KBS京都で放送中の『京都浪漫~悠久の物語~』。
2023年7月9日(日)に放送された『狂言師と巡る能楽ゆかりの地~御香宮神社・因幡堂・豊国神社〜』をご紹介します。
京都市下京区にあるお寺「因幡堂 平等寺」
京都市下京区にある因幡堂。こちらは狂言と深い繋がりがあるお寺です。
因幡堂までは地下鉄 『五条駅』もしくは『四条駅』から徒歩およそ5分、阪急 『烏丸駅』からも徒歩およそ5分です。
狂言の演目に多く登場する「因幡堂」
『因幡堂』『鬼瓦』『仏師』『六地蔵』『金津』など、因幡堂は狂言の演目にいくつも登場します。実在するお寺がこれほど狂言に用いられているのはここだけです。
どうして因幡堂を舞台にした演目が多いのでしょうか。その理由を因幡堂の住職・大釜諦順さんに伺います。
大釜住職によると、演目に因幡堂が特に多く出てくるのは、狂言師・茂山七五三さんの流派である大蔵流だけなのだそう。
頭巾が特徴的な秘仏・薬師如来像
因幡堂の本堂には、本尊・薬師如来像の御前立が安置されています。
今回は特別に、宝物館に保管されている秘仏・薬師如来像を見せてもらいました。
特徴的なのがこの頭巾です。
約1,000年前に建立した因幡堂は、分かっているだけでもこれまで20回以上火災に見舞われてきました。そんな中、この像が今日まで無事に伝わってきた理由は、厨子に像の上を固定できる細工がしてあるからなのだそうです。
頭巾は像を固定するときに、間に挟む綿のような役割を担っているのですね。
さらに厨子の後ろには、像を固定したあとに倒して引っ張るためのコロがつけられています。
それでも避難しきれない場合は井戸の中に入れ、火から守ってきたのだそうです。
薬師如来像に秘められた因幡堂創建の物語
この薬師如来像には因幡堂創建の物語が秘められています。
現在の鳥取県である因幡国に赴いた公家・橘行平が急病になったとき、お告げを受け海の中から薬師如来像を見つけました。
行平が自分の屋敷を改造し、薬師如来像を安置するお堂を造り「因幡堂」と名付けたのがこのお寺の始まりと伝わります。
『因幡堂』は創建当時の名称。承安元年(1171年)、高倉天皇により『平等寺』と命名されましたが霊験あらたかな本尊・薬師如来に病気治癒を願う人があとを断たず、親しみを込めて呼ぶ因幡堂の名も残りました。
今は“がん封じのお寺”として有名です。
境内の能舞台でもう一度狂言奉納を
平成になってからは境内に特設の能舞台を作り、明治初期から途絶えていた狂言の奉納を復活させるなど、歴史・文化の継承に力を入れてきました。
2011年の第5回が最後となっていますが、大釜住職は「形を変えながらでもまた復活させたい。狂言を行うことはお寺と町の方との距離が縮まる機会にもなる。」と話します。お寺のホールで簡略化したものを行えないかと、現在考えているそうです。
狂言ゆかりのお寺で再び狂言が楽しめる日もそう遠くないのかもしれませんね。
続いては、“第3話 能楽を愛した豊臣秀吉を祀る「豊国神社」”についてご紹介します。
文/中村ゆか
【画像・参考】京都浪漫~悠久の物語~(第1・2週 日曜日 21:00~21:55/再放送 第3・4週 日曜日 21:00~21:55) – KBS京都
※この記事は、2023年7月9日(日)放送時点の情報です。