KBS京都で放送中の『谷口流々』。
谷口キヨコが、京都を中心に活躍する人々の仕事現場に足を運び、十人十色の人生哲学を紐解いていきます。
2023年11月25日(土)の放送では、旗製造会社・平岡成介さんに話を伺いました。
Profile:旗製造会社・平岡成介さん
平岡成介さんは明治20年創業の旗製造会社『平岡旗製造』の専務です。夏の甲子園『深紅の大優勝旗』の製造も手がけました。
まず『平岡旗製造』で様々な旗を見学させてもらいました。学校の旗や……、
お祭りで使うのぼりも。
そして、こちらは相撲の化粧まわし。旗作りと同じ技術が使えるのだそう。他にも、トロフィーやカップも販売されています。
旗屋に生まれて
平岡さんは旗屋に生まれ、おばあさんに「大きくなったら旗屋になるんやで」と言われて育ったのだそうです。中学に入る頃からは家業を継ぐことを見据えた進路を選んできました。大学卒業後は銀行に就職。
東京でとっても楽しく働いていたのですが、30歳までには帰ってくるように言われ、29歳で家業に入りました。
初めての仕事は甲子園地方大会の優勝旗のペナントを作るものでした。ペナントの製造には最低3日かかるのですが、雨や再試合などで地方大会が当初のスケジュール通りに進まず優勝校がギリギリまで決まらないことも。
ペナントは全国高校野球大会の入場の際に使うのですが、地方大会の優勝がどうしても決まらない時は試合の残っている学校のペナントを全て作ったこともあるそうです。
甲子園 大優勝旗の製作
ある日、家でリラックスしながら甲子園の開会式を見ていた平岡さん。本来美しいはずの入場行進時の旗の状態や持ち方などがバラバラなことに気づきます。
その年に主催の方に連絡し、翌年チェックに現地に行かせてもらえることになりました。平岡さんは翌年、開会式の前日に49本すべての旗をチェックしました。一つひとつ見ていくと、旗自体が痛んでいるものもあったそうです。
「夏の全国高校野球大会の大優勝旗をいつか作りたい」と幼い頃から心のどこかで思っていたという平岡さん。当時使用されていた大優勝旗は第40回大会の時に新調されたものと分かりました。
大優勝旗は絹から作られるのですが、絹の寿命は約40年。それにも関わらず、旗の使用年数は50年を超えていました。
そしてついに、大優勝旗の製作依頼を受けることができました。昔話の『鶴の恩返し』のように絹を機織りの要領で仕上げていくため、製作にはなんと2年半を要しました。そして製作費は1,200万円! 持てる技術を全てつぎ込んで製造に励んだそうです。
完成すると、甲子園球場で『三代目深紅の大優勝旗お披露目式』が行われました。平岡さんは1塁側のベンチからマウンドの前まで優勝旗を持って行ったのですが、その際にウグイス嬢が「大優勝旗を製作されました平岡旗製造株式会社・専務取締役平岡成介さん」とアナウンスしてくれたそうです。
高校時代は野球部だった平岡さん。甲子園に出たいという学生時代の夢が、社会人になってから叶いました。
喜びを共有する
ある時、平岡さんの同級生たちと“大人の運動会をしよう”となったそうです。カップを持ってきてほしいと頼まれ、平岡さんは持参しました。
その運動会でカップをもらって嬉しかったり、もらえなくて悔しかったりという気持ちに直接触れます。改めて、自分たちの扱っている商品は人々に喜びを与えられるものであると気づかされたと言います。
そして、「ずっと続けてきたこの仕事をこれからもやっていきたい」と平岡さんは力強く話してくれました。
平岡さんを表すことば
今回の“平岡さんを表すことば”は、『努力の賜物』です。
優勝旗もトロフィーもカップも“ひとつの努力が実ったもの”。目に見える形として表されたものなんですね。それをもらえるように日々頑張っていきたいですね!
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文/きょうとくらす編集部
【画像・参考】谷口流々(毎週土曜日9:30~10:00) – KBS京都
※この記事は、2023年11月25日(土)放送時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。