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Uターンで未経験の鮮魚の世界へ…父の思いを繋ぐ女性【京丹後市】

KBS京都で放送中の『きょうとDays』。
今回は、2023年6月22日(木)に放送された『ふるさと Days』コーナーから、地元にUターンして家業を継ぎ、鮮魚の世界に飛び込んだ京丹後市の女性をご紹介します。

人口が減りつつある漁師町の期待の新星

間人の海
画像:KBS京都『きょうとDays』

日本海に面している京丹後市丹後町間人は、古くから漁師町として知られています。

新鮮な魚介類が並ぶ市場
画像:KBS京都『きょうとDays』

午前9時の間人漁港では、競りのために魚介類が所狭しと並べられています。

下岡千恵子さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

地元の仲買人たちが仕入れを行うこの場所で、真剣に魚を見つめる一人の女性がいました。曽祖母の代から50年以上続く行商の鮮魚店『丸友鮮魚』を経営している下岡千恵子さんです。

間人漁港で行われている競りの様子
画像:KBS京都『きょうとDays』

「今日の競りで買いたいと思っているものはある」という下岡さん。いよいよ競りが開始し、新鮮な魚が次々と買い付けられていきます。そんな中で下岡さんは、冷静に状況を見極め、あまり手は出しません。

「昨日も買えているので。今日はこんなもんですかね」と、必要なものだけを仕入れて、帰路に着きます。

京都府漁業協同組合の寺田さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

競りを取り仕切る京都府漁業協同組合の寺田さんは、「最初はおとなしい子かなと思っていましたけど、実際はポリシーを持って自分の仕事をこなす人」と下岡さんについて話します。

「人当たりがいいので、この世界でやっていけるんじゃないかなと思いますね」と、期待を抱いています。

故郷へUターンし、経験のない鮮魚の世界へ

下岡千恵子さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

魚介類を販売する行商が、街の人口減少や売り手の高齢化により衰退していく中、下岡さんは有望な若手として期待されています。

下岡さんが家業を継ぐきっかけとなった出来事が起こったのは、約4年前。夏に父・與昭さんが脳梗塞で倒れてしまいます。

それまで大阪で働いていた下岡さんでしたが、與昭さんの病状が重かったこともあり、ひとまず会社を休んで地元に帰ってくることに。

1か月の闘病の末、與昭さんは残念ながら亡くなってしまいます。

生前の、下岡さんの父・與昭さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

その後、報告と挨拶のため、下岡さんは與昭さんが営んでいた行商のお客さんたちを訪問して回りました。

その中で、「父が温かいお客さんたちに支えられていたということを実感して、色々な思いが込み上げてきた」という下岡さん。その時に、「やったこともないけれど、鮮魚の仕事をやってみよう」と決意します。

魚を捌く下岡さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

突然訪れた人生の分岐点に多くの葛藤を抱えながらも、下岡さんの挑戦はこの時から始まりました。

この仕事を始めて3年半ほど経った今では、仕事の段取りや魚の捌きも人並みにできるようになったという下岡さん。しかし家業を継いだばかりの頃は、作業に時間がかかり、手つきもおぼつかなかったそう。

「その頃から支えてくれているお客さんには、本当に感謝しています。一番ありがたい存在ですね」と話します。

行商の準備をする下岡さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

父の代で途絶えかけた家業の暖簾を守ることで、周りの多くの人たちが喜んでくれたといいます。

この仕事をする前は、仕事よりも趣味の山登りの方が大切だったという下岡さん。「でも今は、魚が趣味っていうか。日曜日でも働いちゃう時もあるし、魚に合わせて動いていますね」と、生活にも大きな変化があった様子です。

母娘二人三脚で続ける行商

下岡さんと、母・有佳子さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

この日も、店内での仕込みが終わると休む間もなく、母の有佳子さんと行商の準備を整えていきます。

下岡さんの母・有佳子さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

下岡さんが家業を継いだことに対して母の有佳子さんは、「ただただありがたいと思っていますね。二人になるとそういう言葉は出ないんですけど……。やっぱり、この子のおかげで続けていけるんだなと思います」と、感謝の気持ちを語ります。

行商をする下岡さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

親子二人三脚で、日によっては4時間もかけて、街を周ります。

行商のお客さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

そんな下岡さんのことを、お客さんたちは「いつもにこやかで活発で、色々なことに挑戦している」「お父さんをよく知っている。與さん(お父さん)のお造りはケンが盛り盛りだったけど、千恵ちゃんはやっぱり女性らしい盛りやなと思う」と、笑顔で話します。

下岡さんとお客さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

そんな風にお客さんとのコミュニケーションを取りながら行う行商は、下岡さんにとって優しさや温かさを感じられる仕事なのだそうです。

鮮魚店を続けるための、新たな挑戦

パソコンに向かう下岡さん
画像:KBS京都『きょうとDays』

自宅へ戻り、ここで一息……と思いきや、おもむろにパソコンの前に座った下岡さん。ネット通販サイトへの問い合わせの返信などの作業に取り掛かります。

ネット通販の画面
画像:KBS京都『きょうとDays』

行商だけではお客さんが少なくなる一方で、増やすことは難しいと感じていた下岡さん。ネットなら、全国にまだまだいるお客さんにも届けられるのではと、魚介類のネット販売を2021年から始めました。

下岡さんのSNSの画面
画像:KBS京都『きょうとDays』

ほかにもSNSを活用して、様々な人と繋がりを広げ、地元を積極的にアピールしています。

下岡さんとご両親
画像:KBS京都『きょうとDays』

故郷で奮闘を続ける下岡さんに信念を尋ねると、「一番大事なことは、お客さんの喜びです。それがないと、商売はできません。儲けよりも、美味しいと喜んでもらうことを大切にしたいと思っています」と答えてくれました。

経験のなかったことに挑戦し苦戦しながらも、今では「続けられたらいいなと思います。ずっと、一生」と語る下岡さんの力強い言葉が、胸に響きます。

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文/ななえ

【画像・参考】きょうとDays(毎週月~金曜日17:35~18:00) – KBS京都
※この記事は、2023年6月22日(木)放送時点の情報です。