KBS京都で放送中の『きょうとDays』。
今回は、2023年7月20日(木)に放送された『ふるさと Days』コーナーから、故郷で農業に奮闘する前川亮さんをご紹介します。
京田辺市が誇る特産品「京都田辺茄子」
京都府南部に位置し、自然が豊かで豊富な地下水に恵まれた、京田辺市。特産品として、玉露やえびいも、京都田辺茄子、たけのこなどが挙げられます。
その中で、まもなく収穫のピークを迎えるのが、京都田辺茄子です。色つやが良く、皮が柔らかく肉厚なのが特徴の名産品です。
コロナ禍で地元に戻り、ずっとやりたかった農業に挑戦
そんなナスの栽培を始めて今年で3年目になるのが、34歳の前川亮さんです。
それまで会社勤めをしていた京田辺市出身の前川さんは、コロナ禍がきっかけで転職を考えるようになりました。
「祖父が農業をやっていて興味があったので、いずれは農業をやりたいと思っていました。ちょうどコロナの時期に転職のタイミングがあったので、だったら地元である京田辺市に帰ってきて農業をしようと考えました」と前川さん。
その頃には祖父は亡くなっていましたが、前川さんは京田辺市がナスの生産に力を入れていることを知り、京都田辺茄子の栽培を始めました。しかし、もちろんナスの栽培の経験はありません。
そこで一昨年、『JA京都やましろ』が開催したナス農家養成塾に参加し、ナスの栽培方法を基礎から一年間かけて学びました。
栽培方法を一から教わり、学んだことを自分の田んぼに持ち帰って実践してみるという試行錯誤を続けたそうです。
美味しいナスが実るまでの、たくさんの工夫
ナスの収穫は6月から11月、毎朝4時頃から昼ぐらいまで、前川さんが一人で作業をしています。
京田辺市のナスの栽培方法は興戸方式と呼ばれ、1986年に市内の興戸地区で生み出されました。畑にはナスが植えられているうねがあり、そのそばに溝、さらに通路が設けられていて、収穫時にカートを動かしやすいという利点があります。この方式で30%の省力化が実現されるそうです。
不要な葉や芽を摘む作業を行うことでナスを収穫しやすくし、同時にナスの大きさを整えていきます。この作業をしないと、葉が成長しすぎてまるでジャングルのように茂ってしまい、収穫しづらかったり、ナスが傷ついてしまったりするのです。
そしてナスは、実がなり始めてから2週間位で10cm程の大きさに成長し、収穫の時期を迎えます。
「こういった作業は好きで、成長を毎日見ながら大きくて綺麗なナスが収穫できたときなんかは、すごく嬉しいと同時に楽しいです」と、前川さんが話してくれました。
農業の世界でも進むオートメーション化
前川さんは収穫したナスを毎日『JA京都やましろ茄子選果場』に運び、到着したらトラックから手際良く降ろし、出荷に備えます。
『JA京都やましろ』は、京都府南部の12の市町村の農作物を取り扱っています。
2016年には現在の共同ナス選果場が完成し、さらに最新の機器が導入され、選別や箱詰め、包装がオートメーション化されました。
出荷したナスを見守る前川さん。「収穫したナスをここに持って来ることによって、選別から箱詰めまでしていただけるので、その分ほかの作業に時間が割けて、より良いナスを作ることができています」と語ります。
京都田辺茄子をより美味しく味わうには?
「京都田辺茄子の特徴は、なんといっても皮が柔らかくてみずみずしいところ。どんな料理にも合い、食べやすい野菜だと思います」と前川さん。
そんな京都田辺茄子をより美味しくいただくためのおすすめの料理を、今年で活動40周年を迎えるという京田辺市食生活改善推進委員の皆さんに教えてもらいました。
“私達の健康は私達の手で”をスローガンに、『減塩みそづくり講習会』を開催するなど、減塩の普及を目的に活動しています。
今回は特別に、京都田辺茄子に合う料理を作っていただきました。まず一品目は『ナス丼』です。
メンバーの皆さんで話し合った結果、ナスのふっくらとした食感が楽しめる丼を作ってくださったそう。「あっさりと食べられることがこのナスの特徴です」と、教えてくれました。
2品目は『冷製ナス』。ハムやきゅうりなどお好みの材料を細かく刻んで、冷ましたナスの上にかけていただく料理です。何度でも食べたくなる、食が進む一品ですよ。
どちらも食べやすく、ナスの風味を存分に生かした料理でした。
若い力が、未来への希望
『JA京都やましろ』で営農指導課に勤務する中村博貴さんは、ナスの栽培を学んできた前川さんの歩みを見てきました。
「就農されて3年目となり、昨年や一昨年と比べてほ場の作業管理が丁寧にされているなと思います。木の成長が早いと感じていますし、収穫時期も早く、収容も多くなっていると聞いて、非常に嬉しかったのを覚えています」。
そして、「若い農業者さんは非常に少なく、貴重な存在です。前川さんをはじめ若い方々にこれからの地域の農業を背負ってほしいという期待があるので、頑張っていただきたいなと思っています」と、希望を語ってくれました。
ナスの栽培を始めて3年目。地域の期待を背負って、前川さんのキャリアは始まったばかりです。「地元の就農者も高齢者ばかりなので、農業をもっと若い世代に広げていきたいと思っています」。
前川さんがナスに込めている愛情が、伝わってくるようでしたね。若い力がこれからの農業を引っ張っていってくれるのが楽しみです
文/ななえ
【画像・参考】きょうとDays(毎週月~金曜日17:35~18:00) – KBS京都
※この記事は、2023年7月20日(木)放送時点の情報です。詳しくは店舗へお問い合わせください。