積極的に参加している。

文/奥田朋子

【画像】料理旅館白梅/ぱくたそ
※画像はイメージです。