父と祖父から受け継いだ工房で仏の姿を掘り出す「女性仏師」

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今回は、2023年6月6日（火）の放送から、仏像彫刻の工房『松久宗琳佛所（まつひさそうりんぶっしょ）』で仏像作りに励む仏師・松久佳遊さんについてご紹介します。

父と祖父から受け継いだ仏像彫刻の工房

京都の繁華街・河原町通にほど近い場所に、京仏師・松久佳遊（まつひさかゆう）さんの工房『松久宗琳佛所（まつひさそうりんぶっしょ）』があります。

1962年、佳遊さんの祖父・朋琳（ほうりん）さんと父・宗琳さんによって発足しました。

朋琳さんは1901年（明治34年）の生まれ。10歳で仏像彫刻を始め、70年以上仏像を彫り続けた人物です。

比叡山延暦寺、大阪・四天王寺の仏像を手掛け、“大仏師”の称号を得ました。

幼少の頃から仁王を愛し、その彫刻を得意とした朋琳さん。“仁王の朋琳”と呼ばれるに至りました。

“仁王の朋琳”に対し“観音の宗琳”と呼ばれたのが、佳遊さんの父・宗琳さんです。

優雅で精緻な観音像を好んで彫ったという宗琳さん。工房の展示室には宗琳さんの手掛けた観音像が数多く残されています。

「木の中から仏の姿を見つけ出す」佳遊さんの仏像作り

これまで数々の仏像を生み出してきた彫刻の工房。

朋琳さんと宗琳さんが残した理念を胸に、6人の仏師たちが日々仏像作りに励んでいます。

佳遊さんが手掛けているのがこちらの仏像。法隆寺金堂の釈迦如来を小さくした像で、佳遊さん自身の勉強のために作っているのだそう。

紙に書いた仏像の絵にマス目を書き、そのマス取りを元にして形ごとに彫り進めていきます。

こちらの仏像は楠を使用した一木造。仏像の主な部分をひとつの木材から掘り出して造っています。大体の形が現れ、お顔にも表情が出てきている段階です。

続いて、衣文（えもん）の線を書き込み、形を詰めていきます。

さらに平たい部分を綺麗に削っていくのですが、「時間が経つと形が出てくる」と佳遊さんは話します。

一心不乱に刀を動かす佳遊さんが見ているのは、木の中に眠る仏の姿です。

元々の大きな木の中から、この形がどこに入っているのかを見つけ出すのだそうです。

佳遊さんが木の中から見出す仏像はどれも女性らしい優しさと気品に満ちています。

仏絵師の経歴を仏像作りに生かす

祖父、父とも違う佳遊さん独自の作風は、意外な経歴によって育まれました。

佳遊さんが彫刻を始めたのは、父・宗琳さんが亡くなってからのこと。大学を卒業後しばらくは、この工房で仏絵師の仕事をしていました。

大学で日本画と水墨画の技を学んだ佳遊さん。仏絵師としてこれまで多くの仏画を手掛けてきました。

現在も仏像彫刻を手掛けるかたわら、身近に置いて親しめる仏画を理想に、自由な発想を生かした作品を描き続けています。

仏画を描くときから常に立体を意識していたという佳遊さん。仏画で培った造形感覚は、仏師として活躍するようになった今、大きな強みになっています。

佳遊さんが作った仏像には、絵画に通じる軽やかさを感じます。朋琳さん、宗琳さんから受け継いだ感性が、さらに大きな花を咲かせたのでしょう。

【詳細情報】
松久宗琳佛所
住所：京都府京都市中京区御幸町通三条下ル

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普段あまり目にすることのない仏像作りの過程や仏師の想いを知ると、仏像の見え方が変わってきそうですね。作り手の想いを感じながら仏像鑑賞を楽しんでみてください。

文／中村ゆか

【画像・参考】京都画報（毎月第1火曜日 20:00～20:55） – KBS京都
※この記事は、2023年6月6日（火）放送時点の情報です。詳しくは店舗へお問い合わせください。