KBS京都で放送中の『谷口流々』。
谷口キヨコが、京都を中心に活躍する人々の仕事現場に足を運び、十人十色の人生哲学を紐解いていきます。
2023年10月21日(土)の放送では、切り絵作家・望月めぐみさんに話を伺いました。
Profile:切り絵作家・望月めぐみさん
望月めぐみさんは、一枚の紙を刻んで生まれる切り絵特有の緊張感のある透過美を活かし、寺院や茶室といった伝統建築における大型のインスタレーション作品を多く手掛ける切り絵作家です。
制作の工程について、望月さんに教えてもらいました。切り絵の制作はまず図案を描き、その図案に沿ってカットしていくのだそう。
細かい部分は絵を重ねて描いてゆき、それを下絵にしてカットすると……、
繊細で立体感・躍動感のある作品へと仕上がります。
切り絵に出会うまで
神奈川県出身で、子供の頃から絵が好きだったという望月さん。小学生の頃、百人一首で遊んでいると十二単を着た女性の絵を見て美しいと思ったり、歴史漫画を読んでお姫様に憧れたりと今の作風に通ずる部分があったといいます。
教育大学に入学後は、演劇を始めました。そこでチラシや看板を描くことがあり、和の時代ものの演劇にあう技法を探していた時に、切り絵と出会います。切り絵に挑戦してみると、「これが私の技法だ」としっくりきたのだそうです。
そのときに作った望月さんの初作品がこちらです。「完成がはっきりしているのが切り絵のいいところで、出来上がったときの達成感がすごかったです。」と望月さんは話します。
その後、就職活動をすることになるのですが、世間は就職氷河期の真っ只中。「それであれば一番大好きな切り絵を仕事にしよう」と望月さんは決意しました。
そして、在学中にポートフォリオ(作品集)を作って出版社などに送付。その結果、ファッション雑誌のイラストレーションに採用されました。
漫画の道へ
その後、アーティストとしてギャラリーに出して原画の販売もしていましたが、なかなかそれだけで生活するのは難しく、アルバイトもしていたんだそう。30歳になった頃、“作品の本質がない”と望月さんは考えるようになります。
そんな中、尊敬する漫画の先生がアシスタントを募集していることを知り、漫画のアシスタントになります。
先生の作品を取り扱うため、自分の作品以上に丁寧に扱っていたんだそう。「その経験が、大事に丁寧に作品を扱う、今の切り絵に込める“絶対失敗できない”という緊張感に繋がっていきました」と望月さんは話します。
その後、NPO団体『京都大原里づくり協会』が空き家に住んで芸術活動をする人を探しているという話を耳にします。「これだ!」とピンとくるものを感じ応募。京都・大原に住むことが決まっていきました。
千年後に伝え残す
京都に来て、今まで見て憧れてきた絵巻物の世界に自分が入っているような感覚になったという望月さん。
これまでも美人画などをモチーフにした作品を描いていましたが、神話や伝承、伝説など作品の幅が広がっていき、作品の深みも出てきました。そして、徐々に作品も大規模なものになっていったのだそうです。
これからのことを望月さんに尋ねると「昔のものからインスピレーションを得て作っていることもあり、自分の作品も百年、千年と未来に届けたい」と話してくれました。
望月さんを表すことば
今回の“望月さんを表すことば”は『令和の美術(切り絵)担当』です。
ここからまた千年の歴史の中で、令和の時代に望月さんが切り絵を担当していたときっと伝わっていくことでしょう。
2023年11月14日(火)から11月30日(木)まで望月さんの個展が奈良県国営明日香歴史公園で行われます。龍神の絵など大型の作品が展示されているそうです。是非、繊細でありながら躍動感のある作品の数々を見てみてくださいね!
文/きょうとくらす編集部
【画像・参考】谷口流々(毎週土曜日9:30~10:00) – KBS京都
※この記事は、2023年10月21日(土)放送時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。