KBS京都で放送中の『京都浪漫~悠久の物語~』。
2023年4月9日(日)に放送された『谷崎潤一郎が愛した京都~神護寺・曼殊院門跡・石村亭・法然院~』を、全5回に分けてご紹介します。
谷崎潤一郎が愛した京都~神護寺・曼殊院門跡・石村亭・法然院~
- 第1話 「細雪」で描かれる桜
- 第2話 神護寺で記された「春琴抄」
- 第3話 曼殊院門跡で学び「少将滋幹の母」へ
- 第4話 「夢の浮橋」の舞台、潺湲亭(現 石村亭)
- 第5話 「瘋癲老人日記」に描かれた谷崎と法然院
小説・夢の浮橋の舞台となった「潺湲亭(せんかんてい)」
賀茂川と高野川の合流地点にある発達した原生林・糺の森。
その糺の森から道一つ挟んだ東側の住宅地に『石村亭(せきそんてい)』があります。京都に本社を置く、電気機器メーカー日新電機の迎賓館です。
かつては『潺湲亭(せんかんてい)』と呼ばれ、昭和24年から31年まで文豪・谷崎潤一郎と妻・松子が暮らしていました。
南禅寺の近くの潺湲亭という名前を付けた借家を借り、そこで7年かかった『細雪』を書き終えました。その後、こちらの住まいを購入し、やはり『潺湲亭』と名付けました。
一般には公開されていない、この邸宅を特別に見せていただきました。
この邸宅はもともと、商家の隠居所として明治44年ごろに建てられ、築110年を超えています。
2023年4月にリニューアルオープンした『芦屋市谷崎潤一郎記念館』は、この素晴らしい日本庭園を真似して造られています。
この『潺湲亭』をモデルに書かれたのが『夢の浮橋』です。
作中に出てくる『合歓亭(ねむてい)』と名付けられた家は今はありませんが以前は存在しました。糺(ただす)が本を抱えて橋を歩いていくシーンに出てくる橋は現在も見ることができます。
庭に建つ石碑には、松子の筆による『夢の浮橋』の冒頭の歌が刻まれています。
谷崎潤一郎の書斎
離れになっている書斎へ向かうと、谷崎の友人である中国人書家・痩鉄(そうてつ)作の扁額がかかっています。
書斎には日新電機が写真を元に復元した机や本棚が置かれています。
机には原稿のレプリカが置かれてあり、何度も修正を加えながら筆で執筆していた様子が再現されています。
書斎は『潺湲亭』の中でも日当たりが悪く寒い部屋にあたり、谷崎はこの邸宅で高血圧症になり、右手も不自由になります。転居を繰り返す中、生涯で最も長い期間7年7か月を過ごしました。
70歳になったころ、京都の冬の寒さに耐えられなくなり、心を残しながらも手放すことになり、昭和31年に松子とゆかりのあった日新電機が譲り受け、今は迎賓館として使われています。
譲渡の際に「できる限り現状のままで使ってもらいたい」と谷崎潤一郎が希望したため、その趣や佇まいを変えずに維持されています。
熱海に転居後も京都に訪れ、庭を眺めながらひとときを過ごしたと言われています。
谷崎は会社の施設として名前が堅苦しいと名前をいくつか提案し、庭に石が多いことから『石村亭』と名が変わりました。
※石村亭は一般公開していません。
続いては、“谷崎潤一郎が愛した京都~第5話 「瘋癲老人日記」に描かれた谷崎と法然院~”をご紹介します。
文/きょうとくらす編集部
【画像・参考】京都浪漫~悠久の物語~(第1・2週 日曜日 21:00~21:55/再放送 第3・4週 日曜日 21:00~21:55) – KBS京都
※この記事は、2023年4月9日(日)放送時点の情報です。