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保育園を運営するのは焼肉屋!? 食べる喜びと向き合い続ける「焼肉南山」【京都市左京区】

KBS京都で放送中の『谷口流々』。
谷口キヨコが、京都を中心に活躍する人々の仕事現場に足を運び、十人十色の人生哲学を紐解いていきます。
2023年8月5日(土)の放送では、人気焼肉店の3代目・楠本公平さんに話を伺いました。

Profile:焼肉店3代目・楠本公平さん

『焼肉南山』の3代目楠本公平さんのプロフィール
画像:KBS京都『谷口流々』

楠本公平さんは左京区の北山通り沿いに店を構える『焼肉南山』の3代目。

先代たちの思いを背負って、作り手の顔が見える安心・安全の牛肉を提供しています。

作り手の顔がわかる焼肉店

牛肉を骨から外す作業
画像:KBS京都『谷口流々』

まずはじめに『焼肉南山』のお店を見学させてもらいました。

厨房では、背中の筋肉から骨を外すという牛肉の加工作業が行われていました。「こういった作業からお店でやる焼肉屋さんは、ほとんどないと思いますね」と楠本さん。

骨がついたままのかなり大きな牛肉の塊が吊るされている
画像:KBS京都『谷口流々』

その傍には、骨がついたままの大きな牛肉の塊が吊るされています。

楠本さんが「僕たちが扱っているお肉の良さを引き出すために、こういった形の仕入れは必須だと思っています。骨から扱うことで、牛一頭一頭のサイズ感や個性を感じることもできます」と、こだわりを語ってくれました。

さまざまな肉の加工品が並ぶ
画像:KBS京都『谷口流々』

店内には、基本的に全て店で手作りしているという、さまざまな肉の加工品も並んでいます。

これは、牛や豚、鶏を焼肉やステーキとして食べるだけでは使い切ることが難しい部位の肉も、ミンチにするなどして一手間を加えて加工することで無駄なく食べ切るための工夫なのだそうです。

皿に乗った、パテドカンパーニュや牛のテリーヌなど
画像:KBS京都『谷口流々』

こちらは、お店で作られた加工品の一例。豚肉と軍鶏の内臓を使ったパテドカンパーニュや、牛のテリーヌには肉の旨みが凝縮されており、ついついお酒を飲みたくなってしまう美味しさです♡

店を受け継ぐまで

谷口キヨコさんと楠本公平さん
画像:KBS京都『谷口流々』

『焼肉南山』の3代目である楠本さん。初代は楠本さんのおじいさんが、2代目はお母さんが務めてきたといいます。

『焼肉南山』初代・孫時英さん
画像:KBS京都『谷口流々』

「祖父は、“食べることが生きる上で一番大事”という思いを大切にしていました。農作物を作る農業と、それを提供するレストランという仕事には、人間を形成する全ての要素が詰まっていると考え、そこに情熱を燃やしていた人でした」と楠本さん。

谷口さんと楠本さん
画像:KBS京都『谷口流々』

そして楠本さんのお母さんの代では、ちょうど祖父から店を引き継いだ直後にBSE(狂牛病)が流行ってしまいました。お母さんは会社の再建に必死で毎日忙しくしていたので、楠本さんは小学校の頃、長野県に預けられていたそうです。

谷口さんと楠本さん
画像:KBS京都『谷口流々』

長年漠然と、食に携わる仕事に就こうと考えていたという楠本さん。

京都に帰ってきた後は、高校を出てすぐに焼肉店やレストラン、牧場などで働き、さまざまな経験を積んでいきます。

フランスで修業をしていた頃の楠本さんと仲間たち
画像:KBS京都『谷口流々』

そしてついにフランスに渡り、精肉店で修業をすることに。肉の解体と熟成を学びました。

それまで『焼肉南山』では骨がついていない肉を仕入れていましたが、2代目である楠本さんのお母さんは、骨付きの肉を仕入れたいと考えていたそう。

谷口さんと楠本さん
画像:KBS京都『谷口流々』

というのも実は元々、『焼肉南山』は牛肉に対して今ほどのこだわりを持った店ではなかったのだそう。初代は、農業やレストランに関わる人間を教育するという部分に力を入れていました。

しかし、その後、BSE(狂牛病)が流行った際に、世間では牛肉を食べること自体が恐ろしいという風評被害が広まります。

そのため、本当に安全な牛肉を提供しなければならないと改めて痛感したお母さんは、本格的に肉の勉強を始めたのだそうです。

谷口さんと楠本さん
画像:KBS京都『谷口流々』

安全な肉の提供のための第一歩としてまず取り組んだのが、“顔が見える農家さんの肉を扱う”ということでした。

「農家の方がどんな思いを持って牛と向き合っているのかを教えてもらい、それに自分も共感して一緒にお付き合いをしていきたいと思えるかどうかということが、とても大切なのだと思います」と楠本さん。

こうして人と人との関わりを重んじる姿勢は、初代であるおじいさんの教えとも通ずる考え方でした。

谷口さんと楠本さん
画像:KBS京都『谷口流々』

楠本さんが3代目となった今、一番大切にしていることを尋ねると、「まず現場に思いを伝えて理解してもらうこと。そして、それぞれがやりがいを持って働いてもらえるお店にすること。お肉を通して、そんな思いを実現するべく、動いているところです」と、教えてくれました。

子どもたちに美味しさの本質を伝える保育園

『焼肉南山』外観
画像:KBS京都『谷口流々』

実は、この建物の3階には『焼肉南山』が運営する保育園『さとのやま保育園』があります。

焼肉と保育園、一見かけ離れているように感じられますが、そこには「美味しさの本質を経験し記憶として子どもたちに残してあげたい。そして本当にいいものや美味しいものなど、その子が大人になった時の食に対する選択肢を広げてあげたい」という気持ちが込められているそうです。

そのためこの『さとのやま保育園』では、オーガニックにこだわった食育が行われています。

肉の加工を見学する子どもたち
画像:KBS京都『谷口流々』

料理を作ってくれる先生がいつも見えるように、調理室はガラス張りに。調理中の匂いも、子どもたちに伝わるようになっています。

「その食事を誰が作ってくれているのか、そして誰と食べるのかといったことも、美味しさの要素の一つ」と楠本さんは語ります。

画像:KBS京都『谷口流々』

そして保育園では、自分たちで食べ物を作る楽しさも教えているのだそう。

また、肉は『焼肉南山』で扱っているものを使用。例えばハンバーグが給食に出る日は、子どもたちを店に招き、肉の加工を見せたり、ミンチにする過程を実際に体験してもらったりと、食の流れを知ってもらえる機会を提供しています。

肉の加工を行う楠本さん
画像:KBS京都『谷口流々』

「僕たちは農家さんと消費者の間に入る立場として、その思いや食材の魅力を正しく謙虚に伝えていきたい」と、楠本さん。

「そして、本当に美味しいものを長期的に提供し続けられるように、しっかりと売り上げも伸ばしていきたい。それを今度は、地域の人たちに還元していきたい。それをブレずにやっていくのが、今後の目標です」と、力強く教えてくれました。

楠本さんを表すことば

楠本さんを表すことば
画像:KBS京都『谷口流々』

今回の“楠本さんを表すことば”は『人、牛、人』です。

初代から2代目、そして楠本さんへと、理想を共有しながらも変化してきた『焼肉南山』は、着実に進化を遂げている。そんな意味が込められた言葉です。

みなさんもぜひ、理想とこだわりを持って牛と人に向き合う店『焼肉南山』で、“食べる楽しみ”を感じてみてくださいね。

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文/ななえ

【画像・参考】谷口流々(毎週土曜日9:30~10:00) – KBS京都
※この記事は、2023年8月5日(土)放送時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。