コラム

3月が見頃!京都府立植物園 PLANTS WONDER WORLD【きょうとくらすコラム】

2024年で開園100周年を迎えた京都府立植物園。
日本で最初の公立の植物園として誕生して以来、府民に親しまれ、歴史を重ねてきました。四季折々の草花の栽培はもちろん、希少な植物の保全にも力を入れています。

このコラムでは、植物の専門家である戸部園長に季節ごとの見どころやユニークな植物の生態を教えてもらいます。物言わぬ植物から学ぶことはたくさん!緑に癒され、潤いある暮らしのヒントも見つけてくださいね。

画像:京都府立植物園

3月が見頃の植物たち

梅は咲いたがサクラはまだのころ、植物園の東北部にあるツバキ園エリアで、通称カメリア(学名Camelliaツバキ属)の名で知られるツバキの樹木が約250品種500本立ち並び、赤やピンクや白い花を咲かせています。昨年3月初めには国際ツバキ大会が日本で開催されました。それもそのはず、世界で親しまれているツバキの園芸品種の多くが日本の3原種ヤブツバキ、ユキツバキ、サザンカが交配に使われてきているためです。

画像:京都府立植物園
(ヤブツバキ)

ウィキペディアによれば、それらの3種がトップスリーで、ヤブツバキからは2,000品種以上、ユキツバキからは400品種以上、サザンカからは300品種以上がつくられています。そこで今回は、ヤブツバキを少し紹介します。

ヤブツバキの花言葉は「気取らない優美さ」。学名はCamellia japonica L.です。名前は日本のカメリアですが、北海道を除く日本全土に分布するほか中国、台湾、韓国にも分布しています。
ツバキ属には現在原生種が120種知られているのですが、そのほとんどが東アジアから東南アジアに分布しています。しかしその中で、ヤブツバキは初めてツバキ属がつくられたときに、その属の唯一の種だったのです。命名したのはスウェーデンの植物学者リンネで、1753年のことでした。
リンネは日本に来たことはありません。リンネは、長崎・出島の3学者の一人と言われるドイツ人医師エンゲルベルト・ケンペルが出島に滞在した1690-1692年の間に採集した植物標本に基づいて命名しています。植物標本ってすごいですね。ケンペルが採集して日本から持ち帰った植物標本はロンドンの自然史博物館に所蔵されています。その中には、イチョウの標本もあり、その命名者もまたリンネです。

ヤブツバキの花は筒型(壺状)をしていて、どの花も5枚の萼片と5枚の花弁、そして無数の雄しべと1個の雌しべからなります。無数の雄しべも実はもともと5本の雄しべのそれぞれが数十本に枝分かれしたもので、合わせて百本以上の雄しべが横に合着して筒型になり、さらに花弁にも合着しています。そのため花が終わると花弁と雄しべがボトンと落ちます。ちなみに、ユキツバキやサザンカの花は扁平でお皿型をしています。花弁も雄しべと一緒ではなく、1枚ずつパラパラと落ちます。赤い花のヤブツバキやユキツバキにはメジロなどの鳥が、白い花のサザンカにはハナバチが蜜を吸いにやってきます。

観覧温室には、キンカチャなど、原産地がベトナムなどの黄色い花のツバキも植えられています。

画像:京都府立植物園
(キンカチャ)

この3月20日、21日には植物園内でツバキ展を開催されます。原種がヤブツバキに近い花を探してみて下さい。

画像:京都府立植物園
(ツバキ)

戸部 博 京都府立植物園 園長

1948年青森生まれ。東北大学理学部卒業。千葉大学理学部助手、京都大学理学研究科教授など39年間大学につとめる。その後、日本植物分類学会長、日本植物学会会長などをつとめ、2018年4月1日より京都府立植物園の園長に就任。自らの主導により植物や植物多様性保全、京都府立植物園に関する研究を専門家によって一般の方に分かりやすく伝えるサイエンスレクチャーを2023年より植物園にて開始。

文/戸部 博

【画像】京都府立植物園