祇園白川沿いの風情ある場所にたたずむ料理旅館白梅。老舗の格式、きめ細やかなおもてなしで、国内外から高い評価を得ています。
その人気旅館の女将から見る祇園の景色を『きょうとくらす』で毎月1回、コラムでお届けします。

10月に入り、ようやく秋の心地よい空気が感じられるようになってきました。
食欲の秋、芸術の秋、そしてスポーツの秋とさまざまな楽しみ方がありますが、「祇園とスポーツ」と聞くと、あまり縁がないように思われるかもしれません。
今回は、そんな祇園のスポーツ事情について、少しお話していきたいと思います。
スポーツと祇園

今年は阪神タイガースが2年ぶりのリーグ優勝をしましたね。実は花街のお座敷では野球と政治の話は厳禁です。絶対決着がつかない、いさかいになってしまうためですが、実は祇園もタイガースファンのお茶屋のお母さん、芸舞妓が多いのです。
以前は、勝利に縁のない年も多くありましたが、2003年に18年ぶりのリーグ優勝をしたときは祇園も大騒ぎでした。地方は三味線で「六甲おろし」をかきならし、舞妓達はタイガースの法被を着て舞い踊りるなどとても賑やかでした。一緒にいた私の友人は巨人ファンで、居場所がない…と早々に退散してしまいました。今年も四条大橋から鴨川に飛び降りかけてる人が警察官に止められていました。

日本の国技と言えば相撲ですが、先日の秋場所では日本人の大の里が優勝しました。
私の母校、関西学院大学の後輩は宇良関で昔からの仲間たちと一緒に応援しています。 彼はなぜか阿闍梨餅を食べると勝つらしいですよ。
大阪場所の際は祇園にもお客様が御贔屓の力士さんを連れて食事に来られることもあるのですが、お食事も懐石料理の後にしゃぶしゃぶを召し上がって、10名でビールが56本お酒が3升…でも皆さんけろっとされてました。

全日空に勤務していた際、大相撲ロンドン公演に向けたチャーター便に乗務したことがあります。
そのフライトは日本相撲協会による貸し切りで、乗客は力士の皆さんと関係者のみ。ファーストクラスには横綱や大関、ビジネスクラスには協会の関係者、そしてエコノミークラスには付き人や若手の力士たちがご搭乗され、機体は通常よりかなり“重たい”フライトとなりました。機内食のサービスでは、カートやトロリーを出すことすら難しく、「廻してくださいね〜」とお声がけしながら、トレイに大盛りでお渡ししました。
通常の機内食の量ではとても足りず、おにぎりが500個追加で搭載されていたのですが、それもすべてきれいになくなりました。

学校もこれから運動会の季節を迎えますが、実は祇園のまちにも「運動会」があるんです。八坂神社前にある漢字検定協会の建物は、かつて私が通っていた中学校でした。そのグラウンドの一部が今も保存されていて、毎年そこを使って運動会が開かれます。玉入れ、綱引き、25メートル走など、競技も本格的で、景品や賞品も用意されるんですよ。
さらに、近くのJRA場外馬券場のご協力で、ポニーや引退した競走馬による乗馬体験も楽しめます。そして今年は、新たな試みとして「誰でも参加できるボッチャ(地上版カーリング)」の競技会が、11月16日に開催される予定です。スケジュールの都合で、地域の防災訓練と同時開催となるのですが、炊き出し訓練では焼肉や生ビールも登場予定。もはや“必須訓練”のような人気ぶりで、多くの参加者が見込まれています。もし11月16日に祇園に来られることがあれば、ぜひ覗いてみてください。
きっと、祇園の旦那衆や女将さんたちが、真剣な表情でボールを投げ合っている光景が見られると思いますよ。
奥田朋子(おくだ ともこ)/料理旅館白梅 女将
1965年京都生まれ。1989年全日本空輸株式会社にCAとして入社。
1997年より若女将として、2017年より女将として料理旅館白梅を経営し、2017年より祇園新橋景観づくり協議会会長として京都、祇園の街づくり活動にも積極的に参加している。
文/奥田朋子
【画像】料理旅館白梅