コラム

6月が見頃!京都府立植物園 PLANTS WONDER WORLD【きょうとくらすコラム】

2024年で開園100周年を迎えた京都府立植物園。
日本で最初の公立の植物園として誕生して以来、府民に親しまれ、歴史を重ねてきました。四季折々の草花の栽培はもちろん、希少な植物の保全にも力を入れています。

このコラムでは、植物の専門家である戸部園長に季節ごとの見どころやユニークな植物の生態を教えてもらいます。物言わぬ植物から学ぶことはたくさん!緑に癒され、潤いある暮らしのヒントも見つけてくださいね。

画像:京都府立植物園

6月が見頃の植物たち

6月は水無月(みなづき)、あれ? 梅雨の季節なのに水が無い月なの? 調べると、むかしは『無』は『の』を意味する助詞であり、6月は水の月、つまり雨の多い月ということだそうです。
今回は、多くの水を必要とするアジサイに触れましょう。

画像:京都府立植物園
(アジサイ)

アジサイとは、『あづさあい』または『あづさい』と読まれる『集真藍』のことで、小さな青い(藍色の)花が集まって咲く様子を表現しています。
その読み方が、後に『あじさい』に変化したとされています。それなのに、アジサイのことを『集真藍』ではなく『紫陽花』とよく表現されます。それは、平安時代の歌人源順(みなもとのしたごう)が百科事典『和名類聚抄』(わみょうるいじゅしょう)の中でアジサイを『紫陽花』と表記したためとされています。源順は、中国唐代の詩人白居易(白楽天)が読んだ詩の中に、名も知らぬ紫の美しい花に充てた『紫陽花』という名前が出てくるのをみて、これをアジサイと考えたようです。ただ、白居易が『紫陽花』と呼んだ花はアジサイではなかったようです。

画像:京都府立植物園
(アジサイ)

ひと口にアジサイと言っても、その仲間はアジサイ属(Hydrangea L.)にまとめられ、世界に96種、4雑種が知られています。これにたくさんの園芸品種が加わります。典型的な野生のアジサイは、ガクアジサイのことで、その学名はHydrangea macrophyllaです。Hydrangea はギリシャ語で水の器、macrophyllaはラテン語の大きな葉を意味します。この種は日本の固有種で、ツンベリーが持ち帰った標本を基にして1784年に命名されています。

画像:京都府立植物園
(オオアマチャ)

野生のアジサイの花序(花の集まり)は散房花序と呼ばれ、すべての花が平面上に並んでいます。花に2種類あり、1つは装飾花と呼ばれ花序の縁に10花前後あります。4数性の大きい花で、4枚の萼片が目立ち(1枚は退化)、花弁は小さく、雄しべや雌しべが退化して種子をつくりません。

画像:京都府立植物園
(オオアマチャ)

もう1つは花序の中央に100個以上ある両性花で、5数性の小さい花です。雄しべも雌しべもあり、受粉・受精によって種子をつくります。両性花がすべて装飾花に置き換わった種類もあります。

アジサイの花言葉は移り気や浮気とか。アジサイには赤、青、紫などの色がありますが、「アントシアニン」という赤い色素を含み、土壌から溶け出してきたアルミニウムと反応すると青色に変化します。従って、アルミニウムをたくさん吸収したアジサイは青色、しなかったものは赤色、その中間が紫色になります。

6月は、春の花が終わりさまざまな初夏の花が咲きだします。当園の大芝生地北の日本庭園に隣接するはなしょうぶ園では、端正美麗な江戸系、優雅な伊勢系、雄大で豪華な肥後系を中心に植栽しています。初夏の水辺に咲く様々な品種のハナショウブを楽しめます

戸部 博 京都府立植物園 園長

1948年青森生まれ。東北大学理学部卒業。千葉大学理学部助手、京都大学理学研究科教授など39年間大学につとめる。その後、日本植物分類学会長、日本植物学会会長などをつとめ、2018年4月1日より京都府立植物園の園長に就任。自らの主導により植物や植物多様性保全、京都府立植物園に関する研究を専門家によって一般の方に分かりやすく伝えるサイエンスレクチャーを2023年より植物園にて開始。

文/戸部 博

【画像】京都府立植物園