祇園白川沿いの風情ある場所にたたずむ料理旅館白梅。老舗の格式、きめ細やかなおもてなしで、国内外から高い評価を得ています。
その人気旅館の女将から見る祇園の景色を『きょうとくらす』で毎月1回、コラムでお届けします。
あらたまの年の初めのご挨拶を申し上げます
今回はお正月の料理旅館の習わしと、キャビアを見ると思い出す“あの人”のお話しを綴ります。
祇園の年越しは
私たち白梅旅館の年末年始は、ピークタイムの年越にしんそばを客室にお運びする途中でゴーン……と知恩院さんの除夜の鐘が響いてくるのが例年のパターンです。
門松となる根引きの松を玄関に飾り、幔幕を上げ、すべてのお部屋のしつらえをお正月のものに飾り替え、お節の準備、と年末は通常の業務に加えてやることが多く、目の回る忙しさ。
元日の朝は梅に結び昆布を入れた大福茶、お屠蘇、そしてお雑煮はやっぱり丸餅、白味噌。白梅の賄いごはんは七草粥の日まで、ずっとお雑煮なのですが、みんな不思議と飽きない白味噌の麹パワーです。
CA時代の年越しの思い出
さて、お正月休みに帰省も含めてご旅行された方も多かったのではないでしょうか。
インバウンド需要もあって12月のクリスマス休暇から国際線日本発着の多くの便がほぼ満席だったとのこと。祇園界隈もコロナの頃が信じられない光景で賑わいが見られます。
CAだった頃、なぜか私はクリスマスからお正月にかけてはモスクワへのフライトがよくありました。現地で自炊するクルーも多かったのですが、そんな私たちのモスクワステイを支えたロシア人男性がいます。
(本名かどうかわかりませんが)名前はセルゲイ。
初めてのモスクワステイもちょうどお正月で、母からお土産にと頼まれたウオッカとキャビアをセルゲイにお願いしたりしました。
対面したセルゲイは白いスーツにボルサリーノ、赤いバラの花を胸につけたショーンコネリーの007のような男性。まるで映画のスクリーンから飛び出してきたようなセルゲイにビックリ驚かされましたが、今でも時々、懐かしく思い出してしまいます。
よい一年になりますように
祇園では一年に2回だけ、お盆とお正月に実家に帰省する舞妓たちも街に戻り1月7日が始業式。黒紋付きで正装した芸舞妓が街を行きかうと、一年が本格的に始まります。
今年は元日から心痛む出来事が相次ぎました。心からお見舞いとお悔やみを申し上げるとともに、皆様が一日も早く穏やかな日常を取り戻されることを祇園から切にお祈りいたしております。皆さま、どうぞこれから穏やかな佳い一年になりますように。
奥田朋子(おくだ ともこ)/料理旅館白梅 女将
1965年京都生まれ。1989年全日本空輸株式会社にCAとして入社。
1997年より若女将として、2017年より女将として料理旅館白梅を経営し、2017年より祇園新橋景観づくり協議会会長として京都、祇園の街づくり活動にも積極的に参加している。
文/奥田朋子
【画像】料理旅館白梅
PIXTA(ピクスタ):forden/ソウ
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