KBS京都で放送中の『京都浪漫~悠久の物語~』。
2023年4月9日(日)に放送された『谷崎潤一郎が愛した京都~神護寺・曼殊院門跡・石村亭・法然院~』を、全5回に分けてご紹介します。
谷崎潤一郎が愛した京都~神護寺・曼殊院門跡・石村亭・法然院~
- 第1話 「細雪」で描かれる桜
- 第2話 神護寺で記された「春琴抄」
- 第3話 曼殊院門跡で学び「少将滋幹の母」へ
- 第4話 「夢の浮橋」の舞台、潺湲亭(現 石村亭)
- 第5話 「瘋癲老人日記」に描かれた谷崎と法然院
「細雪」に描かれた谷崎家の花見の様子
作家・谷崎潤一郎は随筆の中でこのように記しています。
「私は京の生まれではないけれども京好きの点では京都人に劣らない。」
東京で生まれ育った谷崎がどれほど京都を愛していたか、名作『細雪(ささめゆき)』の中で、京都の花見のシーンを読むとわかります。
谷崎の3人目の妻・松子とその姉妹がモデルとなっており、小説に描かれた場所を実際に訪れていました。
嵯峨野の広沢池や大覚寺の桜を楽しみ、嵐山の渡月橋を渡って法輪寺へと向かい、昼食を食べます。
再び渡月橋を渡って嵯峨野の竹林の小径を抜け、その後タクシーで岡崎に向かいます。
そして、締めくくりとして、どこの桜よりも楽しみにしている平安神宮の紅枝垂れ桜を観に行きました。
松子とその姉妹の様子が『細雪』の中に以下のように描かれています。
今年はどんな風であろうか、もうおそくはないであろうかと気を揉みながら、毎年廻廊の門をくぐる迄はあやしく胸をときめかすのであるが、
今年も同じような思いで門をくぐった彼女達は、忽ち夕空にひろがっている紅の雲を仰ぎ見ると、皆が一様に、「あー」と、感歎の声を放った。
谷崎文学の研究者が語る「細雪」
谷崎文学の研究者として知られる武庫川女子大学名誉教授のたつみ都志先生に話を伺いました。
ほとんど事実に近いことを記している『細雪』は、当時の谷崎の生活を写しとっています。
谷崎の旧居の一つに反高林(たんたかばやし)の家があります。神戸市東灘区に移築し保存されている倚松庵(いしょうあん)のことです。ここでの暮らしが『細雪』に描かれたことから“細雪の家”とも呼ばれています。
戦時中に描かれた『細雪』は、軍部によって発表を止められた作品でした。空襲警報がなると書いていた原稿だけを持って谷崎は逃げたのだそうです。
倚松庵で執筆が始まった『細雪』は、疎開先の熱海や岡山でも描き継がれました。愛妻・松子が希望したことをきっかけに、終戦後移り住んだ京都で完成しました。
焼け野原となった京都で皆が戦争前を懐かしみながら、こぞって『細雪』を読んだそうです。
続いては、“谷崎潤一郎が愛した京都~第2話 神護寺で記された「春琴抄」~”をご紹介します。
文/きょうとくらす編集部
【画像・参考】京都浪漫~悠久の物語~(第1・2週 日曜日 21:00~21:55/再放送 第3・4週 日曜日 21:00~21:55) – KBS京都
※この記事は、2023年4月9日(日)放送時点の情報です。