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伝統の手織り技術に新たな価値を与える職人の取り組みとは【与謝野町】

KBS京都で放送中の『きょうとDays』。
今回は、2023年12月14日(木)に放送された『ふるさとDays』のコーナーから、織物の産地として知られる与謝野町の手織り職人の取り組みをご紹介します。

学生時代からの夢を叶え、与謝野町で起業

与謝野町イメージ
画像:KBS京都『きょうとDays』

豊かな自然に囲まれた与謝野町。かつては丹後地域と京都を結ぶ物流の拠点として栄えていました。

与謝野町はおよそ300年前に発祥した丹後ちりめんの産地でもありますが、現在は生産量が最盛期の20分の1以下に落ち込み、織物産業の担い手不足という問題にも直面しています。

川端晃さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

そんな中、手織りの技術に新たな価値を見出した職人が川端晃さん。

和歌山県出身で幼いころからファッションに興味があったという川端さんは、大阪の服飾学校で基礎を学んだあと、与謝野町の紳士服メーカーに就職。その後、転職したテキスタイルメーカーで手織りの技術に出会い、素材から製品に変わるおもしろさを肌で感じるようになったとのこと。

川端デニム製作所看板
画像:KBS京都『きょうとDays』

そして2022年11月、学生時代からの夢だったという自身の会社『川端デニム製作所』を立ち上げました。社名の“デニム”はあくまでも馴染み深い素材のひとつとして名付けたもので、こだわっているのは手織りの技術です。

手織り作業風景
画像:KBS京都『きょうとDays』

川端さんは、生産の現場で目にする職人の所作には素晴らしいものがあり、それを自身の事業で広めていきたいと思いました。しかし、新規の事業で手織りをべースにしての織物の製造はなかなかハードルが高いという問題も。

手織り作業風景
画像:KBS京都『きょうとDays』

そこで、誰もが知っていて世界中に愛好家がいるデニムという素材に手織りの技術を落とし込み、デニムを媒体に『手織りデニム』として打ち出し展開しています。

手織り素材
画像:KBS京都『きょうとDays』

川端さんの手織りには、縦糸にシルク、横糸に帯状に裂いた布を用いて織り込んでいく、裂き織りという技法が使われています。横糸の布はダッフルコートなどに使われているウール生地。これを細く均等に裂いていきます。

素材生地
画像:KBS京都『きょうとDays』

川端さんが手織りで使う素材生地は、ほかの織物工場から出る廃材を使っています。

コンテスト
画像:KBS京都『きょうとDays』

川端さんの技術は業界からも高い評価を得ています。次世代の織物産業を担う発掘育成をテーマに開かれた、『ジャパン・テキスタイル・コンテスト2022』に出品したのは、再活用した生地を手織りならではのあたたかみのあるデザインに仕上げた作品。応募総数129点の頂点に選ばれました。

川端さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

「取りたかった賞のひとつでもあったので、すごくうれしかった」と川端さんは話します。

地元の人たちとの交流も積極的に

かや山の家
画像:KBS京都『きょうとDays』

川端さんは地元の人たちとの交流も積極的に行っています。町の高台にある『かや山の家』はランチでよく訪れるお店。

かや山の家のランチ
画像:KBS京都『きょうとDays』

この日は鹿肉を使ったロールキャベツをチョイス。地元で取れた野菜が彩ります。川端さんは「鹿の旨みが詰まっていてすごくおいしいです」と笑顔。

かや山の家のラグマット
画像:KBS京都『きょうとDays』

宿泊も可能な『かや山の家』のインテリアには、川端さんが織ったラグマットが使われています。

かや山の家のスタッフ
画像:KBS京都『きょうとDays』

「個性的な織物を作る事業者が増えていて、お客さまに織物にふれてもらいたい思いで、川端さんに連絡しました」とスタッフの梅田さん。「角度によって見え方が変わり、まばらな感じの折り目が手作り感があってすごくいいと思います」とのこと。

「与謝野町にはいろいろな宿泊施設や飲食店があり、そこで『川端デニム製作所』の生地を使ってもらえないか、という提案を今後も続けていきたい」と川端さんは話します。

起業して1年、地元の人たちにも川端さんの手織りのデニムが徐々に知られてきています。

伝統の技術と手織りを融合した新たな生地の開発も

臼井織物外観
画像:KBS京都『きょうとDays』

川端さんは、丹後ちりめんの技術と手織りを融合した新たな生地の開発にも取り組んでいます。こちらは、撚糸から一貫して丹後ちりめんの製造を行う数少ない織元である『臼井織物』。

臼井織物の生地
画像:KBS京都『きょうとDays』

レピア織機で織ったときに出てくる捨て耳を使った生地は、手織りすることで密度がところどころ違って仕上がり、それがいい風合いになるのだそう。

ほかにも川端さんが裂いた生地を横糸に使い、縦糸に織り込んで作られたものなどもあります。

臼井織物スタッフと川端さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

共同開発することで、互いの顧客への新たなアプローチを可能にし、与謝野町を訪れてもらえるようにしたいと川端さん。商品の購買行動だけでなく、織物産地と関わる人口を増やして、人の流れを生み出したい考えです。

臼井織物の生地
画像:KBS京都『きょうとDays』

海外メーカーも注目しているというこの生地は、2024年春に京都市内で開かれる展示会での出品を予定しています。

川端さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

「丹後織物の生産地として歴史のある与謝野町で、培われた技術は唯一無二のもの。ものづくり、デザイン、ファッションが好きな人に地方の産地に目を向けてもらって、生地からの開発・デザインに携わって、オリジナルの事業を興していくのもいいかなと思っているので、ぜひ丹後与謝野町に足を運んでもらえれば」と川端さんは話します。

これからも人の手だからこそ生み出せる唯一無二の生地とともに、川端さんは与謝野町の魅力を発信していきます。

関連記事:これまでの「ふるさとDays」はこちら!

文/流頭

【画像・参考】きょうとDays(毎週月~金曜日17:35~18:00) – KBS京都
この記事は2023年12月14日(木)放送時点の情報です。