料理旅館白梅の女将の祇園つれづれ日記　祇園の花見におこしやす

祇園白川沿いの風情ある場所にたたずむ料理旅館白梅。老舗の格式、きめ細やかなおもてなしで、国内外から高い評価を得ています。

その人気旅館の女将から見る祇園の景色を『きょうとくらす』で毎月1回、コラムでお届けします。

祇園のお花見

第6回目の前回は、祇園の節分についてお話しさせていただきました。

今回は祇園のお花見についてをお話しします。

祇園白川に早春の香りを届けてくれた梅の花も散りはじめ、花びらの小さな楕円がくるくると風に舞うようになりました。

私どもの旅館のある祇園新橋地区は昔ながらの街並みと風情を守るため重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。長い名前で舌を噛みそうになるので、略して『伝建地区』と呼ばれます。

金沢の茶屋町や岐阜の高山など全国に127か所ありますが、祇園新橋地区は『伝建地区』として最初に指定された地区の内の一つです。

美しい街並みは地域の誇りであり、雰囲気のある巽橋、辰巳大明神はご観光の方も多く、映画やドラマの撮影、サスペンスなどの収録も頻繁に行われています。

以前は撮影後、人型に白いチョーク跡が残っていたりして、学校に行く途中、「あー昨日はここで事件があったんやねー」と朝から物騒な話題をしていたものです。

最近は結婚式の前撮りの方も増えられ、場所柄ウェディングドレスではなく、和装での撮影をお願いしておりますが、新郎新婦の幸せな思い出の舞台に使っていただけるのは嬉しいことです。

白川沿いには椿、梅、つつじ、紫陽花、夕顔、萩と様々な花が咲き、四季折々の風情が楽しめますが、やはりこの時期そろそろ気になるのが桜の開花予想。

私の予測では、御所の桜と白川沿いの桜が京都の中でも早咲きなので、去年同様「3月15、16日あたりに咲き始めるのでは？」と見込んでいます。

白川沿いでは2024年3月22日（金）から31日（日）に『祇園白川宵桜ライトアップ』が開催されます。

今回で31回目となるこの行事は、祇園白川ライトアップ実行委員会を中心にボランティアの地域住民や店舗の寄付、京都仏教会や商工会議所の協力で継続している祇園の春の風物詩です。

ライトアップされた夜桜があでやかに祇園を彩り、2023年は10日間の開催中、約20万人の人々がお越しになられました。

白川沿いの桜は早咲きの枝垂れ桜、ソメイヨシノ、遅咲きの紅枝垂れ、八重桜と長い間楽しめますが、やはり早咲きの枝垂れとソメイヨシノの満開時はピンクの雲に覆われるようで、毎年見ていてもため息が出るような光景。

不思議と川沿いの木々は川の方へ傾斜していくので、水分を求めて傾くのかと思っていたのですが、庭師さん曰く川面に反射する日光を太陽と間違えて下の枝は川面へ枝を伸ばし、上の枝は本当の太陽に向かって空へ枝を伸ばすので自然と川側に木全体が傾いていくそうです。

川の上に花があるので、満開時は川面がピンク色に染まり、桜吹雪の時は花びらの作る花筏を、咲き始めから散り際までたっぷりと楽しめます。散りかけていてもライトで照らされると、あら不思議、満開のように見えるのもライトアップの良いところです。

祇園白川宵桜を100％楽しむためのおすすめ時間は、点灯時の午後6時。暮れなずむ中、桜が一気にライトアップされる一瞬には歓声があがります。川面にしだれる桜の景色を眺めたいなら巽橋か大和橋から見るのがおすすめです。

ピンクの雲に覆われたような写真が撮りたければ、縄手通りから川端通りの間の白川南通り約100mを背景するといいですよ。

ただし、人が多いので、白川に落ちないよう気をつけてくださいね。1年を通して2～3人落ちる方がおられますが、特にこの時期が多いのです。

お酒が入ってふらっとされるようですが、うちのお客様が落ちられたこともありました。その際はお風呂に入っていただいた後、スーツをビニール袋に入れて、浴衣と丹前でお帰りいただきましたが、ご自宅ではきつくお叱りを受けられたかもしれませんね。どうか花見酒もほどほどに……。

春の一夜、どうぞ祇園の花見にお越しやす。

【詳細情報】
第31回祇園白川宵桜ライトアップ
開催日時：2024年3月22日（金）～3月31日（日）
ライトアップ時間：18:00〜22:00
開催場所：京都市東山区・祇園新橋周辺白川南通り（川端通り～辰巳大明神/220ｍ）
主催：祇園白川ライトアップ実行委員会

1965年京都生まれ。1989年全日本空輸株式会社にCAとして入社。
1997年より若女将として、2017年より女将として料理旅館白梅を経営し、2017年より祇園新橋景観づくり協議会会長として京都、祇園の街づくり活動にも積極的に参加している。

文／奥田朋子

【画像】料理旅館白梅
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※画像はイメージです。