キャリア

造り手の想いやストーリーの詰まったお酒を扱う「旅する京の酒屋さん」【京都市伏見区】

KBS京都で放送中の『谷口流々』。
谷口キヨコが、京都を中心に活躍する人々の仕事現場に足を運び、十人十色の人生哲学を紐解いていきます。
2023年4月22日(土)の放送では、『中畝酒店』の3代目店主・中畝康博さんに話を伺いました。

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Profile:「中畝酒店」の3代目店主・中畝康博さん

中畝康博さんプロフィール
画像:KBS京都『谷口流々』

中畝康博さんは、京都市伏見区にある『中畝酒店』の3代目。全国各地の酒蔵に足を運び、造り手の想いがつまった日本酒を販売しています。

まだ世の中に知られていない無名の酒蔵が多くある中で、造り手の想いやストーリーがたくさんつまったお酒を中心に取り扱っている『中畝酒店』。コンセプトは『旅する京の酒屋さん』だそうです。

家業を継ぐ

谷口キヨコ・中畝さんの対話1
画像:KBS京都『谷口流々』

小さい時はたくさんのお客さんがやってきて、賑やかなコミュニティの場のようだった酒屋。中畝さんは小学校の文集に「酒屋を継ぐぞ」と書いたそうです。

転機となったのは高校2年生の春。父親が病気で他界し、高校卒業後家業を手伝うことになりました。
家業を継ぐ前にどうしても綺麗な青い海でスキューバダイビングをしてみたいと考えていた中畝さんは、祖父に相談。沖縄に行くためのお金を出してくれました。

沖縄の帰りの飛行機では、夢のような体験ができたのにこれが最後かと思い涙が出てきたそう。ダイビングショップのインストラクターの方に相談したところ、「週末だけでも手伝いに来て手当を出すから、経験を積んでインストラクターを目指しなさい」と言ってもらったのだとか。

酒屋の傍ら、週末はダイビングショップで働いていく中で、気付けば家業の売り上げが下がっていきました。そうこうしているうちに、祖父も亡くなり、その後中畝さんは結婚。そして、母親からダイビングの道で生きていくことを勧められたそうです。

母親から店を閉める話が出たことによって、中畝さんは二足の草鞋を履くのをやめ、家業に専念する覚悟を決めました。

お酒が持つ物語

谷口キヨコ・中畝さんの対話2
画像:KBS京都『谷口流々』

ある時、お酒の特集がされている本を読み、1つのお酒と中畝さんは出会いました。お酒が世に出るまでにどんな苦労があったのかを記したその特集の中に、いくつかの銘柄が載っていて、その一つがとても心に響いたんだそうです。

白木恒助商店『ダルマ政宗』
画像:KBS京都『谷口流々』

そのお酒が白木恒助商店『ダルマ政宗』。岐阜県の田んぼの真ん中にポツンとある典型的な田舎の小さな酒蔵さんのお酒です。

色味が普通の日本酒と少し違い、梅酒のような琥珀色がついています。熟成古酒という日本酒で、江戸時代までは今の純米大吟醸のように最高ランクのお酒でした。しかし、このお酒はまだまだ知られていません。それには深い理由がありました。

白木恒助商店記念写真
画像:KBS京都『谷口流々』

明治時代、酒税法の改正により売られていない熟成中のお酒にも毎年税金がかかるようになりました。そのため、熟成古酒には税金がかかり、作られないようになっていきました。

その数十年の間に熟成古酒の作り方や貯蔵法が日本の歴史から消えてしまうこととなりました。そんな中で、熟成古酒を作り続け、守ってきたのが、こちらの酒蔵だそうです。

谷口キヨコ・中畝さんの対話3
画像:KBS京都『谷口流々』

お酒にまつわる物語を話すと、「飲んでみたい」「買いたい」というお客さんが現れ出してきました。もっと全国に面白い物語を持つ美味しいお酒があるのではないかと、中畝さんは全国各地に行き、探し始めました。

海と空を知る酒

海と空を知る酒1
画像:KBS京都『谷口流々』

世界中に沈没船から引き上げたワインの話があります。オークションで何百万で取引されたや、飲んでみたらとても美味しかったという話です。

東京の熟成古酒専門バーのオーナーが沈没船から引き上げたお酒の再現をやろうと企画。ダイビング経験のある中畝さんに声がかかったそうです。「もう潜ることはない」と思っていたそうですが、10年以上経って、お酒のために再び潜ることになりました。

海底熟成される「海と空を知る酒」
画像:KBS京都『谷口流々』

日本一深い海溝と言われている駿河湾の海底で半年間沈めたお酒は、フジツボがたくさんついた状態になります。

富士山に運ばれる「海と空を知る酒」
画像:KBS京都『谷口流々』

海で熟成する前には、自らの足で富士山の山頂にお酒を運び、そこで10か月熟成。富士山から下ろしてきて海に半年間沈めました。日本一の山の頂上と日本一の海溝に面した駿河湾の『海と空ダブル熟成』という企画でした。

ストーリーを聞いてからお酒をいただくと、その感動が染みて、さらに美味しさが増します。

中畝さんを表すことば

表すことば
画像:KBS京都『谷口流々』

男のロマンのようなお話を聞かせてくださった中畝さん。

今回の“中畝さんを表すことば”は 『俺物語』。お酒にも、人間にも物語があって、どんどん熟成されていきます。ここからどんな方になっていくのか、とっても楽しみですね。

造り手の想いやお酒にまつわるストーリーを大事にし、聞かせてくれる中畝さん。
たくさんの物語と一緒にお酒をぜひ味わってみてくださいね。

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文/きょうとくらす編集部

【画像・参考】谷口流々(毎週土曜日9:30~10:00) – KBS京都
※この記事は、2023年4月22日(土)放送時点の情報です。詳しくは店舗へお問い合わせください。