コスモスの庭手水
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神社仏閣で見られる花のアート“花手水”発祥の寺「楊谷寺」【長岡京市】

KBS京都で放送中の『京都浪漫~悠久の物語~』。
2023年10月1日(日)に放送された『京都 花ごよみ~妙蓮寺・楊谷寺・勝林寺・八大神社~』から、“楊谷寺”についてご紹介します。

“花手水”発祥のお寺「楊谷寺」

楊谷寺の花手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

花にまつわる様々な文化を育んできた千年の都・京都から、コロナ禍を機に新たな“花の文化”が発信され、全国に広まっているのをご存知でしょうか。

それが神社仏閣を訪れた参拝者に癒しを与える花のアート“花手水(はなちょうず)”です。

水滴のついた青もみじ
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

花手水とは古くからある言葉で、もともとは花や草木の露を使って手や身を清める作法をそう呼びました。

楊谷寺
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

京都府長岡京市にある皇室ゆかりのお寺『柳谷観音楊谷寺(やなぎだにかんのんようこくじ)』で、手水舎に季節の花を浮かべ、花手水と呼ぶようになったのは2017年頃のこと。

楊谷寺の花手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

楊谷寺住職夫人が自分の楽しみとして始めた花手水をSNSで発信したところ、新型コロナウイルス蔓延の時期に入り、一気に全国に広がったのだそうです。

楊谷寺へのアクセス
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

柳谷観音楊谷寺までは、阪急『西山天王山』駅からタクシーでおよそ10分、阪急『長岡天神』駅、もしくはJR『長岡京』駅からはタクシーでおよそ15分。

千手観音の縁日にあたる毎月17日のみ、阪急『西山天王山』駅とJR『長岡京』駅から送迎シャトルバスが運行されています。

楊谷寺で観られる5つの花手水

楊谷寺入り口
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

現在、楊谷寺の花手水は全部で5つ。多くの堂宇が建ち並ぶ広い境内に点在しています。では、花手水を求めて諸堂を巡ってみましょう!

西山三山の一つに数えられる楊谷寺は、浄土谷と呼ばれる山あいの一角に位置する西山浄土宗のお寺。江戸時代には“西の清水”と呼ばれ、清水寺と並び称された観音霊場で、大正時代にはケーブルカーを敷設する計画まであったといいます。

龍手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

元は勅使門として建てられた山門をくぐり境内に足を踏み入れると、まず目に入るのが最初の花手水。龍神が護る姿から『龍手水』と呼ばれます。

龍手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

季節によって変わるというこちらの花手水。撮影時は、花とともにキレイな石やビー玉が入った『花玉手水』を観ることができました。

楊谷寺・本堂
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

『龍手水』の奥に位置するのが、江戸時代前期に建立された本堂。

庭手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

本堂西の回廊の脇にあるのが、『庭手水(にわちょうず)』と呼ばれる花手水。

この手水鉢に季節の草花を浮かべてSNSに投稿したのが始まりなのだとか。

コスモスの庭手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

日本のイベントや季節に合わせ、1年中お花が入っている状態を続けているそうです。

浄土苑
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

『庭手水』の廊下の先にあるのが書院。書院の北側、本堂との間に作られた庭が『浄土苑』です。

江戸時代中期に作庭された『浄土苑』は、山の斜面を巧みに利用した造りで、ところどころに置かれた大きな石は仏様に見立てられています。

浄土苑
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

昭和を代表する作庭家・重森三玲(しげもりみれい)氏の『古都百庭(ことひゃくてい)』にも選ばれた名園で、上下様々な位置からの眺めを楽しむことができます。

恋手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

浄土苑を見下ろす回廊の足元にも花手水があります。こちらは『恋手水』と呼ばれています。

楊谷寺・上書院
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

書院から『浄土苑』を越えて続く回廊は、境内で最も高い位置にある奥之院へと繋がっています。その途中にあるのが上書院です。

琴手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

上書院の北側にあるのが、『琴手水(ことちょうず)』と呼ばれる花手水。

水琴窟の音を聴く人々
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

こちらは地下が空洞の水琴窟になっていて、花手水の足元に水を流して耳を澄ますとなんとも心地よい音色が響いてきます。

苔手水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

境内の東、阿弥陀堂の横に設えられているのが『苔手水』。こちらはしっとりと落ち着いた風情です。

眼病平癒の霊水「独鈷水」

独鈷水
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

花手水になくてはならないのが、清らかな水です。実は楊谷寺は“水の寺”としても有名。以前は境内のあちらこちらから清らかな水が湧き出していました。

そのうちのひとつ、今も湧き出ているのが、本堂の西にある『独鈷水(おこうずい)』と呼ばれる霊水です。『独鈷水』は眼病をはじめとする万病に効く霊水とされ、この水を求めて全国から多くの参拝者が訪れたことで楊谷寺は今日まで発展してきました。

弘法大師像
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

書院の奥に延びる通路を進んだ先、西の山すそに立つのは、日本に真言密教を伝え、平安仏教の礎を築いた弘法大師空海の像。

楊谷寺に参拝していた弘法大師は、眼を病んだ小猿のため湧き水に祈祷を行い、眼病平癒の霊水『独鈷水』を成就したと伝わります。

独鈷水堂
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

この弘法大師像の奥で、 平安時代から湧き続けているのが『独鈷水』。

江戸時代には霊元天皇がこの霊水で眼病を治癒されたとして、明治時代に至るまで天皇家に献上されていました。今も眼の病に悩む多くの人々から篤い信仰を集めています。

独鈷水堂
画像:KBS京都『京都浪漫 悠久の物語』

霊水は本堂の観音様にお供えしてから持ち帰るのが慣わし。観音様にお祈りしながらこの水で目を洗うと眼病が治ると言われてきました。

平安時代より眼の病にご利益があるとされてきた楊谷寺。眼にも優しい花手水がここから広まったのも納得ですね。

関連記事:これまでの「京都浪漫 悠久の物語」はこちら!

文/中村ゆか

【画像・参考】京都浪漫~悠久の物語~(第1・2週 日曜日 21:00~21:55/再放送 第3・4週 日曜日 21:00~21:55) – KBS京都
※この記事は2023年10月1日(日)放送時点の情報です。