KBS京都で放送中の『京都浪漫~悠久の物語~』。
今回は、2023年5月7日(日)に放送された、洛北屈指の名刹『曼殊院門跡』を、全5回に分けてご紹介します。
150年ぶりに宸殿が再建された『曼殊院門跡』について、天台仏教や神仏習合そして宮廷文化を伝える宝物までたっぷりとお伝えします。
150年ぶりに宸殿が復活!洛北を代表する名刹「曼殊院門跡」
「曼殊院門跡」の枯山水庭園
『曼殊院門跡』の庭園は、水の流れを砂で表した枯山水庭園。武家の庭とも寺院の庭とも違ういわゆる公家好みの庭です。
随所に豊かな趣味を持つ良尚法親王の思考が見て取れます。5月の初め頃は霧島ツツジ、秋には紅葉と見応えがあります。
小書院の奥には重要文化財の茶室『八窓軒』があります。京都三名席の一つです。
8つの窓は釈迦の生涯を8つの場面に分けて説く、仏教の八相成道にちなんだものです。窓の白と壁の黒が対照的な茶室で、光と影を巧みに利用して物静かで非現実的な空間を表現しています。
良尚法親王は侘び寂びを重んじる文化人で、茶の湯にも熱心で自ら流派を作り家元にもなりました。
150年ぶりに再建された宸殿、復興の道のり
枯山水庭園の砂で表された水は、小書院の前から流れ出て川となり、大書院の前で海になります。やがて宸殿の庭一面の大海原へと流れていきます。
大海原の石にはちゃんとした意味があるといわれています。この海に100年に一度息継ぎのために頭を出す目の見えない亀がいるそうです。息継ぎのために顔を出したところ、偶然にも流木の節穴に頭がすっぽりはまりました。
仏教に巡り合うこと、人間に生まれることはこれほど難しいということを表しています。
庭の奥に見えるのは唐門。江戸時代初期の様式を伝えていて、扉には松や菊の彫刻が施されています。
唐門を越えた庭の先には、150年ぶりに復興した宸殿があります。宸殿とは歴代天皇と皇室関係者の位牌を祀る門跡寺院の中心となる建物です。
宸殿は明治維新までは存在しましたが、明治政府が京都に病院を建てる資金にするために宸殿を献納させました。それから150年が経ち、やっと宸殿が再建されました。
再建のきっかけはある看護師さんが退職金の一部を寄付したことだそうです。
明治新政府が作った京都療病院は現在の京都府立医科大学の前身となる病院です。寄付をされた看護師さんはこの大学の付属病院の方だったそうです。
この寄付がきっかけで、全国を行脚し復興資金を募ることになりました。大雪に見舞われたりと苦労することもあったそうですが、どこへ行っても暖かく迎えてもらえたそうです。
ようやく資金に目処がついた頃、宸殿の形が問題となりました。内部の構造は図が残っていて分かりましたが、外観はなかなか分かりませんでした。
洛中洛外図という昔の絵で確認すると反ったような屋根だったと分かりました。宸殿の高さは大書院の垂木に当たる渡り廊下の棟瓦の位置から割り出しました。
建物の土台だった元の礎石を確認し、柱が建てられました。棟の鬼飾りや屋根の部材も新しく造作し、およそ2年半の歳月をかけ建設されました。
完成した宸殿には新しい技術も使われています。屋根には耐久性を考え、チタン材が使われています。
宸殿の前には右近の橘と左近の桜が並んでいます。現在の上皇と上皇后が植えられたものです。
続いては、“~第5話~宸殿内部と黄不動明王像の謎”についてご紹介します。
文/きょうとくらす編集部
【画像・参考】京都浪漫~悠久の物語~(第1・2週 日曜日 21:00~21:55/再放送 第3・4週 日曜日 21:00~21:55) – KBS京都
※この記事は、2023年5月7日(日)放送時点の情報です。