KBS京都で放送中の『きょうとDays』。
今回は、2023年9月28日(木)に放送された『ふるさと Days』コーナーから、学生たちが、学生ならではの視点で地域の課題解決の糸口を探り、事業作りを学ぶ取り組みをご紹介します。
学生たちが地域の未来を考えるプログラム
この日開かれたのは、地域課題を解決するアイデアの発表会です。地元の宇治市や周辺の高校・大学に通う、生徒や学生17人が熱弁を振るいました。
この発表会は、宇治市と宇治商工会議所が主催する『宇治市未来キャンパス』の最終プログラムとして開催されたものです。
『宇治市未来キャンパス』とは、高校生・大学生が、地域課題とその解決方法を探り、地域おこしのプロから事業作りの実践的な知識を学ぶ、およそ3か月間・全9回のプログラムです。
宇治市産業振興課の谷尾和宣さんは、「現場を知って自分たちがやりたいことを結び付けて何かをやってみる。その答えをフィードバックして次のステップに運ぶということを実施しています」と話します。
住人の生の声で、街の魅力を再発見
このプログラムは、京都府の『子育て環境日本一推進戦略』に連携した取り組みの一つとして、3年前にスタートしました。
こちらの高校生3人のチームは、観光エリアではない地域の活性化を図るプロジェクトを発表しています。
発表会の一週間前。立命館宇治高校3年生の佐々木翔真さんたち3人は、小倉の魅力を発信するマップを作るため、高校生を対象としたワークショップを開催。
ワークショップに集まった高校生11人を前に、フィールドワークの説明をしたり、意見交換をしたりと奮闘しました。
運営リーダーの上田桃加さんは、「人とのつながりがあるのが、都会にはないこの地域の魅力の一つ。人の魅力は地域の活性化に大事だと思います」と話します。
そして、フィールドワークへ。実際に街に足を運び、自分たちの目と耳で、小倉地域の隠れた魅力を発掘していきます。
住宅地が大部分を占める小倉地域は、比較的観光・集客スポットが少ないことに加え、住民の高齢化や商店街の縮小など、様々な課題を抱えている地域ですが、明るい話題もあります。
2024年のオープンを目指している『ニンテンドーミュージアム』の建設です。
世界が注目する一大スポットが小倉にできるということもあり、今回のフィールドワークでは、エリア全体を活性化させ、人の流れを呼び込む方法を探ります。
まず一行は、古民家をリノベーションした宿泊施設に立ち寄りました。
学生の一人が「この宿のこだわりは?」と尋ねると、宿泊施設のオーナーさんが「この建物は造られてから100年を超えています。日本の古き良きものを、ぜひみなさんに体験していただきたい」と話してくれました。
続いては、元禄年間創業の老舗茶舗『丸久小山園』を訪れました。
「丸久小山園の強みは?」との問いに、「茶農家を大事にすることですね。商売のことだけを考えるのではなく、農家さんの意見を聞く。そうやって日本一のお茶を作ってもらわないと伝統が絶えてしまうからね」と、教えてくれました。
フィールドワークを経て、「小倉に住む人たちが、自分たちの地域にはこんな魅力があるんだと知ってほしいという熱意を、直に感じることができました」と、佐々木さん。
フィールドワーク後は、集めた情報を元にその場所についてのキャッチフレーズやコメントを考えて、グループごとに発表していきます。
運営メンバーでもある浦谷直樹さんは、店舗や施設ではなく、小倉の風景を楽しめるスポットを紹介しました。
「キャッチコピーは“小倉のウクライナ”。オグラとウクライナの“クラ”をかけた感じです」と、じっくり考えたアイデアを発表します。
発表を経て、「ただ単に魅力を伝えるだけではなく、キャッチコピーや伝え方にそれぞれの工夫を感じ、小倉の魅力を改めて知ることができた」との声が上がりました。
次はついに、今回のワークショップの成果やこれまでのプログラムで得た学びをまとめて、一週間後の最終発表会に挑みます。
これまでの成果を発表!街のこれからを考える
発表会当日、控室にはプレゼンテーションの練習を入念に行う3人の姿がありました。
「緊張している気持ちが大きいけれど、今までやって来た私たちの活動を十分に報告できるように一生懸命発表したいです」と上田さん。
発表会当日、学生たちに先立って松村淳子市長が登壇し、「これを最後の発表会だと思わず、これを契機に次のステップを歩んでもらえたら」と、受講生たちを激励しました。
受講生たちは、3か月間の学びを通してそれぞれが気づいた街の課題に、正面から向き合った企画を発表。
発表後には会社経営者ら4人のゲストスピーカーからアドバイスを受け、事業内容を振り返っていきます。
いくつかのグループが発表を終え、いよいよ上田さんたちの出番がやってきました。
「平等院周辺に観光客が集中し過ぎている問題を見つけ、それを解決するためのアイデアとして、それ以外の地域の魅力を発信し、観光客を分散させようと考えました」と、佐々木さん。
『ニンテンドーミュージアム』ができるなど大きい事業が進む中で、小倉地域の魅力を発信するためのサイトや媒体が見つからない現状を提示します。
そして、その解決のために小倉の魅力を発信するマップを作ろうとワークショップを開催したこと、マップには小倉地域の11か所をピックアップし、キャッチコピーや写真、詳しい説明と店舗のURLを掲載することなどを説明しました。
ワークショップの参加者は初め、商店街が廃れていることやシャッター街が多いことなど、街にマイナスのイメージを持つ人が大半でした。
「しかし、実際にフィールドワークを行ったあとはアットホームな雰囲気になり、地域の人と仲良くなりやすいことや、のどかな風景があることなど、さまざまな魅力に気づくことができました」と浦谷さん。
上田さんも、「ウェブページの宣伝を兼ねて、インスタグラムにワークショップで作成した店紹介を投稿したいです。若者にも目に留まり、小倉を知ってもらうきっかけにもなると思います」と、アイデアを提案。
無事、緊張の発表を終えました。
発表を受けて3人は「今後はみなさんが、新しく魅力をつくる側になる可能性もあると思います。今ある魅力を発見するだけではなく、どうやったらマップから実際の行動を起こさせるまでのギャップを埋められるのかを考えると、より本格的な活性化につながるのでは」と、的確な助言をもらうことができました。
発表を終えて、「こういう機会で発表できたことが、自信に繋がりました。たくさんの人との出会いもあり、宇治市未来キャンパスに参加して心から良かった」と、上田さん。浦谷さん、佐々木さんも満足のいく内容となったようです。
地域課題に挑戦し続け、新たな価値を創造していく『宇治市未来キャンパス』。
これからも仲間とともに、常識にとらわれない自由な発想で、地域の未来を作っていってほしいですね。
関連記事:これまでの「ふるさとDays」はこちら!
文/ななえ
【画像・参考】きょうとDays(毎週月~金曜日17:35~18:00) – KBS京都
※この記事は、2023年9月28日(木)放送時点の情報です。