KBS京都で放送中の『きょうとDays』。
今回は、2023年5月25日(木)に放送された『ふるさと Days』コーナーから、大学の研究林で1本の巨木を描き続ける女性をご紹介します。
芦生の森にある1本の「大カツラ」
南丹市にある京都大学の研究施設である芦生研究林・“芦生の森”。広さはおよそ4,200ヘクタールで、そのほぼ半分は100年以上ほとんど人の手が加わっていない天然林です。
京都芸術大学講師の豊島淑子先生は、足繁く1本の樹“大カツラ”に会いに行きます。「下谷の大カツラ」と呼ばれるこの樹は研究林のシンボル的な存在です。
40m近い巨木に蔓がからみ、苔が生す姿はまるで一つの生態系を見るようです。豊島先生は7年前にこの大カツラに惹かれました。季節や時間によってお気に入りのポイントがあるんだそうです。
豊島先生がカメラを持ち出し、写真に収めているのは“葉っぱ”。巨木の幹やその存在感を描く人が多い中で、豊島先生はこの時期一番美しい新緑の葉っぱを描きたいのだそうです。
研究林の事務所で作品作りの様子を拝見しました。望遠で撮るとピントがあった葉とあたらない葉が出てくるため、何枚も写真を撮り分けます。昨年は1日に1,000枚ほど撮影しました。
そして、全ての葉っぱの輪郭が見えるよう、撮影した場所ごとにピントの合った葉っぱの写真を重ね合わせていきます。
「葉っぱ1枚1枚を全て描き起こし、描くことで見えてきた線や大量に描いたことで見えていない部分が、どうなってるかというのが分かりだした。その点も含めて、精度を上げて描いていきたい」と豊島先生は話します。
こちらは豊島先生が数年前に描いたトチノキです。葉っぱが丁寧に描かれ瑞々しさを放ちます。
冬をむかえる大カツラは、葉っぱをどう描けばいいのかわからず途方に暮れていた時の作品だそうです。細かく分かれていく枝が緻密な線で描かれています。
そして2年前に制作した大カツラは、シルクの生地にプリントされた作品から、キラキラと輝く新緑のイメージが溢れ出るようです。
芦生の森の大カツラと出会って7年経ち、豊島先生はこの樹のことがやっとわかってきたそうです。
「見てるものは樹ですが、川の流れのせせらぎや鳥の声というのはずっと五感で感じ取っています。私が描いていくものを見た人にも、それを感じられるようなものになってほしいなと思います」と豊島先生は話します。
樹の生命力を感じられる絵でつい見入ってしまいますね。豊島先生が描く美しい大カツラをこれからも見続けたいですね。
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文/きょうとくらす編集部
【画像・参考】きょうとDays(毎週月~金曜日17:35~18:00) – KBS京都
※この記事は、2023年5月25日(木)放送時点の情報です。詳しくは店舗へお問い合わせください。
※京都大学フィールド科学教育研究センター・芦生研究林の許可を得て作品制作・取材をしています。